第1部 全体の調査結果/第6章 子育て意識と母親自身の生き方
父母ともに子育てと仕事のバランスが大切
―子育ての楽しさや満足度の分析からわかること―
◆子育ての楽しさや満足度の変化
この章では、母親の子育てに関する意識、楽しさや満足度などについて検討した。図1−6−1で明らかにしたように、97年調査と比べると「子どものためには、自分が犠牲になるのはしかたない」や「子どもを十分に愛している自信がある」を選択する者が増え、献身的な母親像が明らかになった。実際の行動は明らかではないが、少なくとも意識のうえでは「子育て」の比重が高まっているとみることができる。
それでは、幼児の母親が子育てに熱心になるなかで、楽しさの実感はどのように変化してきたのだろうか。子育ての楽しさについては、「とても楽しい」という回答が97年調査17.3%→03年調査20.1%→08年調査23.5%と推移している。「楽しくない」という回答はもともと少ないが、今回の調査では7.5%(「あまり楽しくない」+「ぜんぜん楽しくない」の%)と、初めて1割を下回った(図表省略)。全体としては、よい方向に数値が変化している。図1−6−6で示したとおり、子どもにかかわる母親のほうが子育てを「楽しい」と考える傾向がある。子どもとのかかわりは5年間の経年比較しかできず、横ばいか微増の項目が多くて、大きな変化は示していない。しかし、子育てに熱心な保護者は増えており、子どもの言動に注意することで成長を感じるような場面が増えているのかもしれない。
次に、母親自身の生活満足度を検討したが、「満足している」という回答は、経年ではほぼ横ばいであった。「満足している」の比率(「かなり満足している」+「まあ満足している」の%、97年調査→03年調査→08年調査の順)をみると、「母親としては」が72.3%→72.4%→73.4%、「妻としては」が62.8%→61.6%→62.6%、「働く(活動する)女性としては」が35.7%→41.2%→42.5%と推移している。数値は顕著によくなっているとはいえないが、悪化もしておらず、母親としての満足度は7割台の高い水準を維持している(図表省略)。以上のような本章で取りあげたデータを概観してみると、母親の子育てをめぐる意識は、悪くなっているとはいえない。多くの母親は、充実した子育て生活を送っており、その姿は11年間では大きく変わっていない。
◆子育てが楽しく感じられない母親の特徴
しかしながら一方で、子育てに関する意識、楽しさや満足度が、母親の属性によっても異なることが明らかになった。経年では大きな変化はみられなかったとしても、楽しさを十分に感じることができず、満足感を得られないなかで子育てをしている母親が存在することも事実だ。今回の分析では、そのような母親の特徴が明らかになった。
1つは、常勤の仕事をもつ母親の場合である。仕事の負担が重いほど、子育てが楽しく感じられない傾向も明らかである。仕事の疲れから子育てに前向きになれなかったり、帰宅が遅くなって子どもと接する時間が十分にもてないという状況が生じたりするのだろう。表1−6−2の数値などは、母親たちが過酷な労働環境のなかで仕事に従事することがないよう、ワークライフバランスの施策を充実させる必要性を感じさせる。
もう1つは、夫(子どもにとっての父親)が子育てに協力的でないケースである。夫が子育てに協力的で、夫婦間での話し合いも多く、夫によく理解されていると感じる場合は、子育てが楽しいと感じる割合が高まる。これに対して、夫が協力的でないと、「配偶者と一緒に暮らしていない」ケースよりも、「楽しい」の数値が低くなる。子どもの父親が子育てに協力的になれるかどうかは、帰宅時間の早さなどの労働状況とも関連している。母親と同様に父親についても、子どもとかかわる時間を確保し、母親の子育てをサポートできるように、ワークライフバランスを見直す必要があるといえるだろう。
楽しい子育て、満足度の高い子育てをするためには、父親も母親も働きすぎないことが肝要なようだ。行政や企業には、そのような子育てを実現するための施策が求められる。
