Benesse
一人ひとりの「よく生きる」のために
ベネッセ サイトマップ
ベネッセ トップ教育トップ
Benesse® 教育研究開発センター
Benesse発 2010年「子どもの教育を考える」
このコーナーでは、教育のあるべき姿をBenesse教育研究開発センターと、皆さんと共に考え、創りあげていきます。
トップページ センター長メッセージ 特集 ビデオメッセージ 研究員リポート 子どものココロ・大人のキモチ USER'S VOICE ご意見・ご感想
『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』更新終了のお知らせ

『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』は、2010年3月31日をもって、更新を終了させていただきました。
これまでたくさんのアクセスをいただき、ありがとうございました。

トップページ > 特集 > 生きる力を育てる共育力 〜家庭の学習支援力を考える〜

特集
特集第6弾 生きる力を育てる共育力 〜家庭の学習支援力を考える〜

[ 1 ]

活用型学力を育てる「家庭学習」と保護者の3つの役割

田中博之 早稲田大学大学院教授

知識の定着と技能の習熟をめざす学校や塾の宿題。そして予習復習。これだけでも「家庭学習」は手一杯かもしれない。だが、複雑で困難な課題が山積する21世紀社会に必要とされる真の学力は、教科書やドリルの中で完結する知識や技能だけではない。思考力、判断力、表現力が要求される「活用型学力」の基礎を、家庭で育むことはできないだろうか。「総合学力研究会」代表を務める早稲田大学の田中博之先生は、長年にわたる調査研究結果に基づき、古くて狭い「家庭学習」イメージの一新とそれを支える保護者の役割を提案する。

全国学力調査で何が問われているのか
田中博之 先生
田中博之 先生
1960年生まれ。早稲田大学大学院教職研究科教授。専門は教育工学、教育方法学。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程在学中に同大学助手となり、大阪教育大学教授を経て現職。著書に『子どもの総合学力を育てる』(ミネルヴァ書房)『フィンランド・メソッドの学力革命』(明治図書出版)などがある。

 小6、中3を対象にした「全国学力・学習状況調査」(以下「全国学力調査」)が4月21日に実施されました。中3国語の「B問題」(「平成21年度全国学力・学習状況調査の調査問題・正答例・解説資料について」 国立教育政策研究所)の一つは、子ども図書館の案内図を見ながら、目的の本を借りるにはどこへ行けば良いか、案内図にはどのような工夫が施されているか、その工夫を学校図書館の案内図に生かすにはどうしたらよいか、といった問いに答えるものです。また別の設問では、発光ダイオードについて解説した文章が課題文に選ばれました。

 ここで問われている学力とは、次の3点に集約されます。

  1. 日常の中での知識・技能の活用力
  2. 問題解決的な思考力
  3. 教科横断的な思考力

 これらは、日本の学校教育では取り組みが手薄だった学力領域です。これまでは日常の具体的な問題よりは、抽象的な語句や読み取り、計算などが多く扱われてきました。問題解決といっても、自らステップを踏んで体験させるのではなく、最終的な解答へ導く解法パターンの練習が主流でした。国語は国語、理科は理科と、教科の壁が超えられませんでした。

 学校で扱わない問題をなぜ全国学力調査に出すのか、と反対する声もありました。しかし、実証的な調査結果に基づいて学力の実態を明らかにした上で、何が足りないのかを検討し、学習指導要領や教科書の改訂に結びつける方向へと教育行政を変えるべきだ、とする意見が大方の同意を得られ、その結果こうした全国学力調査が実施されることになったわけです。


21世紀社会に求められる「活用型学力」

 なぜこのような学力を問う問題が入ったのでしょうか。明らかに、OECDによる国際的な学習到達度調査「PISA(※)」の結果の影響です。日本の子どもたちは必ずしも上位層にはいませんでした。しかし、そこで問われている学力こそ、21世紀社会で子どもたちに必要とされる学力であり、それが先の3点にほかなりません。

 つまり、(1)教科で身につけた知識・技能を日常に活かせる力。(2)自ら問題を見つけ、仮説を立て、検証して解決に導く力。そして、(3)科学・政治・法律・倫理など多様な分野が関連する環境問題に代表されるように、少なくとも2つ以上の教科・分野を結びつけて考えられる力が必要とされます。

 こうした学力は、将来どんな職業に就こうが、21世紀社会では必ず求められます。単なる知識の暗記や、計算のしかた、解法のパターンを身につけるといっただけの能力では解決できない複雑で困難な課題に、これからの子どもたちは実社会に出て山ほど立ち向かわなければなりません。そのときに必要なのが、教科の知識・技能を日常に活かす力であり、問題解決的な思考力であり、教科横断的な思考力なのです。ひとことでいえば「活用型学力」、すなわち思考力・判断力・表現力です。PISAはそれを問うているのです。

 こうした背景をふまえ、このほど3回目を迎えた全国学力調査では、より鮮明に活用型学力を問いました。とてもよく練られた問題だったと思います。


※PISA…OECD(経済協力開発機構)が実施する、15歳児(日本では高校1年生)を対象とした国際的な学習到達度調査。Programme for International Student Assessmentの頭文字。2000年に第1回の本調査を行い、以後3年ごとに実施。07年12月に結果が発表された2006年調査は第3回で、57か国・地域が参加。第1回は読解力、第2回は数学的リテラシー、第3回は科学的リテラシーを重点的に調べている

   
特集「生きる力を育てる共育力」
この記事に対するご意見・ご感想をお寄せください。
(募集は終了しました)
ご意見・ご感想を読む