各章の要約
第1章 日本の高校生の家庭英語学習の実態と日常英語使用経験
生徒の学校外での実態について、家庭での英語学習と日常での英語使用経験の2点から分析、考察を行う。調査結果から、平日に宿題、予復習をほとんどしない生徒が4割、平日も休日も宿題、予復習をほとんどしない生徒が約4分の1もいることがわかった。また、家庭での英語学習の大半が「宿題と、次の授業の予習」であり、平均学習時間から推測すると、その内容が辞書引きで終わっている可能性があると考えられる。また、英語使用経験については、韓国の生徒より日本の生徒の使用経験率が低かった。さらに、使用経験を英語力別にみると、経験率には英語力の影響がみてとれる。また、日本の生徒は、英語力が高くても韓国の生徒ほどは英語を使用していないという点は課題である。これらの結果から提言として、家庭学習の時間と内容について検討が必要であること、また、英語使用経験について実際に教室外で英語を使わせるような働きかけが重要となってくることが挙げられる。
第2章 日本の高校生の英語学習に対する小中高での情意変化と動機づけ
小学校での英語活動で重きがおかれている「情意」について、小・中・高における情意の変化を探るとともに、動機づけの質的な分析を行い、情意とスキルの育成のバランスについて考察を行った。小学生段階では英語学習に対して肯定的な回答が多いが、中学生、高校生へと進むにつれて否定的な回答が増え、小学生時の肯定的な態度が失われていく傾向があることがわかった。一方、高校時に好きである生徒は、高校入学前に好きになっている傾向があり、小学生段階で育成した情意を保持することの重要性が示唆された。さらに、情意と能力の関係をみるため、能力層ごとの学習動機について分析を行った結果、能力的に高い値を示していた生徒は、コミュニケーションを取りたいという友好動機や言語文化への興味動機を持っていることがわかった。また、教室での英語学習活動との関連においては、能力の高い層では、何かをまとめて伝えるといった統合活動の認知が高いという結果が得られた。
第3章 日本の高校生の新旧課程における能力変化と教員の意識変化
教育課程の変化に伴う生徒の質的な変化や、センター試験でのリスニングテスト導入による影響をみるため、2003年度に実施した調査結果と今回の2006年度調査の結果を比較し、生徒の能力や特性の変化、教員の意識の変化について考察を行った。今回の調査結果は、限られたサンプルから得られた限定的な結果ではあるが、リスニング力、ライティング力における伸びがみられた。リスニング力の伸びの要因については教育課程の変化のみとは言えないものの、テスト結果および教員の意識調査からも、新課程生においてリスニング力が向上していることは事実と言えそうである。一方で、文法力や語彙力の低下を指摘する声も多くあり、中学からの接続を意識したリメディアル的な授業展開が今後必要となるであろうことが、示唆された。
