第34回 中学受験(受検)にみる親子関係−「中学校選択に関する調査」の母親インタビュー調査より
Benesse教育研究開発センター 邵勤風 (2008/12/17更新)
前回は、「中学校選択に関する調査」のアンケート調査と母親インタビュー調査から、中学受験(受検)の動機を検討した。今回は、親子関係に焦点をあてて、母親インタビュー調査を中心に、中学受験(受検)における親のかかわりと親子の葛藤の実態を概観する。そこにどんな課題があるのかを考えていきたい。ここで断っておきたいのは、母親インタビュー調査が中学受験(受検)に合格した子どもをもつ母親22人を対象に行っているということである。不合格だったケースは分析の対象にはなっていない。
今回のインタビュー調査から得られた、母親たちの生の声をまとめることにする。
まず親のかかわりを見ていきたい。中学受験は「親の受験」とも言われている。この言い方は、中学受験(受検)での親のかかわりの大切さと大変さを物語っている。ここでは、母親と父親に分けてかかわり方の違いを見ていきたい。
1.母親のかかわり
最初に、母親のかかわりを検討しよう。インタビューにおいて聞かれたことから、母親のかかわり方を以下の通りに分類してみた。
1) |
勉強面のフォロー
6年生になると、受験(受検)勉強が親の手に負えなくなるので、直接国語、算数といった教科を教えることは少なくなる。内容を教えるより、問題をコピーする、宿題をチェックする、ファイリングをする、勉強がどこまで進んでいるのかをペースメークするといった周辺的な役割を果たす親が多くみられる。 |
2) |
情報収集
学校説明会に参加する。また子どもと一緒に志望校の文化祭に参加する。 |
3) |
学習塾の送り迎え |
4) |
体の健康管理
塾に持っていくお弁当を作る。食事の栄養バランスを考える。体力づくりに心がける。早く寝るように声をかける。風邪やインフルエンザにかからないように気を付ける。 |
5) |
心(メンタル面)の健康管理
子どもに気分転換をさせる工夫をする。子どもにプレッシャーを与えないように余計な口出しをしないことを心がける。 |
表1:母親のかかわり(母親インタビュー調査より)
- 6年生の2学期が終わるぐらいまでは、何を習っていたかさえわからなかった。その後(志望校の)過去問題を始める時に、過去問題のコピーをとって、テストの点数を控えたり、過去問題のチェックだけはしていたが、内容はお任せだった。(首都圏・私立中学校・難関)
- 生活管理と、ペースの声かけぐらい。勉強に関しては、わからないところを聞かれたら教えて、自分もわからなかったら、先生に聞いてもらった。何をやっているのかというよりは、過去問題がペースどおり進んでいるかとか、そういうことを気にした。(首都圏・私立中学校・難関)
- 気分転換させた。ずっと勉強だけでは、嫌になる。苦痛になっても困るから。途中で楽しみを与えた。すごい本が好きだったので、本を買ったり、ジェットコースターに乗りに行ったりした。(首都圏私立中学校・難関以外)
- 塾のない日は、ゆっくり食事をさせたり、温かいものを食べさせたりした。のんびり、栄養面とか過ごし方に気をつけた。(首都圏・私立中学校・難関以外)
- とにかく寝かせていた。良く食べ、良く寝るようにと子どもに話していた。体力をつくるように心がけていた。(首都圏・公立中高一貫校)
- 旅行の計画は子どもにたてさせる。旅行に行きたいという事になったら、旅行情報誌を渡して、予算を言う。予算3万円で、4人が泊まれて楽しめるところを探してねと言ってやらせていたりした。(首都圏・公立中高一貫校)
- 頑張れ、頑張れと言わないように気をつけていた。頑張っているねと言っていた。(地方・私立中学校)
- 健康管理だけ。風邪をひかないよう、インフルエンザにかからないように気をつけたくらい。勉強は本人が時間配分しているので口出しせず、塾にお任せしていた。塾の先生にもお母さんは一生懸命になってついつい余計なことを言い、プレッシャーを与えてしまうからむしろ言わないほうがいいと言われたため。(地方・私立中学校)
