近年、家庭による教育の格差が拡大しているという指摘をよく耳にする。確かに、保護者の属性や家庭の状況によって、子どもの教育に対する意識や行動は異なる。一般に、学歴が高い保護者や収入が多い保護者ほど、子どもの教育には熱心であり、積極的に子どもにかかわったり、教育費を多くかけたりする。しかし、そうした傾向は、今も昔も変わらない可能性がある。これまでの研究の多くは一時点に限られており、格差拡大の進行といった時系列での変化を確認するには限界があった。そこで、本章では経年でみたときに、本当に家庭による教育の格差が拡大しているのかという点に注目して、いくつかのデータをみていこう。なお、本調査は異なる時点で同一人物の変化をとらえるパネル調査ではないため、同じ属性をもつ群ごとに経年の変化をみる方法で比較を行うことにする。
(1) 学力観の変化
すでに3章1節で検討したように、母親の学力観はこの9年で大きく変化した。「将来ふつうの生活に困らないくらいの学力があればいい」「どこかの大学・短期大学に入れる学力があればいい」「学校生活が楽しければ、成績にはこだわらない」を選択する比率が低下し、「できるだけいい大学に入れるよう、成績を上げてほしい」「今は勉強することが一番大切だ」を選択する比率は上昇している。全体的にみて、ほどほどの学力があればよいと満足するのではなく、できるだけよい成績や高い学歴を求める傾向が強まっている。それでは、どの母親もそのような思いを強めているのだろうか。
図7-1-1は、(1)生活のゆとり別(左列)と(2)母親の学歴別(右列)に学力観の経年変化を示したものである。ここでは、とくに変化が大きい項目を選んだ。なお、「生活のゆとり」についての質問は、98年調査と07年調査しかたずねていないので、9年間の経年変化である。また、「母親の学歴」については、02年調査と07年調査しかたずねていないので、5年間の経年変化を表している。
図7-1-1は、(1)生活のゆとり別(左列)と(2)母親の学歴別(右列)に学力観の経年変化を示したものである。ここでは、とくに変化が大きい項目を選んだ。なお、「生活のゆとり」についての質問は、98年調査と07年調査しかたずねていないので、9年間の経年変化である。また、「母親の学歴」については、02年調査と07年調査しかたずねていないので、5年間の経年変化を表している。
生活のゆとりの影響
最初に、(1)「生活のゆとり」の程度によって、学力観がどのように変化したかを検討しよう。1)「どこかの大学・短期大学に入れる学力があればいい」は、9年の間に選択率が低下した項目である。図をみると、子どもが小学生であるか中学生であるかを問わず、また、生活にゆとりがあるかないかを問わず、選択率が低下していることがわかる。しかし、その下がり幅は、「ゆとりあり」と回答した母親ほど大きく、「ゆとりなし」と回答した母親は小さい。
2)「できるだけいい大学に入れるよう、成績を上げてほしい」という項目では、小学生か中学生か、ゆとりがあるかないかを問わず、98年調査に比べて07年調査の数値のほうが高い。しかし、その上がり幅は、「ゆとりあり」と回答した母親ほど大きく、「ゆとりなし」と回答した母親は小さい。ここでも、経済的な状況によって変化のしかたが異なる様子が表れている。
3)「今は勉強することが一番大切だ」も同様である。小学生の母親は「ゆとりあり」ほど選択率が高くなっている。中学生の母親は、「ゆとりあり」は横ばいであるものの、「ゆとりなし」は選択率が低下しており、結果として格差が拡大していることがわかる。
全般的にいって、経済的にゆとりのある家庭(母親)ほど、できるだけいい大学に行くことや勉強することを子どもに求めるようになっており、ゆとりのない家庭(母親)との差が開いている様子がみて取れる。
2)「できるだけいい大学に入れるよう、成績を上げてほしい」という項目では、小学生か中学生か、ゆとりがあるかないかを問わず、98年調査に比べて07年調査の数値のほうが高い。しかし、その上がり幅は、「ゆとりあり」と回答した母親ほど大きく、「ゆとりなし」と回答した母親は小さい。ここでも、経済的な状況によって変化のしかたが異なる様子が表れている。
3)「今は勉強することが一番大切だ」も同様である。小学生の母親は「ゆとりあり」ほど選択率が高くなっている。中学生の母親は、「ゆとりあり」は横ばいであるものの、「ゆとりなし」は選択率が低下しており、結果として格差が拡大していることがわかる。
全般的にいって、経済的にゆとりのある家庭(母親)ほど、できるだけいい大学に行くことや勉強することを子どもに求めるようになっており、ゆとりのない家庭(母親)との差が開いている様子がみて取れる。
図7-1-1 学力観の変化(経年比較 学校段階別)

母親の学歴の影響
次に、(2)「母親の学歴」の違いごとに、学力観がどのように変化したのかを確認しよう。なお、調査では父親の学歴についてもたずねているが、傾向は同じなので省略する。
1)「どこかの大学・短期大学に入れる学力があればいい」は、小学生の母親に特徴が表れている。「非大卒・非短大卒」の母親だとそのような思いを強めているが、「大卒・短大卒」の母親は選択率が低下している。
2)「できるだけいい大学に入れるよう、成績を上げてほしい」を肯定するのは、もともと学歴の高い母親に顕著であった。しかし、「非大卒・非短大卒」の母親の選択率は2ポイント程度の上昇にとどまるのに対して、「大卒・短大卒」の母親は小学生で7.9ポイント、中学生で11.4ポイント増加している。
3)「今は勉強することが一番大切だ」はそれほど明確ではないが、やはり小学生の母親で「大卒・短大卒」の選択率が「非大卒・非短大卒」に比べて大きく上昇している。
この5年間で、「大卒・短大卒」の母親は、子どもにより高い学歴やよい成績を求めるようになっている。それに対して、「非大卒・非短大卒」の母親は、そうした意識があまり強まっていないことがわかる。
1)「どこかの大学・短期大学に入れる学力があればいい」は、小学生の母親に特徴が表れている。「非大卒・非短大卒」の母親だとそのような思いを強めているが、「大卒・短大卒」の母親は選択率が低下している。
2)「できるだけいい大学に入れるよう、成績を上げてほしい」を肯定するのは、もともと学歴の高い母親に顕著であった。しかし、「非大卒・非短大卒」の母親の選択率は2ポイント程度の上昇にとどまるのに対して、「大卒・短大卒」の母親は小学生で7.9ポイント、中学生で11.4ポイント増加している。
3)「今は勉強することが一番大切だ」はそれほど明確ではないが、やはり小学生の母親で「大卒・短大卒」の選択率が「非大卒・非短大卒」に比べて大きく上昇している。
この5年間で、「大卒・短大卒」の母親は、子どもにより高い学歴やよい成績を求めるようになっている。それに対して、「非大卒・非短大卒」の母親は、そうした意識があまり強まっていないことがわかる。
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全体に、経済的にゆとりがない層や「非大卒・非短大卒」の母親は、子どもに勉強をしてほしいという思いや高い学歴を求める傾向をあまり強めていない。これに対して、ゆとりがある層や「大卒・短大卒」の母親ほど、そうした意識を強めており、両者の差が拡大している様子がうかがえる。
