第4回 学習基本調査 ハイライト&関連情報
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専門家の眼

キーワードは「脱受験競争」と「脱ゆとり」

お茶の水女子大学 文教育学部長 耳塚 寛明 先生

 

本調査の企画・分析に第1回目から参画いただき、調査研究会の代表を務める耳塚寛明先生(お茶の水女子大学 文教育学部長)に、調査の結果から言えることや今後の課題をお話しいただきました。

 

記者発表会(2006年12月11日実施)でのコメントを再編集したものです

 

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調査結果のポイントを話される耳塚先生

本調査が初めて実施された1990年から十数年が経ちますが、この間、「不易」と思われていた日本の教育は大きく変動しました。ほぼ5年ごとに行なっているこの調査の結果は、その時々の姿を映し出しているように感じます。
2001年に実施された第3回調査では、高校生の進学率が向上する一方、学習時間の減少、達成意欲の低下などが見られました。本格的な「脱受験競争」 時代というものをデータから実感できたわけです。

 「脱受験競争」――学習や競争の分極化

2006年に実施した今回の調査結果は、およそ2つのキーワードで捉えられると思います。
第1のキーワードは「脱受験競争」。5年前に行った前回調査の結果から、その姿がさらに鮮明に見えてきました。これを如実に表すのが高校生の学習時間で、1990年の第1回調査からほぼ一貫して低下しています。
とりわけ、偏差値50以上55未満の中上位に位置する高校生の学習時間が大きく減少しています。かつては偏差値55以上の上位ランクの生徒と同じくらい勉強していた層が、勉強から遠ざかっているのです。

一方、「脱受験競争」とはいっても、すべての子どもたちが競争から解放されているわけではないようです。例えば小学生の学習時間の変化を見ると、成績別の学習時間の格差は広がっています。通塾率が進学塾で9.3%(2001年)から14.3%(2006年)へと伸びていることや、中学受験の希望率が大都市圏で27.1%(1996年)から37.7%(2006年)へと飛躍的に伸びていることを考え合わせると、成績上位層の学習時間が伸びた背景には受験を意識した学習行動があるといえます。つまり、学習熱心な一握りの層と、そこそこしか学習しない層とに分極化している――これが「脱受験競争」時代の実態ではないかと思います。

 「脱ゆとり」――学習離れに歯止め

第2のキーワードは「脱ゆとり」です。小・中学生を中心として、学習離れに一応の歯止めがかかりました。なぜ歯止めがかかったかという分析は難しいのですが、学力低下論と保護者の不安を背景として、「確かな学力」を徹底させる指導が功を奏したのではないかとみています。全国的なデータはありませんが、現場の先生方にインタビューすると、家庭学習指導の徹底や基礎的なスキルの訓練に力を入れている様子がわかります。これが「脱ゆとり」路線の成果の一つと考えられます。

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2006/12/11、如水会館(東京)で行った記者発表会の様子

 今後の課題

「脱受験競争」「脱ゆとり」という、いずれも「脱」ということばでキーワードを表現しました。実は「脱○○」というのは、そのテーマが今後どこへ行くのかが見えない、ということでもあります。この意味からも、今後も定点調査を時系列で続けていく必要性が高いといえます。特に、すべての子どもたちに学びが戻ってきたわけではない点、成績による学習時間の格差は拡大していくだろうという点には注視していくべきでしょう。あわせて、成績上位層で増加した学習時間の内訳、つまりどんな学習を行っているのかという質的な分析も加えていきたいと思います。

→調査結果を見るPDF[PDF(982KB)]
※このページでご紹介したデータのグラフもご覧いただけます

<会場のマスコミ関係者との質疑応答より>

 

会場 今回の調査結果で、子どもが学びに戻っている現象が起きている理由をどのように考えますか。学力低下への不安がさまざまな形で意識されたためか、あるいは、2003年に改訂された指導要領が目指した「子どもが自ら学び意欲的に考える」力が育った成果なのでしょうか。

 

耳塚先生 改訂された指導要領は、基本的にゆとり路線であるという枠組みは変わっていません。それなのに実質的な「脱ゆとり」が広がっている。このことからも、学力低下や授業時数の減少に対する不安が学習時間の上昇とつながっているのではないかという解釈をしています。

 

 

会場 小・中学生と異なり、「脱ゆとり」の傾向が高校生にはあまりみられないようですが、その理由をどのように考えますか。

 

耳塚先生 高校生の学習行動は、学校の取り組みでどう改善するかということよりも、受験が及ぼす影響のほうが大きいのではないかと思います。ですから、少子化や大学志願率の頭打ちなどから大学進学の壁が低くなり、受験のプレッシャーも弱くなってきた影響が如実に表れていると考えています。

 

耳塚 寛明 先生

お茶の水女子大学文教育学部教授、文教育学部長。専門は教育社会学(特に学校社会学、教育選抜と学校組織、青少年文化、教育政策)。著書は「変わる若者と職業世界 トランジッションの社会学 第2版」(学文社)、「高校生文化と進路形成の変容」(学事出版)など多数。

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調査・研究データ