子どものICT利用実態調査
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◆序章 解説1◆

 ICT環境下での子どもの生活と意識

大妻女子大学教授 酒井 朗



 今回の「子どものICT利用実態調査」から見えてきたのは、携帯電話やインターネットなどのICTが子どもたちの生活に広く浸透している現代社会の姿である。新聞などではネットいじめやチェーンメール、出会い系サイトへの接続など、もっぱらICT利用にまつわるリスクやトラブルが注目されている。文部科学省もこれを受けて「小中学校は学校での持ち込みを原則禁止」「高校は校内での使用を禁止」という指針を初めて示し、2009年1月30日に全国の都道府県、政令指定都市の教育委員会などに通知した。

 たしかにこうした問題にどう対応するかは喫緊の課題である。しかし、ICTがこれだけ普及した現状下では、我々はもう少し広い目でICTが子どもの生活や意識をどのように変化させたのか、そしてその中で彼らはどのように成長していくのかについて、社会学的・心理学的な理解を深めることが必要だろう。学校での携帯使用を禁止したところで、多くの子どもは携帯電話を持つわけであり、それが彼らにいかなる影響を与えるのかを理解しなければ、子どもたちをどう指導すべきかの方針は見いだせない。今は「臭いものにフタ」のような対応に終始しがちであり、抜本的なICT教育はできていないように思われる。

 本調査の1つのねらいはこの点にある。小学4年生から高校2年生までの全学年を対象とした今回のアンケート調査は、子どもたちのICT利用の現状を的確に映し出してくれる。以下では今回の結果をもとに、今の子どもたちの意識や生活の特徴を考えてみたい。

 調査から浮かび上がってきた特徴の1つは、携帯電話が多くの子どもたちに携帯されるようになったことと関連する。もっとも「携帯電話」といっても、子どもたちは携帯電話ではあまり電話をかけない。家族にかけることが多い小学生にとっては、携帯電話は電話だといってもいいだろう。だが中高生は携帯電話でもっぱらメールを送受信し、あるいは写真やビデオを撮ったり、ゲームをしたり、音楽をダウンロードしたり、本を読んだりしている。すなわち中高生にとっての携帯電話は、電話機ではなく、「ケータイ」という遊びのための小道具(ガジェット)なのである。今の子どもの生活に見られる1つの特徴は、ケータイという「遊びの小道具の常時携帯」だといえる。

 ケータイの常時携帯やパソコンでのインターネット利用を通じて、彼らの生活はさらに2つの特徴を帯びている。1つの特徴は「友だちとの常時接続」である。彼らは家の中でも、どこかで誰かに会っているときも、どんな場面でもケータイを通じて友だちと常時接続された状態におかれている。もう1つの特徴は後で詳しく説明するが、ひとまずは「自己提示への誘いとリスクの看過」と名付けておこう。

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