第4回学習基本調査・学力実態調査
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◆序章 学力実態調査について◆

 学力実態調査の意義について

耳塚 寛明 (お茶の水女子大学教授)



 1.学力と学習行動・意識を探る

 学習基本調査は、当初、時系列比較を行う意図をもって設計された。第1回調査(1990年)以降、今回の第4回調査に至るまでの十数年にわたって、学習基本調査は子どもの学習を被写体に、時代のスナップショットを撮り続けてきた。学習基本調査が撮影してきたのは、子どもの学習だけではなく、時代の変化そのものでもあった。


 学習基本調査は、今回からさらに2つの特徴をもつことになった。1つめの特徴が小学生の学習行動と学習意識についての国際比較である。ソウル、北京、ヘルシンキ、ロンドン、ワシントンDCの子どもたちを比較の鏡としたとき、東京の子どもたちのどんな特徴がみえてくるのか。詳しくは別報告書(『学習基本調査・国際6都市調査報告書』)を参照されたいが、東京の子どもたちの“独自性”が随所にみられ興味深い。

 2つめの特徴が、国語と算数・数学の学力実態調査の導入である。すでに前回の第3回調査でも学力調査を実施したが、今回は小学生、中学生を対象に、知識・技能の学力を問う問題のみならず、その活用力を調べる問題を加えることにより、野心的な調査に仕上がった。


 これら2つの特徴を備えることにより、学習基本調査は、子どもの学びの天守閣に迫る、わが国でも稀有の調査になった。

 

 2.「活用」する力に迫る

 2007年10月下旬、文部科学省が実施した「全国学力・学習状況調査」の結果が発表された。知識・技能にかかわるいわゆるA問題の平均正答率が7ないし8割に達したのに対して、それらを社会生活の中で「活用」する力を問うたB問題の平均正答率が相対的に低いことが注目を集めた。A問題については、ナショナル・ミニマムの観点から学力水準を検証するという全国調査の趣旨に沿って相当程度やさしい問題が出題された。そのため、今回の結果だけから、知識・技能について子どもたちが十分な力をつけていると結論づけることはできない。しかしそれ以上に、活用する力をどうつけるかという課題の重要性が明白になったといってよいだろう。


 単純な計算問題ができても、なぜ現実的な場面設定になると計算力を活用できないのか。これでは、生活に生かせない机上の学力にすぎない。日本の学力の弱点はそれに尽きる。子どもにどんな体験を、どう組織的に与えたらよいのか。計算ドリルを繰り返すだけでは子どもの学力は高まらない。教育界が挑むべき最大の課題の1つがここにあることは間違いがない。

 この指摘は、学力調査を行う度にすでに明らかであったといっても過言ではなく、またOECDによるPISA調査など学力の国際比較調査が際立った形で示してきたことにほかならない。私たちは、文部科学省による全国調査を先取りする形で、「活用」にかかわる子どもたちの力を測定し、どうそれを伸ばすのかを調査目的に掲げることとした。


 私たちにとって初めての試みであったために、子どもたちの活用力をどれだけ測定できているのかについては課題が残る。また活用力を高める指導のあり方について検討できるよう、学力実態調査の出題、アンケート調査と分析方法を含め、さらに検討していく必要がある。

 グローバル化の進展とともに人材評価の基準についても国際化が進む。日本の学力の古典的課題であると同時に、学力の国際標準の導入という視点からも、「活用」は教育界の懸案事項であり続けるだろう。


 3.学力調査をどう分析し、どう生かすか

 教育の成果を測定し、課題を析出する。その分析に基づいて必要な教育施策を打つ。教育行政は、かつての児童・生徒数や教員数に基づく均等配分政策の時代から、より積極的な実証的教育行政の時代に入ろうとしている。そこで求められるのは、実証性に不可欠なデータの「分析能力」である。


 分析能力が求められるのは、教育委員会などの教育行政だけではない。文部科学省が実施した「全国学力・学習状況調査」の結果が学校現場へ返された。その時、データから何をどう読み取って教育実践に還元するのか。否、国や自治体が行う学力調査結果をどう使うかが問題なのではない。教師が日常的に行っている“テスト”を、どのように解析し、課題を析出して、次の指導につなげていっているのか―それ自身が問われているといってよい。この意味での分析能力が、個々の学校現場で、また個々の教師に求められている。さらに、日常的な教育指導においてテストを活用するためには、授業の目標が実現されているかを評価するテスト問題自体を、目標に即して適切に選択・作成しなければならない。最終的には、教師は問題作成能力を備えなければ、「テストを生かす」ことができない。このことは「活用」力の測定についてもあてはまる。


 しかしながら、教育評価が必ずしも教員養成課程で必要な位置づけを与えられていないことが象徴するように、教師の「分析能力」や「問題作成能力」はこれまで重視されてきたとは言い難く、学校現場にそのノウハウが蓄積されているとは言い難い。とりわけ活用力を測る問題作成のノウハウについては、学校現場は深刻な状況に置かれている。報告書を作成するに際しては、学校現場での「分析モデル」を提示できるよう、また「問題作成能力」の向上に資するよう心がけた。


 学力新時代において、子どもの学びの天守閣に迫るために、学習基本調査はなお進化していかねばならない。

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