BERD 2008 No.14
【特集】
寄稿
profile
青木栄一
国立教育政策研究所教育政策・評価研究部研究員
あおき えいいち

国立教育政策研究所教育政策・評価研究部研究員。
東京大学教育学部教育行政学科卒業、同大大学院教育学研究科修士課程、博士課程修了。
博士(教育学)。専門は教育行政学、行政学。
日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院教育学研究科基礎学力研究開発センター拠点形成特任研究員を経て現職。
著書に『教育行政の政府間関係』(多賀出版)などがある。
Refarences
●『教員勤務実態調査(小・中学校)報告書』東京大学/2007年
●『教員の業務の多様化・複雑化に対応した業務量計測手法の開発と教職員配置制度の設計〜教員と教員サポート教員による業務の適切な分担とアウトソーシングの可能性〜』東京大学/2008年
BERD
   PAGE 1/4 次ページ

教員の仕事をどうデザインするか
──教員勤務実態調査の分析から──
青木栄一[国立教育政策研究所教育政策・評価研究部研究員]

青木栄一
  学校現場の教員という職業の多忙さが問題であると叫ばれるようになってから久しい。
無定量・無限定といわれる教員の仕事の在り方を変えるために今、何を行っていくべきなのか。
2006年度に文部科学省の委託調査として行われた「教員勤務実態調査」の研究メンバーの1人である国立教育政策研究所の青木栄一先生に寄稿いただいた。
キーワード=教員勤務実態調査、行為者率、時間マネジメント、ワークライフバランス
はじめに〜教員の残業調査から教員の仕事研究へ
 残業時間の調査を目的とした「教員勤務実態調査」の結果は、各種報道で大きく扱われた通り、平均1日当たり小学校で約1時間半、中学校で約2時間半という値が得られた。しかし、同時に残業時間の分散が大きかったため、単に平均値のみで議論する政策課題ではないことが分かった*1
 07年度は教員勤務実態調査で得られた基礎データを用いて「行為者率」*2という指標で再分析を行った。「1日の任意の時間帯にある行為をした者が、サンプル全体に占める割合」を「1日の行為者率」という。1年という短い期間であったが、当面の政策論議の論点を整理するには十分な分析結果を得ることができた。当初、教員の残業時間調査を目的とした勤務実態調査が、教員に関する政策立案のための基礎的な知見を提供するに至った。
 今日の教員の多忙さ、多忙化、多忙感については学識経験者を含む教育関係者にとって共通の認識であったが、具体的なデータは全国レベルではまったく存在しなかった。
 残業の実態が明らかになったことで政策論議の材料が初めて揃ったことになる。残業をどうやって縮減するか、残業の実態と人件費(給与)の制度設計をどうやって調整するか、残業が不可避であるなら人員の増強といった資源投入を行うべきか、そして教員の仕事をどのようにデザインしていくのかというより広い文脈の議論も展開されつつある。
  • *1 鈴木尚子(Benesse教育研究開発センター)「教員勤務実態調査の報告〜教員給与改革に向けて明らかになったこと〜」/『BERD』第9号/2007年
  • *2 行為者率という概念は社会学の生活時間研究で用いられるものであり、大規模調査で用いられる例としてNHK放送文化研究所のNHK国民生活時間調査がある。

仕事を可視化する

 業務の効率化やレベルアップのためには、教員の1日の仕事の流れを可視化することが重要である。業務の4類型の「行為者率」を用いると、次のことが指摘できる(図表1)。
 第一に、小中学校ともに「児童生徒の指導に直接的にかかわる業務」が、終日にわたり中心的な業務である。第二に、夕方以降、小学校では2種類の業務に集中する一方、中学校では「児童生徒の指導に直接的にかかわる業務」を含んだ多様な業務が行われている。第三に、教員の仕事時間は長時間にわたっている。少なくとも10%の教員が小学校で16時間、中学校で15時間30分、何らかの業務を行っている。さらにこの図からは持ち帰り仕事の存在が示唆される。例えば小学校では20時台に一度行為者率が落ち込んだ後、21時台以降再び行為者率が上昇する時間帯がある。第四に、昼休みの時間帯で、各業務の行為者率の合計が90%を下回らないことから、休憩・休息を取らずに何らかの仕事をしている教員が多いといえる。
 時間帯別行為者率は個々の業務内容が行われる時間帯を可視化する。当該行為をした者が、それに費やした時間量の平均を「行為者平均時間量」という。当該行為をしなかった者も含めて、調査対象となったサンプル全体がその行為に費やした時間量の平均は「全体平均時間量」という。以上の概念を使用し、以下で中学校の教員を例に個別業務の実態を紹介する。
図表[1]小中学校教諭の時間帯別行為者率(業務分類別)
   PAGE 1/4 次ページ
研究者(BERD)TOPへ戻る 2008年度バックナンバーへ戻る