第11回 ヨーロッパにおける外国語教育(2)〜小学校での外国語教育動向
Benesse教育研究開発センター 沓澤糸 (2008/11/19更新)
共通の理念・枠組みのもと、外国語教育を推し進めるヨーロッパだが、具体的にはどのような英語教育が行われているのだろうか。日本でも2011年度からの必修化が決定している小学校段階での外国語教育について、ヨーロッパにおけるトレンドと、より具体的な実態としてフィンランドを取り上げ、日本の外国語教育について考察する。
グローバル化の進展に伴い、外国語教育の重要性が増してきている。アジアでは経済的なニーズから英語教育に熱心に取り組む国が以前から多かった。一方で、ヨーロッパでは、このアジアの文脈とは異なり、歴史的な背景から「文化」や文化と密接な関係にあり、相互交流の上でも重要な「言語」を互いに尊重するという理念のもと、外国語教育(厳密には母語を含む言語教育)が推し進められている。
では、ヨーロッパでの外国語教育は、どのような方向性で進められているのだろうか。ヨーロッパの外国語教育を概観すると、2つの大きな方向性があるように思われる。1点目は、前回のレポートでも紹介した「標準化」の方向性である。ヨーロッパでは外国語教育の目標として「1+2(母語+母語以外の2言語)」を掲げ、共通で参照すべき言語教育の枠組み(CEFR*)を設け、これに沿った形で各国が外国語教育の変革・推進に取り組んでいる。もう1点は、「早期化」の方向性、つまり初等教育段階からの外国語教育の推進である。
日本でも2011年度からの外国語活動必修化が決定しているが、ヨーロッパでは、すでに多くの国が小学校段階での外国語教育に取り組んでいる。小学校段階で外国語として選択可能な言語は英語に限定されていない場合も多いが、実際には英語が選択されることが圧倒的に多いようだ。国により違いはあるものの、早いところでは小学校1年生から、多くの国では3年生から外国語教育を開始し、授業時数は週1〜2時間程度のところが多い。
では、小学校での外国語教育は具体的にどのように行われているのだろうか。ここでは、フィンランドの事例を取り上げてみたい。フィンランドでは、多くの場合、日本でいう小学校3年生段階から週2時間、外国語教育(ほとんどが英語)が行われている。少人数でのクラス編成で知られるフィンランドの教育だが、英語はさらに少人数に分けて授業が行われる。小学校卒業段階での英語教育の到達目標(あくまでも教師が教育の目標とするレベル)は、英語の技能により異なるがCEFRのA1〜A2レベルとされている(A2とは、簡単で日常的な事柄についてのやり取りができるレベル)。フィンランドでは小学校3年生から10年間英語を学ぶが、これに加えて中学校段階から英語以外の2言語以上の教育を並行して行うなど、外国語教育全般に非常に力を入れている。これだけ外国語教育に力を入れている一方で、母語による読解力などの国際学力調査でも世界トップクラスである。
フィンランドの事例について簡単に紹介したが、ヨーロッパの国々での早期外国語教育への取り組みは一様ではなく、近年やっと取り組み始めた国もある。しかし、多くがEUという共同体で掲げた共通の枠組みを尊重し、歴史的・経済的背景の両面から外国語、とりわけ英語教育に力を入れ始めている。また、英語のみではなく多様な言語を尊重し、複数言語の習得を目標として教育実践している点は、日本の外国語教育・言語教育とは大きく異なる。また、これだけ外国語教育に力を入れながらも、母語での読解力が高いことは特筆すべき点である。
異なる言語を持つ相手とのコミュニケーションにおいて、相手の言語を理解することは、その相手の持つ文化的背景も尊重することにつながるだろう。また、他の言語を学ぶことで、母語も含めた言語や文化の重要性をより強く認識できるだろう。日本の外国語教育・言語教育も、その教育を受ける私たち自身も、その根本的な理念についてヨーロッパから多くを学ぶことができるのではないだろうか。
ページトップへ
この記事に対するご意見・ご感想をお寄せください。
(募集は終了しました)