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算数・数学教育で求められる新しい学力観とは
──「数学的活動」の考え方と内容を探る──
渡邊公夫/大根田 裕 ─筑波大学附属中学校─


新学習指導要領の算数・数学では、授業時数や学習内容の増加と共に、「算数的活動、数学的活動の一層の充実」や「反復学習(スパイラル)の重視」などが盛り込まれている。現行の学習指導要領では、「3割削減」の「ゆとり教育」として論議を呼んだ算数・数学。今回の改訂では「脱ゆとり」を示す根拠の一つとして報じられている。算数・数学教育は、以前のカリキュラムへ回帰するのか、それとも新しい方向へ向かうのか。現行の学習指導要領解説書の作成協力者であると共に、中央教育審議会教育課程部会の算数・数学専門部会委員として学習指導要領の改訂に関わってきた渡邊公夫先生に、新学習指導要領の狙いと可能性をうかがった。
そして、「数学的活動」とは具体的にどのような活動であるのか、中学校で数学教育を実践されている大根田裕先生にうかがった。
そして、「数学的活動」とは具体的にどのような活動であるのか、中学校で数学教育を実践されている大根田裕先生にうかがった。
≪インタビュー≫
現行の学習指導要領から始まっていた数学的活動の授業への導入
私は数学者として、現行の学習指導要領では『中学校学習指導要領解説−数学編−』の作成協力者を務めました。また、今回の学習指導要領の改訂では、中央教育審議会の教育課程部会算数・数学専門部会の委員として関わってきました。現行の学習指導要領と新学習指導要領の両方に関わった経験から、新学習指導要領は、現行の学習指導要領の考え方をどう受け継ぎ、発展させたものであるか、あるいはどのような点を改善したものであるかを踏まえつつ、新学習指導要領の狙いと可能性について私の考えを述べたいと思います。まずは現行の学習指導要領の振り返りから行ってみましょう。
現行の学習指導要領で社会的にも話題になったのは、何といっても学習内容の3割削減です。3割削減については『中学校学習指導要領解説』の作成協力者の間でもかなり異論が出ました。しかし、完全学校週5日制の実施に向けて、削減はやむを得ないとの認識で作成に当たることとなりました。
3割削減となると、普通に考えれば中学3年生の1年間分をほぼそのまま高校に移行しなくてはいけません。しかしこれでは平方根も二次方程式も、高校での学習となってしまいます。数学には加減乗除で解決できる一次の世界と、二次方程式や二次関数、二次曲線といった二次の世界があります。中学3年生の1年間の学習を高校に移行した場合、生徒たちは二次の世界に触れる機会がないまま中学校を卒業することになります。
当初、文部省(当時)は「中学校の数学は一次まででよい」という意向でした。けれども中学校が義務教育の最終段階であることを考えると、中学校で数学の学習を終える生徒も確実に存在します。数学は一次で終わる閉じた世界ではなく、その向こうに二次の世界が広がっていることを感じ取ってもらうためにも、二次の世界は残しておく必要があると判断しました。
しかし二次の世界を残したままの3割削減となると、各領域ごとの学習内容の厳選が必要となります。そこで各領域において核となる学習内容のみを抽出して、その他の内容については、軽減や削減、または高校に移行することにしました。さらに学校現場から「授業時間数の設定が中途半端で取扱いが難しい」という指摘が多かった「統計」の領域を、中学校での学習から丸ごと外すことにしました。こうして二次の世界などの中学校数学として最低限生徒に学ばせたい内容を確保しつつ、3割削減を実現したわけです。
そのため現行の学習指導要領では、まずはその領域において核となる基礎基本を確実に習得することを目指しています。ただし私たちが狙いとしたのは、単に基礎基本の定着を図るだけではありません。獲得した知識を用いて、自ら課題を見つけ取り組みながら、数学的な見方や考え方を深めていく力を生徒たちに身に付けさせたいという思いがありました。
今の数学教育をめぐる課題として、「実生活と数学との乖離」が挙げられます。子どもたちは数学を入試に必要な知識としては習得します。しかし日常の中で多面的に物事を見たり、事象を数理的に考察・処理するための手法として、獲得した数学の知識を活用しようとする意識が稀薄です。そもそも数学が実生活と結びついた教科であるという実感を持てていない子どもが多いようです。これでは数学の学習が無味乾燥なものとなり、学習意欲が低下してしまうわけです。
