「第2回子ども生活実態基本調査」 調査結果ハイライト&専門家の眼
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専門家の眼〜記者発表会でのコメント

子ども生活実態基本調査についてのコメント

上智大学教授 武内清

 

本調査の企画・分析にご協力いただいた武内清先生(上智大学教授)に、調査の結果から言えることをお話いただきました。

 

記者発表会(2010年3月10日実施)でのコメントを再編集したものです

 

写真:武内清先生
記者発表会での席上で話される武内先生

 本調査の意義

写真:記者発表会の様子
2010/3/10に実施した記者発表会の様子

 今回で2回目となる本調査は、小中高生(小4生〜高2生)13,797名という大量のサンプルをもとに、発達段階別・時系列(2004年と2009年)に比較することができます。約9割が前回の調査と同じ学校での調査となっており、このような形で日本の子どもの全体像や変化を見られるデータは現在ほかになく、大変貴重なものといえるでしょう。

 また、調査内容は日頃の生活から学習の様子、親子・友だち関係、将来展望、自己像などまで、子どもの生活実態の全てにわたっており、さらにはグループインタビューも別途実施しています。さらに、性別や親の学歴別分析等、多様な子どもの実態が把握できるように調査が設計されており、意義のある調査となりました。

 この5年間で子どもの変化に影響を与えた社会的要因

 今回の調査では、「現実的な将来像を描き、内向きで比較的狭い社会の中での生活に満足している」という子どもたちの実像が浮き彫りになりました。このような子どもの変化に影響を与えた社会的要因としては、この5年で起きた経済不況が、親の生活態度の変化(家庭・親子中心へ、食育への取り組み)をもたらしたり、教育改革動向(「早寝早起き朝ごはん」運動、学力重視、キャリア教育)が影響を与えたりしていると考えられます。

 これは必ずしもマイナス面だけではなく、親がきちんと子どもたちを育てようと意識が変わりつつあることの表れのようです。堅実な生活に戻ったり、家庭や親子関係をきちんとしたり、家族みんなで作った食事をしたりといったことを親が志向するようになり、そういった親の変化が子どもにも影響を与えていると考えます。

 職業を決めていない、成功や国際的な活躍を望まない子どもが増加した理由

 上記の社会的要因と重なりますが、経済不況は大学進学率や「夢ではなく現実志向」という学校でのキャリア教育、青少年の安定志向やエコ(省エネ)志向を促進し、「自分のやりたいことにこだわるより、状況に応じて進学や就職に柔軟に対応する」という将来展望を抱かせるようになったと考えます。進路多様校の生徒はより現実的な考えとして、進学校の生徒は大学進学した後に考えようというモラトリアム志向として、「決めていない」ように感じました。

 それでいて、今の日本はある程度豊かな社会になっています。子どもたちの視点からすれば、この豊かさで満足できるということも言えるかと思います。これはある意味、とても穏やかな人間性を作るといういい面がありますが、社会的な成功や国際的な活躍を望む意欲を持たないという心配もあると考えています。

写真:武内清先生

 男の子たちの変化

 「仲間はずれにされないように話を合わせる」男子や、「グループの仲間同士で固まっていたい」を肯定する男子の割合が増えたことも、今回の調査でみられた特徴的な結果の一つです。友だちへの気遣い方や、仲間うちで固まる傾向などは、男の子が女の子に近づいているようです。反面、ゲームをする女の子が増加しており、女の子も男の子へ接近しています。いずれも、親も含めて、学校、職場における男女平等の社会的風潮が浸透していると考えます。

<会場のマスコミ関係者との質疑応答>

記者発表会(2010年3月10日実施)でのQ&Aを再編集したものです

 

Q: 特に小学生において、「仲間はずれにされたくない」、「友だちと固まっていたい」という気持ちが強まっている背景は?

 

A: 大学生でも群れて固まる傾向があるので、それが小学生のときからあり、身近の者同士で仲良くするグループ志向があると思います。大人からすると否定的なニュアンスに感じますが、データの半分が「ある」と答えているので、子どもたちにとって「固まる」は、実は肯定的な気持ちなのかもしれないと考えています。

 

Q: 生活の満足度があがっている背景としては、内向き志向や親の生活態度が関連していると思いますが、ほかにどういったことと関連しているのでしょうか。

 

A: 満足といった場合、欲求水準との関係があって、欲求水準が高くないと満足度が高まるということもあると思います。社会的風潮として、あまり高くは望まないという要素があると思います。それと、とても身近志向になっているので、身近な部分での快適さが得られると満足してしまうということもあるのではないでしょうか。

また、データのひとつに、小中学生が自分の住んでいる地域への満足度がありますが、これと並行してグループインタビューをしたところ、彼らのいう地域満足度とは、交通の便利さや遊ぶ場所がたくさんあるかどうかであるということが分かりました。

 

武内清先生

【研究分野】生徒文化、学生文化、青少年文化 子どもの社会学。
上智大学総合人間科学部教育学科教授(専攻は教育社会学)。1944年、千葉県生まれ、東京大学大学院教育学研究科博士課程退学、東京大学助手、武蔵大学専任講師・助教授・教授を経て、1988年より現職。主著・主論文は、『キャンパスライフの今』(編著)(2004年、玉川大学出版部)『子どもと学校』『子どもの問題行動』(編著)(2010年、学文社)など

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調査・研究データ