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保・幼・小・中連携推進事業を展開する京都市の取り組み
──校種を超えて地域で子どもを育てるために──
京都市教育委員会
迫田恒夫[京都市教育委員会指導部顧問 元地域教育専門主事室室長]
堂上英樹[京都市教育委員会指導部学校指導課首席指導主事]
庄司尚文[京都市教育委員会指導部学校指導課担当課長]

(写真左から)庄司尚文担当課長、
迫田恒夫顧問、堂上英樹首 席指導主事
保育所や幼稚園を卒園した子どもが、小学校での授業や活動についていけない「小1プロブレム」を防ぐ手だてとして保育所・幼稚園と小学校との間で、円滑な指導の接続を図ることの重要性を指摘する声は多い。
そうした中で京都市教育委員会では、中学校までをも含めた保・幼・小・中連携推進事業を中学校区単位で展開している。
京都市の取り組みとは、どのようなものか。連携活動の内容をレポートする。
そうした中で京都市教育委員会では、中学校までをも含めた保・幼・小・中連携推進事業を中学校区単位で展開している。
京都市の取り組みとは、どのようなものか。連携活動の内容をレポートする。
キーワード=小1プロブレム、保・幼・小・中連携
小1プロブレム現象をきっかけに連携を開始
保育所*1や幼稚園の所長・園長と小学校や中学校の校長が、定期的にお互いに顔を合わせて、子どもの育ちや学び、学校・園の在り方について意見交換をする。そのような全国的にも珍しい取り組みを行っているのが、京都市である。京都市教育委員会では、2004年度より保・幼・小・中連携推進事業を開始。市内を中学校区単位でエリア分けして、校区ごとに連携協議会を設置。その校区内にある中学校、小学校、幼稚園、保育所の校長、園長、所長が集まって、情報交換や意見交換を行える場を設けているのだ。
ただしこの取り組みは、全中学校区で展開されているわけではない。事業開始初年度の04年度に連携推進事業に指定されたのは3校区(指定期間は2年)。以来、毎年1〜4校区が指定されている。08年度には4中学校区が指定され、これまでに指定を受けた校区は13校区となった。京都市の市立中学校の数は75校なので、全体の2割弱の中学校区が連携推進事業の指定を受けてきたことになる。学校指導課の堂上英樹首席指導主事は、「連携の必要性を強く感じている中学校区で、できることから取り組みを始めてもらっています。指定期間は2年で終わりますが、その後も連携の大切さが認識され、独自に取り組みが展開されています」と話す。
京都市の連携推進事業がユニークなのは、保・幼・小・中の連携が、「線」ではなく「面」で行われていることだ(図表1)。従来も保・小連携や幼・小連携、あるいは小・中連携は、個別の学校・園ごとには行われてきていた。しかしこの取り組みでは、前述したように、校区内・地域内にある異なる校種の複数の学校・園が、一堂に会して話し合う機会を実現している。保育所の所長と中学校校長が同じテーブルに就くというのは、これまではあまり見られなかった光景だ。また同じ年代の子どもを預かっていながら、所管が異なることもあり交流が少なかった保育所と幼稚園を結びつけている点や、公立ばかりではなく私立幼稚園や民営の保育所を含んでいる点も、画期的といえるだろう*2。
ただしこの取り組みは、全中学校区で展開されているわけではない。事業開始初年度の04年度に連携推進事業に指定されたのは3校区(指定期間は2年)。以来、毎年1〜4校区が指定されている。08年度には4中学校区が指定され、これまでに指定を受けた校区は13校区となった。京都市の市立中学校の数は75校なので、全体の2割弱の中学校区が連携推進事業の指定を受けてきたことになる。学校指導課の堂上英樹首席指導主事は、「連携の必要性を強く感じている中学校区で、できることから取り組みを始めてもらっています。指定期間は2年で終わりますが、その後も連携の大切さが認識され、独自に取り組みが展開されています」と話す。
京都市の連携推進事業がユニークなのは、保・幼・小・中の連携が、「線」ではなく「面」で行われていることだ(図表1)。従来も保・小連携や幼・小連携、あるいは小・中連携は、個別の学校・園ごとには行われてきていた。しかしこの取り組みでは、前述したように、校区内・地域内にある異なる校種の複数の学校・園が、一堂に会して話し合う機会を実現している。保育所の所長と中学校校長が同じテーブルに就くというのは、これまではあまり見られなかった光景だ。また同じ年代の子どもを預かっていながら、所管が異なることもあり交流が少なかった保育所と幼稚園を結びつけている点や、公立ばかりではなく私立幼稚園や民営の保育所を含んでいる点も、画期的といえるだろう*2。
![図表[1]京都市の保・幼・小・中連携推進事業](img/kyoto_fig01.gif)
学校指導課の庄司尚文担当課長は、保・幼・小・中連携推進事業の狙いを次のように話す。
「連携推進事業を中学校区ごとに展開しているのは、地域で子どもを育てるという考え方を大切にしたいからです。義務教育が終わる中学校卒業段階で、子どもが健やかに育っているかどうかは、中学校だけの責任ではありませんよね。保育所や幼稚園を卒園したら小学校に、小学校を卒業したら中学校にというように、学校・園はリレー形式でバトンを渡しながら地域の子どもを育てているわけです。保育所や幼稚園、小学校は、『子どもを上の学校に送りだしたら終わり』ではなくて、『子どもが中学校を卒業するときに、どんな風に育っていてほしいか』をイメージしながら、自分たちは何をするべきかを考えることが大切だと思います。中学校も、保育所や幼稚園、小学校の思いを受け継いで、子どもを育てていかなくてはいけない。そのためにも地域の学校・園が集まって、話し合える場を設け、連携した活動を広めていただきたいと考えたのです」
