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特集 FDの再構築

FDの再構築

 FD(ファカルティ・ディベロプメント)の重要性への認識が高まり、組織的な取り組みも増えつつある。その一方で、実施そのものが目的化し、形骸化してしまうという「FDの隘路」に迷いこみ、出口を探る大学も多い。目指すべきゴールを明確にした上で具体的な道筋を決めていく「FDの再構築」が求められている。本特集では、「教育力の向上」という理念の下、独自の発想、絶えざる議論、Plan-Do-Seeの手法などによって裏付けられたFDのモデルケースを見ながら、再構築への手がかりを考える。

3 リメディアル教育

 試行錯誤の中、一部の大学ではリメディアル教育のノウハウを蓄積しつつある。カリキュラム全般の見直しという付加価値も生まれているようだ。
●いかにモチベーションアップを図るか
●データの分析・評価とフィードバックはなされているか
●入試の見直しは議論されているか


【実践】
龍谷大学理工学部 英語の基礎クラスとリメディアル

正規科目と連動させモチベーションアップを図る

 龍谷大学理工学部における英語のリメディアル教育は、今年度が2年目となる。初年度の反省点を踏まえ、目標の明確化、カリキュラムへの位置づけ方、専任教員と外部講師の連携など大幅な見直しを加えて再スタート、これまでのところ脱落者を出さずに進んでいるという。今年度を本格実施として、前期分のデータを検証した上でさらに改善を加えていく予定だ。今回のボトム層への対応が、アッパー層にはどう対応したらよいかという視点をも生み、FDのさらなる展開につながりそうな気配だ。

■進級制で専門科目に必死

 同学部では現在、英語のほか物理・数学・日本語表現でリメディアル科目を設けている。理科の入試科目は物理と化学からの選択となっており、物理を履修しないで入学する学生も増えている。入試の見直しも議論されたが、他大学でその動きがない以上、容易には踏み切れない。物理・化学を必須にすれば志願者が減るのは目に見えているからだ。入試を変更できない以上、入学後のリメディアル教育によって教育責任を果たすべきだと判断。(財)大学コンソーシアム京都が提供するプログラムに乗る形でスタートさせた。
 初年度の英語については、1年次の英語で単位がとれなかった学生を半ば強制的に指名する形で2年次前期に実施した。しかし回を重ねるごとに受講者が減り、思わしい成果を挙げられなかった。原因として、単位認定されないこと、担当講師に任せきりにしたこと、結果的に対象学生のレベルに合わない授業になったことなどが挙げられる。理工学部では学内で唯一進級制度を敷いており、学年ごとに所定の単位数に達しなければ留年する。ほとんどの学生は、専門科目を落とさないよう必死で、単位にならないリメディアル科目まではなかなか手が回らない。
 一方、コンソーシアムから派遣される予備校講師が決まったのが新年度直前の3月で、十分な打ち合わせができなかった。学生の実態を把握しないまま講師主導の授業が続けられ、教材には外国語大学の編転入試験の問題などが使われた。学生にしてみれば「補習授業についていけない」という本末転倒の事態を招くことになった。

▼左から英語担当の岡本雄二教授、教務主任の松本和一郎教授
図

■推薦などによる入学者を対象に

 こうした点を踏まえ、英語のリメディアルの再構築にむけた議論が重ねられた。まず、開講の目的は「基礎力の養成」であることを再確認。リメディアル科目そのものの単位化については合意に至らなかったが、同じ目的の下に正規科目として「基礎クラス」を開講、これと連携させることになった。対象はいずれも指定校推薦、課外活動選抜推薦等で入学した約40人の1年生で、後期まで実施する。英語の入試科目を受験せずに、11月に合格が決まるため実質4カ月間高校での英語学習がおろそかになりがちだからだ。
 基礎クラスは週2回で、いずれも英語担当の岡本雄二教授が担当している。1人の教員が週2回同じクラスを担当するという学部初のケースにしたのは、基礎データが取りやすいと考えたからだ。
 リメディアル授業はこの基礎クラスと連動する形で、同じ学生を対象に週1回行っている。初年度とは異なる予備校講師が1人で担当。受講は強制ではないが、学生には単位科目の一部として認識させる仕掛けをしている。講師と岡本教授のコミュニケーションによって、リメディアルを受ける方が基礎クラスの授業が理解しやすいよう内容が調整される。
 さらに、リメディアルで毎月小テストを行い、結果を正規科目の成績に反映させる。リメディアル講師から提出される月例報告書がコミュニケーションの柱。授業内容はもちろん、使った教材や学生の反応などを記入してもらい、正規科目の参考にする。必要に応じてメールでもやりとりしている。

リメディアル担当講師から岡本教授に提出される月例報告書
図

■自学自習できる基礎力が目標

 連携の機軸となっているのが基礎力養成という目的の共有だ。岡本教授は、これをより具体的に「自学自習できる能力を身につけさせること」だと話す。辞書を使えばある程度の英文を理解できる、というレベルまで引き上げたいという。リメディアル講師にも、「中3から高1レベルでいい。辞書持参を徹底させてほしい」と注文している。実際、リメディアルの授業では辞書を使って英文を読み、つまずきやすい部分を解説するという方式にしている。
 英語では一般的に聞く、話すというコミュニケーション能力が重視されるが、理工学部の学生には特に読解力が必要なのだと岡本教授は指摘する。「3年次から入ってくる科学技術英語では専門分野を英語で理解する力が必要になり、卒業後も英語のマニュアルを読む機会がかなりありますから」
 同教授が基礎クラスのスタート時にアンケートを実施したところ、「英語が好き」と答えた学生は40人中2人しかいなかった。半数の20人が「嫌い」。しかしそのうち11人は「将来、英語が必要だと思う」と答えている。嫌いだが、やらなければいけないという自覚はあるのだ。そんな学生たちをどうサポートしてやるべきか。「それが自学自習の力だと思います。この11人に辞書を使いこなすスキルがつけば、基礎クラスとリメディアルはひとまず成功でしょう」

■アッパーの支援も視野に

 理工学部では今後、英語のリメディアル教育を発展解消させ、2003年度からは習熟度別クラスへの移行を検討している。岡本教授はそこで、基礎クラスのデータを生かしたい考えだ。「今はボトムの学生の教育に力を入れていますが、アッパーの方にも目を向けるべきです」。モチベーションが高く、国連英語検定やTOEICなどの資格試験にチャレンジする学生たちの支援体制も正規授業の中で整えていきたいという。
 現在、英語担当の専任教員は全員文学や英語学、言語学が専門のため、資格対策については通訳など実践的スキルのある非常勤講師の採用を想定している。「今後は、教育の内容によって人材を適切に配置するコーディネート能力が教員に求められます。もちろん、組織に関わる微妙な問題を含んでいますから、慎重に検討していく必要があります」
 英語以外のリメディアルについては1年間での評価・検証は難しいと判断、今年度も同じ形態で実施されている。教務主任の松本和一郎教授は「龍谷大学にとってのリメディアルとは何かというコンセプトを今年度中に明確にして、今後はそれに適合するものを予算化する形にしたい」と話す。
 同教授は、近年の学生のモチベーション低下について「『必修科目なのになぜ出席しないのか。来年も私が担当だよ』と言っても『そうですねえ。どうしましょう』と要領を得ない。とりあえず今嫌なことは先送りする」と苦笑する。「そんな彼らが『何のために学ぶのか』『なぜ龍谷で、なのか』という目的意識を4年間でしっかり持てるような教育をする必要があります」。自学自習を促す英語の基礎クラスやリメディアルも、そのための一手法と言えそうだ。


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