BERD 2008 No.15
【連載】
教える「現場」
育てる「言葉」
profile
東京消防庁第六消防方面本部
消防救助機動部隊部隊長
鎌仲修実

かまなか おさみ
消防人として30年弱、レスキュー隊の経験も14年に及ぶベテラン。
新潟県中越地震の救助活動に刺激され、ハイパーレスキューに異動を希望、昨秋に部隊長となった。

ハイパーレスキュー

正式名称は、消防救助機動部隊。
1995年1月の阪神・淡路大震災を教訓に、 東京消防庁が96年12月に組織した。
震災をはじめとする大規模災害や毒性物質が流出するなどの特殊災害(NBC災害)に対処できるよう、高度な救助・救急技術と、そのための大型重機や特殊車両、人命検索の機材を併せ持ったスペシャリスト集団である。
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「熱き男たち」を背後で見守る「退け」の視線
スペシャリストが教え、教えられる組織
鎌仲 修実[東京消防庁第六消防方面本部 消防救助機動部隊部隊長]

鎌仲 修実
 近年は映画やテレビでも取り上げられ、その存在と活躍ぶりが広く知られるようになったハイパーレスキュー。
 大きな地震などで私たちの生活基盤が破壊され、命の危険にさらされるといった特殊な状況に備え、高度な人命救助の技術をさらに進化させようと、意欲的な訓練が続けられている。
 彼らの向上心はどのような学びの形をつくり出しているのか。部隊の一つを訪ねた。
高いモチベーションが専門性の壁を突き崩す
 ハイパーレスキュー(以下、HR)が自らを「ハイパー」と称する根拠は何か。一つは、消防署の特別救助隊(レスキュー隊)よりも広域を受け持つこと。都内を10分割する方面本部のうち4か所に置かれたHRは、それぞれ複数の区や多摩地域をまとめてカバーしている。もう一つは、能力範囲の広さ、つまり災害で通常の交通が遮断された現場にも自力で到達し、救助と救急の両面で活動できるという特徴があることだ。第六消防方面本部部隊長、鎌仲修実さんは、次のように話す。
 「被災者を救い出して安全な場所に移し、それから救急隊の手で救命処置や救急搬送というのが従来の手順。HRの場合、救急隊が間に合えばそちらに任せますが、部隊の中にも救命士がいるので、救出しながら救護も並行して行えるところが違う。わずかな時間の差も、災害時には命に関わる意味を持つのです」
 過酷な状況下でも、自分たちだけで人命救助が可能な「自己完結型」の組織、それがHRの特質なのだ。要求がハイレベルなだけに、隊員になるのは狭き門である。第六消防方面本部の場合、24時間交替で勤務する三つの部隊に各20人、合わせて60人を擁するが、欠員が生じたとき以外、新加入の余地はない。少ないチャンスをつかむのは、特別救助隊や水難救助隊の出身者、重機の資格所持者、救急救命士などである。
 「専門性と臨機応変な頭脳、それと当然ながら、体力も要ります。命を救うことが生きがいなのは消防に関わる全員に共通すると思いますが、中でもそのスキルにおいて選りすぐりの面々がHRをつくっている。だから、部隊長という立場でも、いちいち指導したりはしません。訓練中も、離れた場所から全体を見ることに徹します」
 災害に見舞われた人々の生命を守ること。隊員たちの高いモチベーションは、この一点に集約される。明確な目的がある彼らにとって、大事なのは個々の災害へのベストの対処法を探すこと、そしてどこまでも技術を向上させることだ。したがって、部隊長いわく「ものすごい熱い男たち」の訓練は、常に一方が教え、一方が学ぶのではなく、互いの知識を与え合い、主張をぶつけ合うエネルギーが充満した時間となる。
 「それぞれ特徴を持った者同士が一体となって動かないとだめなので、みんな普段から得意なことは教え合うようにしています。自分と違う役割の仕事を理解しているのとただ人任せにするのとでは、連携の質がまるで違ってきますからね」
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