BERD 2008 No.12
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スペシャル
インタビュー
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メルヴィ・バレ
教科書編纂者・元ヘルシンキ大学附属小学校教師
Mervi Wäre-von Hedenberg

教科書制作を通して海外の先進的なメソッドをフィンランドに導入すると共に、学習指導要領策定委員や広域教育委員などを歴任。
現在のフィンランドの教育方法の原型を作った。
現場を退いた今も各地で精力的に教員研修を実施。
同国の80%の教師が使用するWSOY社の初等国語教科書の責任監修者として活躍中。
BERD
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フィンランドの「読解」教育とは?
──教師の経験知を集めた「メソッド」の構築──
メルヴィ・バレ[教科書編纂者・元ヘルシンキ大学附属小学校教師]

メルヴィ・バレ
  2003、06年それぞれのPISA調査で、世界トップクラスの成績を上げたフィンランド。特にその「読解」の指導法については、各国から注目が集まっている。
 同国の学習指導要領の策定に長年にわたって携り、実際に国語の教科書執筆を通して、同国の教育に大きな影響を与えてきた元ヘルシンキ大学付属小学校教師のメルヴィ・バレ氏に、フィンランドの教育事情や、具体的な教育手法についてうかがった。
いわゆる「PISAショック」の影響などを受け、
日本では現在「読解」に対する関心が高まっています。
フィンランドでは「読解」をどのような力と捉えていますか。
 読解を考える上での要点は三つです。一つ目は、すべての学習の基礎となるように、きちんとテキストを読みこなす力を付けること。二つ目は、批判的にものごとを判断する力を身に付けること。ネット上の情報の読み取りなどがこれに当たりますね。そして、最後の三つ目が問題解決能力を身に付けることです。
 この三つの力を育てるために、私たちが初めに行うのは「事実」と「意見」の区別を子どもたちに教えることです。批判的な読みをするにしても、問題解決をするにしても、ここが出発点になりますし、子どもたちが未来の社会で生きていく上でも一番重要な力になると思います。テレビ、新聞、雑誌など、溢れんばかりの情報の中から、何が真実なのかを見極められなければ、今後の社会では通用しません。フィンランドでは、小学校段階からこの点を意識して教育を行っています。
 もう一つ大切にしているのは、生活体験や現実感覚に基づいてものを考える力を養うことです。例えば、算数の授業で「お父さんは子どもより15センチ背が高い。お父さんの身長は何センチか?」という問題を出すときに、間違っても、「お父さんの身長が15センチ」という答えになるような作問をしてはいけません(笑)。たとえ計算上はあり得ても、あまりにも現実的ではない答えが出ては、それまでに見聞きしたこと、考えたことを踏まえて答えの妥当性を考える、という作業にはなりません。
 私たちがすべきことは、機械的に答えを出す術を教えることではなく、一度出した答えに対しても「なぜそう考えたのか」「その答えは現実的なのか」と、自らに問いかける力を育てることです。PISAの問題はこうした考え方と親和性が高いですから、日ごろからトレーニングを積んだフィンランドの子どもたちには取り組みやすかったのでしょう。
フィンランドの学校では、具体的にどのような方法で
授業を行っているのでしょうか。
 例えば、小学校低学年向けの、おとぎ話を題材にした授業を考えてみましょう。私ならまず、タイトルと表紙の挿絵を子どもたちに見せ、日本語の「むかし、むかし……」に相当するフレーズまで読んだところで授業を一旦止めます。そして、「さあ、これから始まる物語は本当のことかな? それともおとぎ話かな?」と子どもたちに問いかけます。
 多くの子どもたちは、「すぐにおとぎ話だ」と気が付きますが、肝心なのは、子どもたちがなぜそう考えたのかを問うことです。「いろいろなお話を聞いたことがあるけれど、おとぎ話は『むかし、むかし……』で始まったよ」と答える子どもがいれば、経験を基にした推論ができているということになります。
 さらに話を読み進め、登場人物が店に入るシーンが出てきたとしましょう。ここでも本文の読解に入る前に、「みんなは、どんな店に、いつ、誰と、どうやって、何をしにいったことがあるかな?」と、子どもの生活体験を問う作業を入れます。こうした作業を入れることで、その後、本文の読解を進める際に、「ここまではこういう話だった。自分の経験に照らすと、こういうときは大体こうなった。だからこの物語もこうなるのではないか」という具合に、本文の内容と自分の体験とを結びつけて推論することができます。
 もちろん、物語の続きは常に予想通りに進むとは限らないですし、時としてあまりにも現実離れしたストーリーを予想する子どももいます。そうしたときにも「なんでそんなことをいうの!」と怒るのではなく「どうしてそうなると考えたの?」と問いかけます。
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