Between 2002.5
特集 大学職員のキャリアアップ

Case 3 関西学院大学

充実した研修カリキュラムを人事諸制度と密接にリンクさせる

 80年代から人材の再開発を掲げ、個人の能力開発の支援や管理職の意識付けなどを目的とした人事諸制度改革に着手した関西学院大学。「自己申告制度」「管理職面談制度」「職能資格制度」を三つの柱とし、多彩な研修制度と関連づけ、職員のモチベーションを向上させている。



■評価基準を開示し、能力資格を給与に反映

 関西学院大学が大学を取り巻く環境の変化を予測し、いち早く年功序列型の人事制度からの脱却と改革に着手したのは約20年前。1981年に「自己申告制度」を、84年に「管理職面談制度」、そして87年から人事考課制度を軸とした「職能資格制度」を段階的に導入している。
 自己申告制度では、職員が提出した能力開発の取り組みや自身の適性、職場改善への提案などをもとに、管理職者と職員が一対一で面談を行う。管理職者と職員の意思疎通を深めるとともに、職員一人ひとりの能力開発を図る。
 これに伴い、人材育成に当たる管理職者に、その役割を再確認させ、職責に対する自覚を高めるため管理職面談制度が導入された。管理職者が自身の業務内容を自己評価した上で、局長・部長など上位職者と職務について討議する中でその資質向上を図る。
 石原一則人事課長は「これらの改革の契機となったのは、教育・研究の多様化、国際化が進行し特色ある教育が求められるという『外圧』や、人件費など諸経費の制約などの『内圧』から、既存職員の能力の再開発が至上課題となってきたこと。しかし、従来の年功序列制度では、いくら能力を高めてもポストや給与体系の制約から処遇面には反映されず、職員のモチベーションは高まらない。そこで、職能資格に基づく人事考課制度を創設しました」と説明する。
 職能資格制度では、管理職とは別に、業務遂行能力などを基準に事務職員の場合、書記、主事、参事など7段階の資格を設定。この職能資格は、給与体系にもリンクしている。
 しかし、一般企業と異なり、概して大学職員の業務は成果が見えにくく、給与に反映させる際、客観的な評価が可能なのかという問題がつきまとう。そこで、制度導入と同時に資格別の評価基準を公開。さらに職員が「職務遂行能力」「業務成績」「勤務態度」の3要素について自己評価表を提出し、直属の上司、所属長がそれを参考にそれぞれ第一次、第二次考課を行うシステムを構築した。第一次考課後は、上司と職員が考課結果について話し合うフィードバック面接も設け、評価の密室性を極力排除するよう努めている。
 こうした改革の効果について「管理職者のレベルや一般職員の仕事に対する緊張感は確実に高まりました。人材育成においては、目標を設定し成果を評価した上で本人にフィードバックするという目標管理手法も統一できました」と石原課長は総括する。



■資格別に研修テーマを設定し、業務との連携を重視

 一方、能力開発については、研修を人事制度と連携させているのが特徴だ。同大学には、職場内研修(OJT)、職位別や海外研修といった職場外研修、自己啓発研修、私立大学連盟などの各種研修会に派遣する外部団体研修の四つの研修体系がある。中でも職場外研修の一環として、職能資格制度と同時に新設された資格別研修は重要な役割を持つ。
 この研修は、月1回学内で開かれる演習研修、通信教育研修、近畿学生相談研究会など外部機関が開催する講座に参加する外部講座派遣研修、各自で文献を選定しレポートを作成する文献研修、OA研修のいずれかの形式で行われるが、資格、昇格後年数別にカリキュラムが細かく設定されている[表1]。事務職掌の各資格昇格後3〜4年目以降や管理職、医療職などは自由課題研修を行う。
 「資格別研修は、日常業務の中に位置付けられる内容であることが大切です。そのため、業務との連動を意識し、テーマは時流に沿うように毎年変えています」と石原課長。
 また、職員の相互啓発を図るために、研修でまとめた論文や研究を発表できる『研修紀要』という小冊子も年1回発行している。
 資格別研修の成果は経験年数、勤務状況とともに昇格要件の一つにも盛り込まれ、カリキュラムを一つひとつクリアしていかなければ、昇格できない。また、その研修計画や成果は自己申告制度によって毎年1月に報告し、研修目標の達成度、今後の自己啓発課題などについて管理職者と職員が面談を行うなど、研修によるキャリアアップの効果を重視し、人事制度の中に明確に位置付けている。
 ただし石原課長は、今後はこうした一律の研修制度だけでは十分ではないと指摘する。「これから大学改革によって状況が大きく変化することを考えると、研修を『受けさせられている』という姿勢ではだめ。職員がキャリアアップを自主的に目指し、大学がそれを支援していく環境が大切でしょう」


[表1]<資格別研修>職員研修課程(カリキュラム)事務職掌用の例

表1



■自己啓発研修の拡大でキャリアアップを支援

 そこで、最近力を入れているのが自己啓発研修だ。この研修では、独自の勉強会や学外の英会話、社労士講座など本人が希望する自発的な学習に対して費用援助を行う。また、同大学では、産業能率大学や通信制語学講座を運営するアルクなどと提携し、パソコンソフトの使い方やシステム開発などの情報関連技術をはじめ簿記、語学、ビジネススキル、人事・労務といった職域別の専門講座など114コースの通信教育講座案内を作成。今後も、拡充する方針だ。
 大学改革が進む中、職員は、教員と連携しながら経営管理能力を発揮していかなければならない。石原課長は「これからの大学職員は情報を整理、統合して課題解決方法を見出す高いレベルでの課題対応能力と、職場全体の協力関係を構築し、組織としてまとめ上げていく対人対応能力が必要です」と言う。こうした展望に向け、関西学院大学では、今後、人事評価のあり方の見直しも検討している。


[図1]資格別研修と人事諸制度のスケジュール

図1


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