
| |
|
北欧の日本語教育に今求められるもの
─北欧教育を支える民主主義を背景に─
柳澤絵美[東京外国語大学留学生日本語教育センター非常勤講師]

国際交流基金の調査によると、2006年現在、海外の133の国と地域で298万人が日本語を学んでいる。地域別の学習者の割合は東アジアが全体の6割を占めており、アジアと大洋州で約9割になる。世界の日本語学習者数に占める北欧の学習者の割合はわずか0.15%(約4400人)であるが、日本から遠く離れた北欧でも日本の文化や社会に興味を持つ学習者が教師のさまざまな工夫と努力の下、日本語を学んでいる。本稿では、北欧各国の日本語教師を対象に行ったアンケート調査の結果を報告する。
はじめに
現在、北欧5か国(アイスランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド)ではさまざまな教育機関で日本語教育が行われている。学習動機は多岐にわたるが、日本文化に興味を持つ学習者が多く、近年では、漫画、アニメ、ゲーム、音楽などのポップカルチャーへの関心も高まっているようである。もちろん、政治、経済、歴史、文学などへの興味から日本語を学んでいる学習者も大勢おり、日本に留学して語学力を上げたり、専門分野の知識を深めることを通して、将来の仕事に生かしたいと考えている学習者も多い。しかし、その実態については国際交流基金などの調査においてその概要が明らかにされているものの、現場の教師の声についてはあまり触れられていない。そこで、07年、8月24日から26日まで、デンマーク王国コペンハーゲン大学で開催された「北欧日韓学会(NAJAKS:Nordic Association of Japanese and Korean Studies)」に北欧各国から日本語教育関係者が集まった機会を活用し、参加者にアンケート及びインタビュー調査を実施した。回答者はすべて日本語教師である。
北欧教育の背景と理念
北欧の国々は、男女共同参画、社会福祉などの先進国として知られており、近年ではフィンランドが経済協力開発機構のPISA(学習到達度調査)において世界トップクラスの成績を記録したことで、その教育レベルの高さにも注目が集まっている。北欧では、古くから平等の精神が尊重され、民主化が実践されてきた。教育もその基盤の上に築き上げられており、長きにわたって平等の追求と学校の民主化が盛んに行われてきた。
例えば、フィンランドでは1970年代以降、平等な教育の実現を目指した教育改革が進められた結果、現在では、教育の機会均等が保障され、初等・中等教育では生徒間の学力格差、学力水準の学校間格差及び地域間格差が最も少ない国だ。ノルウェーでも個人が背負う社会的・文化的・地理的背景にかかわらず、すべての国民は平等に教育を受ける権利があるという原則の下で教育が行われている。障害児や移民など特別な配慮が必要な生徒にもさまざまな特殊教育が用意されている。高等教育に目を向けてみると、スウェーデンでは1921年に「スウェーデン全国学生組合連合(SFS)」が創設され、50年代には大学の運営会議や理事会などに学生の代表が参加するようになった。このような大学の意思決定機関に学生が代表権を持つ民主主義はヨーロッパ各国で発達し、ドイツのベルリン大学、次いでノルウェーのオスロ大学、フィンランドのユヴァースキュラー大学などで完全な学生代表権が確立されている。
また、北欧における教育の大きな特徴の一つとして、小学校から大学に至るまで、ほとんどの教育機関では学費が無料であることが挙げられる。学生の家庭における社会的・経済的格差がその学生の受ける教育に影響を及ぼさないよう、さまざまな公的支援制度が整っているのである。
例えば、デンマークでは、大学へ進学する学生のほとんどは親元を離れ、学生寮や賃貸アパートなどで自活生活を始めるという。そのための資金は18歳になれば受給が可能となる通称SUと呼ばれる無利子・無返済の国からの教育助成金(月額10万円程度)とアルバイト、それでも足りない場合は利子と返済義務のあるローンで賄われる。日本のように親からの仕送りを最初から期待している学生はほとんどいない。
例えば、フィンランドでは1970年代以降、平等な教育の実現を目指した教育改革が進められた結果、現在では、教育の機会均等が保障され、初等・中等教育では生徒間の学力格差、学力水準の学校間格差及び地域間格差が最も少ない国だ。ノルウェーでも個人が背負う社会的・文化的・地理的背景にかかわらず、すべての国民は平等に教育を受ける権利があるという原則の下で教育が行われている。障害児や移民など特別な配慮が必要な生徒にもさまざまな特殊教育が用意されている。高等教育に目を向けてみると、スウェーデンでは1921年に「スウェーデン全国学生組合連合(SFS)」が創設され、50年代には大学の運営会議や理事会などに学生の代表が参加するようになった。このような大学の意思決定機関に学生が代表権を持つ民主主義はヨーロッパ各国で発達し、ドイツのベルリン大学、次いでノルウェーのオスロ大学、フィンランドのユヴァースキュラー大学などで完全な学生代表権が確立されている。
また、北欧における教育の大きな特徴の一つとして、小学校から大学に至るまで、ほとんどの教育機関では学費が無料であることが挙げられる。学生の家庭における社会的・経済的格差がその学生の受ける教育に影響を及ぼさないよう、さまざまな公的支援制度が整っているのである。
例えば、デンマークでは、大学へ進学する学生のほとんどは親元を離れ、学生寮や賃貸アパートなどで自活生活を始めるという。そのための資金は18歳になれば受給が可能となる通称SUと呼ばれる無利子・無返済の国からの教育助成金(月額10万円程度)とアルバイト、それでも足りない場合は利子と返済義務のあるローンで賄われる。日本のように親からの仕送りを最初から期待している学生はほとんどいない。
|
|||||||||

