Between 2002.7・8
特集 アドミッションズ・オフィスの役割

【レポート】 専任教員を配置し追跡調査と情報還元も担う

国公立大学〜岩手県立大学・九州大学・筑波大学

 国公立大学でも、アドミッションズ・オフィスを設けるところが増えているが、募集人員のごく一部を選考するAO入試の実施など、権限や機能がかなり限定されているのが現状だ。その中にあって、岩手県立大学では、一般入試も含めた入学者の追跡調査や入試に関する調査・研究を行う情報センター的業務も担当。また九州大学では、少人数ではあるが学部の枠を取り払った教育プログラムを設け、全学的なアドミッション・ポリシーに基づいて入学者を選考することで、学部主導入試からの脱却が試みられている。これらの先進的な試みを紹介しつつ、課題にも触れてみたい。


AO選考で他学部教員の視点も

 岩手県立大学のアドミッション・オフィスは1998年度の開学と同時に発足、志願者の能力、適性等を多面的に評価する入試方式の企画・開発が当初の主たる業務で、これが00年度からのAO入試につながる。AO入試だけでなく、学部が選考する一般選抜、推薦入試も含めてアドミッション・オフィスが入学後の学業成績の追跡調査を行い、データを学部にフィードバックしている。さらに、入試全般の調査・研究も行うなど、AO入試の実施にとどまらない役割を担っている。
 組織は、オフィス長と3人の専任教員で構成している。同オフィスの下には、各学部から3、4人の教員が参加するAO委員会を置き、これがAO入試の選考を行う。ある学部の学生を選考する際は、必ずその学部以外の教員が加わり「アドミッション・オフィスとしての視点」を入れている点が特長だ。
 同大学はもともと、「相撲部屋方式」と称するほど高校訪問には特に力を入れていたが、この姿勢はAO入試にも引き継がれている。書類評価の過程で、必要な場合には高校を訪問して教員へのヒアリングを実施。オフィス室長の沼田俊昭教授は、「面接だけでは分からない能力を見極めることができるし、高校との信頼関係を深めその後のネットワークにもつながります」と説明する。



学生主体の相談会を実施

 九州大学では、01年度から「21世紀プログラム」という新しい教育プログラムを導入した。既存の学部・学科の枠にとらわれず、学生が自らの興味・関心に応じて、自主的に学べるスタイルで、AO入試で選抜される。
 アドミッションセンターでは、これをアピールする進学相談会の企画・運営にプログラムの学生たちも巻き込み、実際の相談会にも同行してもらっている。「先輩から直接アドバイスが聞けるということで、高校生たちにも好評です」と、同センターの武谷峻一教授。
 アドミッションセンターでは、AO入試の実施やこうした高校との連携のほかに、広報全般、入試方法の調査・研究も行っている。さらに、学生の追跡調査と学部へのフィードバック、専任教員による学生のカウンセリングによって入学後の学生フォローを行っているのも特長だ。



全学の教員の協力を得て実施

 筑波大学のAC(アドミッションセンター)入試は受験生の問題発見能力、問題解決能力を重視して選抜している。そのため、自己推薦書のフォーマットを決めずに、自分でアピールしたい形を工夫し、添付資料もつけて応募させるなどプロポーザル(提案)型の入試を実施している。また、2次選考となる面談も受験生1人に30分の時間をかけてじっくりと選抜する。
 このように手間ひまのかかる入試を実施するには、アドミッションセンターの教員(センター長と専任4人)だけでなく、各学類から選ばれた十数人からなる専門委員の教員の協力が必要となる。専門委員は自分の所属する学類以外の受験生の選考にも参加する。
 また、教育目標に適合した入学者の選抜方法の調査研究も、同大学のアドミッションセンターの重要な役割となっている。入学者の追跡調査なども行い、年1回の学内報告書を出している。



ネックは職員の異動

 3大学のアドミッションズ・オフィスは、いずれも教員がトップを務め、主たる構成員も教員である。専任の教員を配置する国公立大学が増えつつある状況には、設置形態による事情があるようだ。
 武谷教授によると、職員は最長3年のローテーションで部署を異動。高校訪問をしても、ようやく顔を覚えてもらったところで異動となってしまうという。「アドミッションセンターのように、仕事の蓄積が重要な部署では、もう少し長く在籍できるようにしてほしい」ということだ。
 異動は、職務経験、ノウハウの蓄積にも影響を及ぼす。岩手県立大学の場合、職員は3〜5年で県庁などとの間を異動するため、大学職員としての専門性が形成されにくい。「もっと職員に専門性をもって活動してほしいという希望はもっていますが、現実問題として難しい(沼田教授)」のが実情だ。



独法化が職員登用の契機に

 国公立大学の中には、教員主体のアドミッションズ・オフィスが必ずしも望ましい姿だとは考えていないところもある。その点について、武谷教授は「独立行政法人化が職員登用の契機になる可能性がある」と指摘する。「独法化に伴って、各大学の裁量で職員の人事も行えるようになれば、入試を専門とする職員を配置することも可能になりますから、相応の権限の委譲ができるようになるはずです」というわけだ。
 文科省の答申「新しい『国立大学法人』像について」の中でも、「事務組織が、法令に基づく行政事務処理や教員の教育研究活動の支援業務を中心とする機能にとどまらず、また、日常の大学運営事務に加えて、教員と連携協力しつつ大学運営の企画立案等に積極的に参画し、学長以下の役員等を直接支えるなど、大学運営の専門職能集団としての機能を発揮することが可能となるよう、組織編制、職員採用・養成方法等を大幅に見直す」ことが明記されている。
 ただし、武谷教授は、必ずしもアメリカの大学のように、全権を職員に委ねる必要はないという意見だ。「研究に専念することを希望する教員もいるでしょうが、一方で、教育、あるいは教育行政に貢献しようという教員もいてもいいと思うのです。問題は、現時点では、アドミッションセンターの業務が教員にとってキャリアアップにつながりにくいことです。きちんとした評価の対象にならなければ、真剣に取り組まない者も出てくるでしょう」と、課題を指摘している。
 以上のように、職員の異動などの制約により、教員主体で活動しているのが国公立大学のアドミッションズ・オフィスの現状といえる。だが、今後、独法化が一つの契機となって、職員の役割が大きくなってくることは間違いのないところだろう。


岩手県立大学

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