第12回 他大学、行政、地域を巻き込み地震防災を体系的に教える 静岡大学 |
| 04年10月の新潟県中越地震によって、災害対策の重要性があらためてクローズアップされている。近い将来、東海地震の発生が予測される静岡県では、以前から県独自の「地域防災の日」を定め避難訓練を行うなど対策に力を入れる。そんな地域的な背景のもと、静岡大学では正課、課外の両面から防災教育に取り組んでいる。
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14人が1コマずつ受け持ち、多角的に授業を展開
04年度、静岡大学の共通教養科目である総合科目に、「地震防災」が新設された。同大学の共通教養科目は、大学導入科目、教養基礎科目、総合科目、外国語科目、保健体育科目、情報系科目の六つの科目群から構成されている。
この中で総合科目は、自分の専門分野の位置付けを客観的に捉えてもらう狙いで3年次の選択必修科目として設定されている。分野の異なる複数の教員が一つの科目を担当するのが特徴だ。
「地震防災」では、理学部、教育学部、情報学部など5学部の教員に加え、近隣の東海大学、富士常葉大学の教員や行政担当者、災害ボランティアコーディネーターなど4人の外部講師を招き、計14人が1回ずつ授業を行う。1人1コマにしたのは、講師の負担を減らすとともに、地震の基礎知識から地震史、想定される災害、経済的影響、行政の役割、災害ボランティア活動、災害時の医療など防災に関する多角的な授業を展開するためだ。
例えば「地震防災行政」をテーマにした授業では、県の防災局の職員が、地震発生時の行政の対応の流れを紹介。「災害ボランティア活動」ではDIG(災害図上訓練)という手法を使って、拡大した地図上で地震の際の危険地区、避難場所を検討させたり、避難所の統率・運営方法を学ばせる。最終授業では、大学としての防災の基本的な考え方を伝えるとともに、今後どのような取り組みが必要か学生の意見も発表させる。
「これまで理学部や教育学部では地震や防災を扱う科目がありましたが、地震防災を体系的にまとめた科目はありませんでした。そのため以前から、経済、歴史など文科系の教員や学外の防災の専門家、実務家を集め、幅広い観点で地震防災を考える科目をつくりたいと考えていました」と、担当教員の理学部地球科学教室の里村幹夫教授は説明する。
04年度、たまたま総合科目に空きが出たことを受け、同教授が構想を提示したところ、大学として中期計画に防災教育を盛り込んでいたこともあり、実現したのだという。
授業は静岡キャンパスで半期ずつ2期実施され、受講者数は前期・後期とも120人。前期は試験的に工学部、情報学部のある浜松キャンパスとの遠隔授業も行い、こちらも受講者数は120人であった。試験ではなく毎回レポートを課して評価する仕組みにしたこともあるが、受講希望者は前期・後期ともに150人程度に上り、教室に入りきれないため絞らざるを得なかったという。
「好評だったので、05年度は浜松キャンパスの遠隔授業を後期にも実施する予定です。普段はあまり地震について考えていなくても、不安は誰もが持っています。自分の命に関わることですし、防災への関心は強いのでしょう」と、里村教授は分析する。
実際、受講者の感想では、「自分にとってためになる授業だった」「地震という自然災害のイメージが変わった」「いろいろな角度から地震を考えられて良かった」といった内容が多かった。また、様々な学部の教員や外部講師が多数関わることについて、「先生が代わるのは先生方にも学生にとっても良いのではないか」「大学以外の先生が入ることで視野が広がる」という声も寄せられている。
実は、学外からも講師を招聘した目的は教育内容の充実だけではない。「近くにあるにもかかわらず、これまで環境防災学部のある富士常葉大や、地震予知研究センターを持つ東海大海洋学部との交流はほとんどありませんでした。行政についても、県、市の現状の防災構想では小中学校主体に避難場所を指定するなど、大学が組み込まれていません。この授業をきっかけに、他大学、行政、地域との連携体制をつくり、大学の防災力を高める狙いもあるのです」(里村教授)。
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