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「子どもの生活の場」を保障するこれからの保育とは
──新・保育所保育指針が目指すもの──
大場幸夫[大妻女子大学学長]

新しい保育所保育指針が目指すものとは、どのようなことだろうか。
そして、保育の現場にどのような変化をもたらそうとしているのか。
厚生労働省の「保育所保育指針改定に関する検討会」で座長を務めた、大妻女子大学学長の大場幸夫先生にお話をうかがった。
そして、保育の現場にどのような変化をもたらそうとしているのか。
厚生労働省の「保育所保育指針改定に関する検討会」で座長を務めた、大妻女子大学学長の大場幸夫先生にお話をうかがった。
キーワード=新・保育所保育指針、環境による保育、生活の場
子どもの24時間の生活を地域で守っていく必要がある
この4月から施行の、新・保育所保育指針には、私も厚生労働省の「改定に関する検討会」の一員として、その内容づくりに携わりました。旧指針において、保育所が主に担ってきたのは「家庭養育の補完」という役割でした。ここには、時代的な背景が強く影響しています。旧指針は1990(平成2)年に施行されたものですが、80年代後半ごろからすでに、家庭養育を困難にする社会的な状況が生まれてきていました。そのために、保育所保育においては「家庭養育の補完」ということがよりいっそう重要視され、それを非常に強調する内容になっています。
具体的には、子どもの生活の力、すなわち生活能力を育てていく上で、家庭でできない分を保育所が担うという考え方でした。ですから、旧指針では第3章以降が「6か月未満児」「6か月から1歳3か月未満児」というように、6歳児までの子どもの発達過程を8つに区分し、それぞれに必要な保育の狙いと内容を指摘する構成になっています。つまり「身の回りのことが1人でできるようになる」「みんなと一緒に行動ができる」といった、具体的に生活能力を年齢に応じて身に付けさせていくことを保育の指針の主な内容としていたのです。
こうした方針自体は、決して間違いではなかったと思います。ただ、現在ではその当時以上に子どもが育つ地域の環境が崩れているのが実情です。子どもたちの遊び環境は、仲間も空間も、時間までもが次第にそぎ落とされるように奪われているという結果だけが、いっそう鮮明になってきました。都市の子ども広場やマンションの建ち並ぶ街の遊園地とは名ばかりで、猫の額ほどしかなく、わびしいものです。また、里山の風景でさえ現実には田畑が農薬漬けで遊べる場所ではなくなっていたりします。旧指針が想定していたよりも、子どもと家庭にとっての地域環境は、深刻な問題を抱えています。
このような状況の中で、子どもの生活の場、子どもが「人と共に生きる」という体験を積み重ねられる場をどこかで再構築するということを、真剣に考えなければならない時代になってきました。保育者と保護者、さらには幼稚園や学校の先生が共に協働して地域を復権し、子どもの24時間を守り保障する必要が出てきたのだと思います。ですから新指針では、「生活」という言葉を、旧指針のように「生活能力」という言葉の中で使うのではなく、むしろはっきりと「生活の場」という概念として使っています。「生活能力」を身に付けさせるということは大事ですが、生活の成り立ちにくい環境で、子どもが生活する意欲も力も育まれるとは思えません。何よりも子どもの最善の利益を護り、子どもの福祉の積極的な増進に最もふさわしい生活の場を保障することを優先するために、今回の指針では「生活の場」を重視しているのです。
新指針の中に、「保護者支援」という言葉が盛り込まれたのも、そうした流れによるものです。「家庭養育の補完」といっていたときはまだ生活の土台そのものを家庭の養育が持ち得ていました。その意味では、部分的な支援で済んだけれど、そうではなく、地域の家庭生活全体を支援する体制を整える必要があります。もしもこれを単に「保育所の負担が増えた」と考えるとすれば、それはあまりに皮相的な認識だと思います。今後、こうした「子どもの24時間の生活を保障する」という考え方に基づいて、地域の保育所だけではなく幼稚園や認定こども園などとも協働する体制ができれば、と願っています。
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