また指導部の迫田恒夫顧問は、「小1プロブレムなどの解決を図るためにも、校種間の連携強化は不可欠だと考えた」と当時を振り返る。
「今から約10年前、小学校の学級崩壊が社会問題となりました。学級崩壊というと、高学年のクラスで起きるというイメージがありますが、その後の調査では1年生のクラスでも発生していることが分かりました。ただし1年生の場合は、『学級崩壊』というよりは『学級未形成』なんですね。『先生が話し始めたら、席に座って前を向いて聞く』といった小学校で求められる基本的な態度が、子どもたちの間で身に付いていないために、学級が成り立たなくなるケースが多かったのです。こうした小1プロブレムが起きないようにするためにも、保育所と幼稚園、小学校が互いに連携して、円滑な接続を図ることの必要性を痛感したわけです」
京都市教育委員会では00年度より、就学前児童を対象とした「小学校就学体験」等の保・幼・小連携推進事業を開始。02年度には調査研究協力校の取り組み事例を紹介した冊子『就学前児童の小学校体験〜わくわく小学校探訪』を発行し、市内の全保育所・幼稚園・小学校に配布した。
また、同年から「生き方探究・チャレンジ体験」推進事業を実施。これは96年ごろから市内の各中学校で独自に行われるようになった中学校の職業体験を教育委員会が事業化したもので、02年度からは全中学校と総合支援学校*3で実施。生徒約10,000名が約3,600事業所で5日間の体験活動に取り組んでいる。この事業で体験活動先として最も多くの生徒が参加しているのが保育所・幼稚園である。中学校と保育所・幼稚園のつながりもこの事業を契機に強くなっていった。そして04年度からは、中学校進学時においても「中1ギャップ」の問題が起きていることもあり、保育所と幼稚園、小学校の間で行われていた連携推進事業に中学校を加えた、「保・幼・小・中連携推進事業」をスタートさせたというわけだ。
「連携推進事業を中学校区ごとに展開しているのは、地域で子どもを育てるという考え方を大切にしたいからです。義務教育が終わる中学校卒業段階で、子どもが健やかに育っているかどうかは、中学校だけの責任ではありませんよね。保育所や幼稚園を卒園したら小学校に、小学校を卒業したら中学校にというように、学校・園はリレー形式でバトンを渡しながら地域の子どもを育てているわけです。保育所や幼稚園、小学校は、『子どもを上の学校に送りだしたら終わり』ではなくて、『子どもが中学校を卒業するときに、どんな風に育っていてほしいか』をイメージしながら、自分たちは何をするべきかを考えることが大切だと思います。中学校も、保育所や幼稚園、小学校の思いを受け継いで、子どもを育てていかなくてはいけない。そのためにも地域の学校・園が集まって、話し合える場を設け、連携した活動を広めていただきたいと考えたのです」
また指導部の迫田恒夫顧問は、「小1プロブレムなどの解決を図るためにも、校種間の連携強化は不可欠だと考えた」と当時を振り返る。
「今から約10年前、小学校の学級崩壊が社会問題となりました。学級崩壊というと、高学年のクラスで起きるというイメージがありますが、その後の調査では1年生のクラスでも発生していることが分かりました。ただし1年生の場合は、『学級崩壊』というよりは『学級未形成』なんですね。『先生が話し始めたら、席に座って前を向いて聞く』といった小学校で求められる基本的な態度が、子どもたちの間で身に付いていないために、学級が成り立たなくなるケースが多かったのです。こうした小1プロブレムが起きないようにするためにも、保育所と幼稚園、小学校が互いに連携して、円滑な接続を図ることの必要性を痛感したわけです」
京都市教育委員会では00年度より、就学前児童を対象とした「小学校就学体験」等の保・幼・小連携推進事業を開始。02年度には調査研究協力校の取り組み事例を紹介した冊子『就学前児童の小学校体験〜わくわく小学校探訪』を発行し、市内の全保育所・幼稚園・小学校に配布した。
また、同年から「生き方探究・チャレンジ体験」推進事業を実施。これは96年ごろから市内の各中学校で独自に行われるようになった中学校の職業体験を教育委員会が事業化したもので、02年度からは全中学校と総合支援学校*3で実施。生徒約10,000名が約3,600事業所で5日間の体験活動に取り組んでいる。この事業で体験活動先として最も多くの生徒が参加しているのが保育所・幼稚園である。中学校と保育所・幼稚園のつながりもこの事業を契機に強くなっていった。そして04年度からは、中学校進学時においても「中1ギャップ」の問題が起きていることもあり、保育所と幼稚園、小学校の間で行われていた連携推進事業に中学校を加えた、「保・幼・小・中連携推進事業」をスタートさせたというわけだ。
- *1 京都市においては、主に市営が「保育所」、民営が「保育園」という名称だが、ここでは法律で用いられている「保育所」に統一する。
- *2 ただし私立幼稚園や民営保育所については、独自の教育理念があることを考慮して、連携推進事業への参加を義務付けているわけではない。
- *3 学校教育法の改正により、平成19年度より養護学校から総合支援学校と名称を変更した。
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