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〈省察的実践力〉を育む福井大学の先駆的取り組み
── ライフパートナー活動に見る自治体、地域との協働による教員養成──
福井大学教育地域科学部
松木健一[福井大学教育地域科学部教授]

大学における教員養成の在り方が見直される中、福井大学教育地域科学部では「地域と協働する実践的な教員養成」を掲げさまざまな先駆的プロジェクトを実践してきた。
大学での理論と学校現場での実践の融合を図る「ライフパートナー」活動を中心に、福井大学の取り組みの狙いと成果を紹介する。
大学での理論と学校現場での実践の融合を図る「ライフパートナー」活動を中心に、福井大学の取り組みの狙いと成果を紹介する。
大学独自の実習プログラムで学部学生の現場体験が大幅に増加
この数年、教員養成系大学や教育学部が、地方自治体と連携しながら教員志望である学生の力量形成を模索する動きが広がっている。そうした中で、他大学に先駆けて10年以上も前から、「地域と協働する実践的教員養成」を掲げて先駆的プロジェクトを展開してきたのが、福井大学教育地域科学部である。それまで小・中学校に一任しがちだった教育実習を大学で責任を持って取り組むなど、地域と密着した実習プログラムで、学生の実践的力量を徹底的に鍛え上げてきた。現在、教育実習を含み4年間継続して実習を行う「教育実践研究」、小・中学校の児童・生徒に対する指導や教育相談に対応する力を育む「ライフパートナー」、児童・生徒の主体的な学習活動を支援すると共に学生同士の同僚性形成を図る「探求ネットワーク」の三つの取り組みを、実習プログラムの柱に据えている。こうした一連の実習プログラムの中で、最も取り組みが早かったのがライフパートナー活動だ。これは不登校の児童・生徒と学生が交流し、側面から子どもたちをサポートする取り組みである。通常の教育実習と異なり、大学と自治体、学校の強固な連携で支えられるこの活動は、学生にとっても教師になる前の貴重な実践体験の場になっている。
ライフパートナー活動は、1994年に福井市教育委員会との連携でスタートした。当時、小・中学校では不登校の児童・生徒が急増していたが、それに対処するだけの人員が配置できていなかったのである。
一方で大学側にも不登校の児童・生徒を支援する教師を養成したいという思いがあった。もともと福井大学は、若手教員が教育委員会や学校と協力、授業研究に取り組むなど、大学と学校現場との距離が近かったこともある。
以来、この活動を取り入れる自治体は、福井市のほか鯖江市、坂井市など県内5市に拡大。現在は、毎年130人の学生が参加し、県内の4分の1に当たる200人の不登校の児童・生徒を対象にするまでに定着している。
ライフパートナーは、不登校の児童・生徒の学校復帰が目的ではない。いっしょに遊んだり、勉強したりすることで、子どもが心を開き、自信を持つ。学生がその援助者になるのだ。
教育地域科学部の松木健一教授は「教師に必要な力量は教科指導だけではない」という。松木先生は、当初からコーディネーターとして、この活動に関わってきた。
「教師になってから不登校や特別支援を必要とする子どもと接する場合、即座に教師としての対応を求められることになり、問題が大きくなって手に負えない状況になるなど、困難を抱えるケースが多々あります。ですから、学生のうちに一歩引いた立場で経験することで、そういう子どもとのつきあい方を今から考えると共に、将来に向けた免疫を付けることが大切です」
希望を持って教師になっても、学校の厳しい現実を突きつけられて、辞めていくケースは少なくない。そうならないためにも、学生の時期に配慮された環境の中で子どもたちと向き合う機会を用意することが必要なのである。
学生は教育実習によって現場を体験する。しかし、松木先生は「従来の教育実習では時間も内容も不十分」という。
教員養成系大学で6週間、私立大学の場合、教員免許を取るだけなら2週間の実習で済む。これは先進国の中でも極端に少なく、医師免許の取得で課せられるインターンシップの期間に比べても見劣りする。
しかもその実習は、授業計画をどうつくるかといったことが主体で、生徒指導や教育相談など教師に求められる高い専門性の養成が二義的になっているのが実態だ。教育実習の内容についても大学側はほとんど関与しないといわれる。
これに対し、福井大学では教育実践研究、ライフパートナー、探求ネットワークといった実践プログラムによって、学生が現場を体験する時間は大幅に増えた。「教育実践研究」では「授業づくり」、「ライフパートナー」では「教育相談や生徒指導」、「探求ネットワーク」では「主体的な学習活動への援助と同僚性形成」と、それぞれに明確な狙いを持ち、学生の力量が総合的に高められるよう体系化されている。
さらに、実習と教師の専門性養成を体系的に組み合わせることで、これまで学校現場に任せていた教育実習に大学が責任の一端を持ったことも、福井大学の取り組みの大きな特徴といえるだろう。
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