第54回 高校英語、2013年度新課程での指導を考える 〜上智大学・ARCLE応用言語学シンポジウム2009より〜
Benesse教育研究開発センター 吉池陽子 (2010/3/3更新)
高校の新学習指導要領が、2013年度より、1年生から漸次施行される。この新課程における高校での英語指導の在り方について、2009年12月、我々Benesse教育研究開発センターが主催する英語教育研究会である「ARCLE」(アークル)と上智大学との共催シンポジウムで検討した。以下では、その内容の一部を紹介しながら、今後の高校での英語指導について考える(シンポジウムの詳細は、「上智大学・ARCLE応用言語学シンポジウム2009 詳細報告」参照)。
2013年度から施行される高校の新学習指導要領における英語教育は、基本的にこれまでと同じく「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つの技能を統合的に指導することを柱に、科目の改編と共通必履修科目の設定、学習語彙の増加などの変更点がみられる。また、「英語の授業は英語で行うことを基本とする」ことも明記されている。
では、現在、高校ではどのような英語の授業が行われているのだろうか。Benesse教育研究開発センターでは2006年に、高校生が授業でどんな活動をしていると感じているかについて調査している(*1)。これによれば、実際の指導内容と生徒の受け取り方は多少異なる可能性はあるものの、生徒は英語の授業について「読む」「聞く」活動が中心で、「話す」「書く」活動は少ないと感じているようであり(図1)、指導される技能のバランスに課題がありそうだ。
図1:学校での英語活動の実態
*「ある」の%
*n=3,700 (4年制大学への進学を目指す指導を行っている日本の高校の生徒) |
さらに、文部科学省が高等学校に実施した調査(*2)より、高校生が授業でどれくらい英語を使っているかをみてみよう(図2)。「英語で生徒同士が対話する」の割合をみると、英語Tで「毎回行う」は5%弱程度。「聞く」「話す」を中心に指導するオーラル・コミュニケーションT(以降、OCT)でさえも、「毎回行う」は約半数だった。また、英語Tで「英語でまとまった内容の文を書く」のは、「毎回行う」「時々行う」合わせて4割に満たなかった。こうしてみると、特に、英語Tの授業中では、高校生が英語を話したり書いたりする頻度はそれほど多くないことがうかがえる。
図2:生徒の英語の使用状況
*英語T n=3,610校、OCT n=3,213校
*「国際関係学科等とその他の学科等の併設校」「国際関係学科等は置いていない」を併せた3,701校のうち、英語TまたはOCTを実施している国際関係(語学を含む)以外の学科・コース(学校数) |
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出典:文部科学省(2007)「平成19年度英語教育改善実施状況調査(高等学校)」 |
また、新課程の検討を行った中教審外国語専門部会でも、現行課程での英語Tにおいて文法・訳読が中心となっている実態がある、などの指摘もあった(*3)。
以上のことから、現在の高校の英語の授業では、「読む」「聞く」ことへの指導が中心で、技能のバランスには偏りがあり、生徒が英語を書いたり話したりするなど英語を使う機会はそれほど多くないようだ。
ここまでで、必ずしも現行課程が目指す4技能統合の指導が広く行われているとはいえない実態が見えてきた。それでは、この方向性をより強調している新課程の指導を実現する具体的な方法とはどのようなものだろうか。
我々が2009年12月に上智大学と共催したシンポジウムでは、北海道旭川北高等学校の松井徹朗先生に実践を紹介していただいた(*4)。同校は国立教育政策研究所の教育課程研究校指定を機に、英語の授業を訳読中心から活動重視へと転換した。授業の特徴は「検定教科書を使う」「少人数ではなく40人1クラス」「日本人教師1名による指導」「訳読は行わず英語で授業を行うことを基本」「コミュニケーション活動を取り入れる」であり、生徒にいかに英語を使わせるかを中心課題とした。
授業の転換にあたり、まずは英語科が一体となって授業手順・活動場面などの授業を行う上で必要な情報をまとめた「Teaching Procedure」(*5)を作成し、教師全員の指導目線を合わせた。同時に定期テストも大きく変え、英語の知識やスキルの活用を重視した。進学校として受験を見据えた指導を行っていた同校では、この取り組みには慎重だったというが、始めてみたところ生徒から高い評価を得たことなどから、この方向で進んできたという。
北海道旭川北高等学校は、この取り組みのために特別に教師を集めたというわけでもなかったという中で、学校ぐるみで教師の知見を集め、戸惑いながらも新たな指導を実践した。結果、子どもたちが予想以上に新しい授業を受け入れ楽しんだため、それまでの指導に戻れなくなり、同時に、子どもたちに応えようと教師の指導にも磨きがかかっていったという。新課程における指導を考えるにあたっては、同校をはじめ、すでに取り組みを始めている研究指定校など、多くの学校での実践事例が参考になるのではないか。外国語として英語を学ぶ日本の高校生にとっては、授業は英語に触れる大変貴重な機会である。子どもたちの英語を学ぶ意欲を高めていくためにも、まずは教師が新しい一歩を踏み出してみてみるということが大切なのではないだろうか。
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