BERD 2008 No.15
【特集】
インタビュー
profile
木村 孟
独立行政法人 大学評価・学位授与機構長
きむら つとむ

独立行政法人 大学評価・学位授与機構長。
東京工業大学名誉教授。
東京大学大学院数物系研究科土木工学専攻修士課程修了。
現在、中央教育審議会教育制度分科会副分科会長、同初等中等教育分科会副分科会長などを務める。
編著に『大学の質を問う』(大学基準協会)、『土の応力伝播』(鹿島出版会)などがある。
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科学技術こそが日本の生きる道
──理科離れを乗り越えるために──
木村 孟[独立行政法人 大学評価・学位授与機構長]

木村  孟
   子どもたちの「理科離れ」が憂慮されて久しい。
 理科離れの背景には、どのような日本社会の変化があるのだろうか。
 そして、日本は今後も科学技術大国であり続けることはできるのだろうか。
 これからの科学教育の在り方について、元東京工業大学学長でかつて中央教育審議会の副会長も務めた木村孟先生に話をうかがった。
キーワード=理科離れ、科学技術、ものづくり
地道なものづくりとそれを支える科学技術こそが日本の生きる道
 日本が将来にわたり、何をもって国際社会で生きていくかといえば、それは科学技術でしかありません。そのために1995年、議員立法で「科学技術基本法」を制定しました。同法の第一章総則第一条(目的)には次のように明記されています。
 「……科学技術の水準の向上を図り、もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与するとともに世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献することを目的とする」
 これは、日本の国益のみならず、科学技術の進歩を通して人類全体の福祉に貢献する、という極めて特筆すべきメッセージです。ひとえにゴールはそこにあります。そこにたどりつくために、初等中等教育の理科、科学者やエンジニアの養成、一般市民の科学リテラシーといった、さまざまな科学教育の課題がある。こうした捉え方をすべきなのです。
 日本は科学技術で生きていくしかない。これを端的にいいかえるなら、日本の国力の基盤は「ものづくり」ということです。
 しかし小泉政権の時代には、「日本の製造業の比率は24%しかない。今それ以外の情報・金融・流通・サービス業などが主流だから、そういった部門のイノベーションにこそ、とりわけ力を入れるべきだ」といった政策の方向性が提唱されました。大量生産・大量消費の時代は終わって、ソフトやサービスに特化した新しいビジネスが台頭してくるのは確かでしょう。しかし、だからといって、ものづくりを軽視すべきではありません。
 そもそも、イノベーションはIT(情報技術)によって引き起こされるといわれますが、そのITはどこから生まれてくるのか。やはり製造業が母体となっているのです。
 ものづくりの世界に華やかさはありません。一夜にして何かを成し遂げたり、極めて短期間に巨万の富を手に入れるなどということはあり得ない。地道な積み重ねこそが大切です。日本という国は、昔からコツコツとものづくりの努力を積み重ね、ここまで発展してきました。そしてものづくりに不可欠なのは科学技術にほかなりません。
 ものづくりから離れると、いかに国の体質が脆弱になるか。このことは、現在先進各国が陥っている世界的な金融危機からも得られる教訓の一つではないでしょうか。
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