Benesse教育研究開発センター
教育力の時代
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教育力の時代―FDのその先へ―

第13回 オリジナルの教科書で技術文章を徹底指導
岡山大学工学部
 岡山大学工学部では卒業生の8割が修士課程に進学し、大半が研究者、技術開発者の道を歩む。このような進路を見据え、機械工学科では「自ら考え、発言し、行動する発想型技術者」の育成を目標に、日本語の表現力や発想力のトレーニングを展開。2004年度の特色GPに採択され、オリジナルの教科書が日本工学教育協会賞を受賞するなど、その成果が注目を集めている。
「技術者にも文章力が必要」と具体例を示して理解させる

 正しい漢字表記や送り仮名、接続詞の使い方、わかりやすい文章の書き方―。一見、高校の国語を彷彿とさせる授業が、岡山大学工学部機械工学科で実施されている。科目名は「技術文章学」。卒業論文を意識し始める3年次前期に、週1コマの必修専門基礎科目として配置され、毎年約80人が受講する。実験レポート、論文など技術文章を書く際の基本テクニックを身に付けさせることが目的で、文章の書き方から始まり、参考文献の引用ルール、論理の展開方法、図表の作成方法まで教える。さらに、プレゼンテーションやディベートのノウハウを学ぶ演習も盛り込み、総合的な表現力のアップを図る。
 この科目がスタートしたのは95年度。教科書などを自ら作成し、授業を立ち上げた塚本真也教授はきっかけをこう話す。「学生の書いた論文は誤字が多い上、言いたいことがわかりにくい。最初は赤字を入れたり口頭で指導するなどしていましたが、まったく進歩が見られず、学部で体系的に技術文章の書き方を指導しなければだめだと痛感したのです」。他の教員からは「卒論の書き方は4年次でやっている」「文章の書き方まで教える必要はないのでは」という声も出たが、「読む、書く、話す」というコミュニケーション能力の不足が指摘されていたことが後押しとなった。
 しかし、「国語が嫌いだから工学部に来たのに」「新しい製品を開発する知識さえあれば十分ではないのか」と学生が反発するなど、最初はなかなか思うような効果が上がらなかったという。そのため、1、2回目の授業で学習の動機付けのためのオリエンテーションを導入。特許申請の文書が的確に記されていなかったために訴訟で損害を被った企業のケースなどについてディスカッションさせる中で、社会に出れば技術者にも文章力が求められることを理解させた。
 最初の3年間は自作の教科書を使って座学で授業を展開し、レポートを3回提出させ添削する形式を取っていたが、学生が復習しないため、文章力の向上につながらなかった。そこで、塚本教授は新たに演習問題集を作り、宿題として課すようにした。問題集は約450問、計226ページにわたり、文章中の漢字表記や図表表記の誤りを見つけたり、接続詞に合わせて文章を変える、特定のデータを強調する方法を考える、といった設問が並ぶ。「全部解くのに、おそらく20時間ほどかかります。着実にやってもらえるように、試験もこの問題集をやっていれば解ける内容にして、問題集の取り組み具合によって最高5点までの演習点をつけることにしました」。
 塚本教授が作成した教科書は一般書籍として学内外の書店でも販売されており、それを見ながら論文を書く学生の姿が多く見られるようになっている。そのため、他学科の教員からも「学生の論文がしっかりしてきた」と感謝されるという。一方、教科書が日本工学教育協会賞を受賞したり、他大学でも使用されるなど、学外でも高い評価を受けている。05年度からは、工学部の他の2学科にもこの授業が拡大される予定だ。


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