BERD 2008 No.14
【レポート】
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木谷紀子
Benesse教育研究開発センター研究員


BERD
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インドの数学教育について
──「数や量についての感覚」という視点から──
木谷紀子[Benesse教育研究開発センター研究員]

   新学習指導要領(小学校算数)では、数量や図形について実感的に理解し豊かな感覚を育てながら、算数を生活や学習に活用することが重視されている*1
一方、子どもたちに目を向けてみると、小数を含む割り算などの計算結果において、明らかにおかしい数値が出ても気付かない子どもたちが多いという調査結果が出ている*2
明らかな数の間違いに気付くためには、小学校の段階から計算の意味するところを知り、数や量について概算や見積もりができて、概算をうまく使えることが必要である。
このような数や量についての感覚(数量感覚)を養うための学習方法を、インドの数学教育を中心に考えてみたい。
●調査概要
調査テーマ:インドの数学教育の特徴をカリキュラムや教科書・参考書を基に考察する。
考察した特徴が数や量についての感覚、及び数に対する興味・関心にどのような影響を与えるのか、実践を通して検討を行う。
調査対象:都内私立高校 男子51名
調査時期:2007年5月9日〜6月6日
事前テスト…2007年5月9日 
事後テスト…2007年6月6日
学習期間…2007年5月10日から2007年6月5日の約1か月間
調査方法:教材を2タイプ(インドの数学教育の特徴を取り入れた 教材と取り入れない教材)用意し、学習者をランダム に2つの群に分けてそれぞれ家庭での学習を中心に取り 組んでもらった。学習の前後にテストとアンケートを 実施した。
数量感覚の必要性
 次のような小数の計算をするときに、あなたはどのように計算するだろうか?

 5.2 × 5.3 = ???  

 [解き方1]  
 (1) 52 × 53 を計算して、2756を出す。
 (2) 小数点より下のけた数の和が2個だから、右から2つめの位置に小数点をつけて、27.56を出す。
 [解き方2]
 (1) 5.2も5.3も6より5に近い数なので、答えは25から36の間で25に近い数となることを予想する。
 (2) 52 × 53 を計算して、2756を出す。
 (3) (1)で予想した結果から、25に近い数になるように、小数点の位置を決めて、答えの27.56を出す。 
 解き方2は、解き方1と比べて考えることが多いように感じるかもしれない。しかし、計算結果が大体どれぐらいかという見通しをつけながら計算しているので、小数点の調整間違いなど、大きく計算結果を間違えるといったことを防ぐことができる。
 このような数や量についての感覚は、新しい学習指導要領においても、見通しを持ち筋道を立てて考える力を育てるため、また、数理的な処理ができ、生活に生かそうとする態度を育てるための重要な要素となっている。
 また、これらは日常の社会活動においても役立つ数学的な力の一つであるといえる。つまり我々は、日常生活ではそれほど正確な数値を用いているわけではなく、概算といった数量感覚に関する力を適宜用いているのである*3。例えば、表計算ソフトを使って数値の合計を出す場合、数値の個数とその値から計算結果として20万は超えないだろうといったことを使って大よその検算を行った経験はあるはずである。
 ところが、日本の子どもたちに目を向けると、この数量感覚が不足していると思われる事例がしばしば見受けられる。Benesse教育研究開発センターが2007年に実施した小学生を対象とした計算力に関する調査では、明らかにおかしい数値が出ても気付かない子どもたちが多いという結果が出ている。小学校5年生で、「2.8÷0.6(商を1/10の位まで求め、あまりも求める)」といった問題において、小数点が正しく打てない(4.6あまり4とするなど)、問題文の条件がきちんと読み取れていない(商が1/10の位まで求められていないなど)といった理由で答えを間違える子どもの割合は75%を超えている(正解は4.6あまり0.04)。このことは、計算の意味や結果について考えたり、数を大雑把に捉えて確認できる力の不足などが原因の一つとして考えられる。
 一方、諸外国の現状はどうであろうか。次項では、インドでの例を紹介する。
  • *3 吉田甫、多鹿秀継著『認知心理学からみた数の理解』北大路書房/1995年
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