2.父親のかかわり
中学受験(受検)では、母親のかかわりが欠かせないようだが、父親は実際どれくらい、かかわっているのだろうか。受験(受検)にあまり関心がない、あるいは関心があっても、忙しくてほとんどかかわれない父親が多いようだ。それでも、母親インタビュー調査から、父親のかかわりをいくつか拾うことができた。かかわり方を分類すると、以下のようになる。
1) |
勉強面のフォロー 勉強を教える。パソコンでチェック表を作成する。インターネットで資料を探す。 |
2) |
母親の相談相手・子どもの話の聞き手
志望校を決める際、母親の相談相手になる。子どもの悩みを聞く。 |
3) |
受験の付き添い |
表2:父親のかかわり(母親インタビュー調査より)
- 夫は帰ってくるのは遅いが、夜中に夫が、子どもが翌日やることのリストをパソコンで作って、やったらチェックするということにした。ペースチェックは夫がやっていた。(首都圏・私立中学校・難関)
- わからないところは、塾で聞くか、夫が教えるかをしていた。また夫とは話し合いをすごくした。最初に塾に通わせるという時もそうだった。いろんな中学を一緒にまわったが、お互いの感覚が違った。志望校を決めていくのも、色々話し合いをした。(首都圏・私立中学校・難関)
- 夫は、6年生になった頃から、熱心になってきた。その頃は作文を頑張ったほうが良いということで、ネットで、作文のお題を検索して。こんなのを書いてみたら良いとか、ニュースや本を持ってきては、読んでおいた方が良いのではないかと、色々本を買ってきたが、なかなか難しく叶っていない。(首都圏・公立中高一貫校)
- 夫はもっぱら愚痴を聞く係だった。ただ聞いてくれるだけで良いと、子どもが言うから。自分だと、子どもとやりあってしまうから。癒しはパパで。(地方・私立中学校)
- 父親は子どもに分からない問題を説明するのが面白かったようだ。「お父さんどうして解けないの?」「いやいや解けるけど説明の仕方がわからないのだ」なんて子どもに言い訳をする様子や、私と違ってまじめに頑張るタイプの父親が娘の頑張る姿を見て「よう頑張るなぁ」と言っている様子を見るのはよかったなと思う。(地方・国立大学附属中学校)
母親と父親のかかわりの事例をみてきたが、ここで取り上げているのは母親インタビュー調査の中のほんの一部である。親のかかわりについて、5つのグループの母親の声をまとめてみると、このような特徴がみられる。
1) |
志望校の種類による親のかかわりの違いがみられた。
健康面でのサポートについては、志望校の種類と関係なく、ほとんどの母親が行っている。しかし、勉強面のフォローについては、志望校によって違いが見られた。私立中学校を受験する家庭では、宿題などに○つけをしたり、ファイリングをしたり、勉強のペースメーカーをしたりする母親が多い。一方、公立中高一貫校を受検する家庭では、子どもに日常生活の体験をさせるといったかかわり方が多い。おそらく入試問題の傾向が公立中高一貫校と私立中学校で異なっていることが影響しているのだろう。 |
2) |
父親のかかわりがもっとも多くみられたのは難関私立中学校を受験する家庭である。
難関私立中学校を受験する家庭では、母親と一緒に中学校を見に行ったり、夜中にパソコンでリストを作成したりし、子どもの中学受験に比較的に熱心にかかわっている父親が多い。家族ぐるみで中学受験に高い関心を示している様子がうかがえる。 |
3) |
母親と父親とのかかわり方が異なる。
母親は、様々な面において子どもの受験(受検)にかかわっている。一方、父親は、主に情報収集や母親の相談役といった役割を果たしている。 |
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