そこで現行の学習指導要領では「数学的活動」という文言が初めて盛り込まれ、授業の中に観察、作業、実験などの活動を取り入れることで、生徒が日常の中に存在する物事や事象から、その規則性や関係性を見つけ出し、課題解決に向かって取り組んでいく機会を設定することにしました。
現行の学習指導要領は、知識の習得については各領域における基礎基本の確実な習得を目指すと共に、その習得した知識を日常の中で使って生かす力を伸ばすことを狙いとしたものだったといえます。
ちなみに“活動”と“活用”という言葉が紛らわしいこともあって、数学的活動とは学んだ知識を活用する場面で行うものという誤解を持たれがちです。しかし数学的活動は習得型学習の場面と活用型学習の場面のいずれにおいても、取り入れることが可能です。
現行の学習指導要領で社会的にも話題になったのは、何といっても学習内容の3割削減です。3割削減については『中学校学習指導要領解説』の作成協力者の間でもかなり異論が出ました。しかし、完全学校週5日制の実施に向けて、削減はやむを得ないとの認識で作成に当たることとなりました。
3割削減となると、普通に考えれば中学3年生の1年間分をほぼそのまま高校に移行しなくてはいけません。しかしこれでは平方根も二次方程式も、高校での学習となってしまいます。数学には加減乗除で解決できる一次の世界と、二次方程式や二次関数、二次曲線といった二次の世界があります。中学3年生の1年間の学習を高校に移行した場合、生徒たちは二次の世界に触れる機会がないまま中学校を卒業することになります。
当初、文部省(当時)は「中学校の数学は一次まででよい」という意向でした。けれども中学校が義務教育の最終段階であることを考えると、中学校で数学の学習を終える生徒も確実に存在します。数学は一次で終わる閉じた世界ではなく、その向こうに二次の世界が広がっていることを感じ取ってもらうためにも、二次の世界は残しておく必要があると判断しました。
しかし二次の世界を残したままの3割削減となると、各領域ごとの学習内容の厳選が必要となります。そこで各領域において核となる学習内容のみを抽出して、その他の内容については、軽減や削減、または高校に移行することにしました。さらに学校現場から「授業時間数の設定が中途半端で取扱いが難しい」という指摘が多かった「統計」の領域を、中学校での学習から丸ごと外すことにしました。こうして二次の世界などの中学校数学として最低限生徒に学ばせたい内容を確保しつつ、3割削減を実現したわけです。
そのため現行の学習指導要領では、まずはその領域において核となる基礎基本を確実に習得することを目指しています。ただし私たちが狙いとしたのは、単に基礎基本の定着を図るだけではありません。獲得した知識を用いて、自ら課題を見つけ取り組みながら、数学的な見方や考え方を深めていく力を生徒たちに身に付けさせたいという思いがありました。
今の数学教育をめぐる課題として、「実生活と数学との乖離」が挙げられます。子どもたちは数学を入試に必要な知識としては習得します。しかし日常の中で多面的に物事を見たり、事象を数理的に考察・処理するための手法として、獲得した数学の知識を活用しようとする意識が稀薄です。そもそも数学が実生活と結びついた教科であるという実感を持てていない子どもが多いようです。これでは数学の学習が無味乾燥なものとなり、学習意欲が低下してしまうわけです。
そこで現行の学習指導要領では「数学的活動」という文言が初めて盛り込まれ、授業の中に観察、作業、実験などの活動を取り入れることで、生徒が日常の中に存在する物事や事象から、その規則性や関係性を見つけ出し、課題解決に向かって取り組んでいく機会を設定することにしました。
現行の学習指導要領は、知識の習得については各領域における基礎基本の確実な習得を目指すと共に、その習得した知識を日常の中で使って生かす力を伸ばすことを狙いとしたものだったといえます。
ちなみに“活動”と“活用”という言葉が紛らわしいこともあって、数学的活動とは学んだ知識を活用する場面で行うものという誤解を持たれがちです。しかし数学的活動は習得型学習の場面と活用型学習の場面のいずれにおいても、取り入れることが可能です。
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