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学習意欲の構造から見た学校が取りうる方策
──「状況意欲」に着目して教育環境のデザインを──
鹿毛雅治[慶應義塾大学教職課程センター教授]

家庭学習時間の減少、意識調査での回答などから、子どもたちの学習意欲の低下が近年特に懸念されている。ただ、テストの点数は高いが学習意欲は低い「日本型高学力」の問題は1980年代から指摘されていた。そもそも「学習意欲」をどう捉えるべきなのか、そこから浮かび上がってくる本質的な課題は何か。授業研究を通じて現場の実践に詳しい鹿毛雅治先生に教育心理学の観点から話をうかがった。
学習意欲には「パーソナリティ」「文脈」「状況」という三つの水準がある
「意欲」というのは、現れては消えていく心理現象の一つで、一見捉えどころがありません。そこで心理学では、学習意欲を三つの水準で捉えようとしてきました。それは「パーソナリティ意欲」「文脈意欲」「状況意欲」の3水準です(図表1)。パーソナリティ意欲は、個人に内在する特質としての安定的な意欲の在り方。場面を越えて現れる、個人のパーソナリティの一部としての「やる気」です。
とはいえ、やる気のある子どもであっても、学習内容や活動領域によって意欲の在り方はまた違ってきます。例えば、算数には一生懸命取り組むが国語の時間にはやる気がないとか、授業中はだらけているけれど部活動になると生き生きする、といったことはよくあります。このように文脈によって様相の異なる意欲を文脈意欲と呼びます。
さらに状況意欲とは、現在進行形の時間の中で意欲がダイナミックに立ち現れることをいいます。例えば45分間の授業中、最初は集中しているが中だるみがあり、先生が面白い話をしだすとまたムクっと集中力が上がる。こうした場(フィールド)に特有の「波」のような意欲の在り方が状況意欲です。
このように、一口に学習意欲といっても三つの水準があり、当然それらは相互に関連し合っています。したがって、この子は意欲があるとかないとか、単純に判断するのはとても難しいことが分かると思います。指導要録の「関心・意欲・態度」の評価で先生方はずいぶんと苦労されていますが、それは無理もないことなのです。
例えば「読書に対する興味」という問題を考えてみましょう。何にでも関心を持つ傾向が高いというパーソナリティ意欲を持つ子は、本を読むことに積極的になりやすいでしょう。それに対して、状況意欲的な興味の持ち方もあります。例えば皆が楽しそうに本を読んでいるから、つられて読んでみようかな、と興味がわく。つまりパーソナリティ意欲としては低いけれど、場を与えられたり、周囲に引きずられたりして状況意欲が高まる場合があります。学習意欲にはこうしたダイナミズムが働くことを理解すべきです。それを無視してパーソナリティ意欲や文脈意欲の側面だけを取り上げ、意欲の高低を評価するのは望ましくありません。
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