BERD 2008 No.12
【連載】
教える「現場」
育てる「言葉」
profile
はとバス

株式会社はとバス
創業は1948年8月で、翌49年から営業を開始し、大正末期から途絶えていた東京の「定期観光バス」を復活させた。今年で60周年を迎える。観光ブームに沸いた70年には、在籍するバスガイドは258人に達したが、現在は180人。ここ数年は毎年30〜40人ほどの新人が入社している。総従業員850人。本社は東京都大田区にあり、東京・神奈川を中心に、東北から近畿地方まで網羅したツアーを提供している。


運輸部ガイド課インストラクター
遠藤はな子(左)

えんどう はなこ
バスガイドの教育指導の責任者。新人研修の計画立案や、地方へのツアーをガイドするための「エリア研修」の指導を担当。

運輸部ガイド課指導主任
大野純子(右)

おおの じゅんこ
新人教育を行うトレーナーを指導するほか、
バスガイドへの実務指導を行う。ガイドの要望を会社に伝えるパイプ役でもある。一線で活躍する現役ガイド。
BERD
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自己学習なくしてプロにはなり得ず
乗客の立場にたてるバスガイドになるために

はとバス
  バスガイドといえば、車窓観光のナレーター役として、行く先々の見所を伝える流暢な「語り」。
経験の浅い10代の若者も、たった1人で乗客と向き合わなければならない。
バスガイドはどのようにして育成されているのか。
その現場を、東京で観光バス事業を営むはとバスを訪れ取材した。
乗務中の「空気」が伝わる教育を
 「なぜそうしないとだめなのか、細かいことでも丁寧に説明してくれます。叱るというより、諭す感じですね」。この春で入社3年目を迎える若手のガイドは、先輩の「教え方」をこう評する。これからバスに乗り込む彼女を見て、遠藤はな子インストラクターが制服の小さな乱れを注意したが、その口調や表情もいたって穏やかだった。
 「インストラクター」は、ガイド教育全体の責任者だ。新人研修の計画立案の他、季節ごとに需要の多い旅行先を選び、ガイドの事前学習を行う「エリア研修」も担当。現在、遠藤さんともう1人がこの立場にある。一方、新人研修で実際に教えるのは、入社7年目以上の「トレーナー」の役目。現在12人が活躍する。
 研修の在り方は、「利用者の視点」に立ったサービスの向上を目指す過程で、徐々に変化してきた。かつて新人ガイドを教えていたのは専任の指導者であり、社内に教習所も設置されていた。しかし1991年を境に、経験を積んだ現役ガイドがトレーナーとして新人の教育係を務めるようにした。「教える側が研修専門だと、バスの中でお客様と対峙する時の『空気』をつい忘れがちになるという反省がありました。教育が机上の空論にならないように、普段から現場の空気に触れている人が、教育と乗務の両方を受け持つことにしたのです」(遠藤インストラクター)
 新人研修は3月半ばに始まって、断続的に7月ごろまで続くが、核心部分は初めの約40日間で、4月末には早くも初乗務の日を迎える。独り立ちをこの時期に定めているのは、春の観光需要がピークを迎えるゴールデンウィークに間に合わせるためだ。
 40日間の研修内容は、大きく分けて3つのパートからなる。最初の「接遇研修」は全体の基礎となるもので、ガイドとしての心構え、失礼のない挨拶や立居振る舞いなどを、3月半ばの仮入社の翌日から2日間みっちりと叩き込む。「学生と社会人の違いを意識させるようにします。『あなたたちは給料をもらう立場にいるのです。みなさんが笑っても泣いても、遊んでいても寝ていても、会社ではみなさんに対してコストが発生しているのですよ』と」(遠藤インストラクター)
 次の「机上研修」から観光案内の練習に入り、暗記に用いる教本の要点などを1週間程度で教える。そして、約20日間の「車上研修」へと進む。本番さながらにバスで都内を巡りながら、基本的な三つの観光コースを教本通りに案内できるよう研修していく。初乗務ではこのうち1コースを担当する。いわば予行演習というわけだ。
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