教育格差の発生・解消に関する調査研究報告書
学力格差調査から見えてきた実践課題 −分析を終えて−
*「教育格差の発生・解消に関する調査研究」の最後の分析検討会として、2008年12月27日(土)に研究メンバーが行った討論の様子をご紹介します。
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司会/耳塚寛明(お茶の水女子大学大学院教授) 小玉重夫(東京大学大学院教授) | ![]() |
資源を再分配し格差を是正するための教育調査
![]() 耳塚寛明 (お茶の水女子大学大学院教授) |
耳塚 今回の調査から、どのようなマクロないしミクロの実践的な課題が見えてきたか、話し合ってみたいと思います。学力格差は、所得格差の緩和や雇用、福祉まで視野に入れた、社会政策上の大きな課題です。しかし同時に、教育行政として、また学校現場として取り組むべきこともある。
山田 前提として、こうした調査結果を示す時の難しさを感じます。不利な立場に置かれている人たちに資源を投入するために実態を把握する。そうした文脈でデータが使われることを私たちは望んでいるわけです。ところが、今のように教育資源もセーフティネットも縮小している時に、家庭的背景による学力格差の存在を明示すると、敏感に反応するのは、むしろ相対的に大きな資源をもつ人たちではないか。その結果、公立学校からの流出など、リスク回避的な方向で子どもの学業達成を望む動きが出ることが危惧されます。 |
| 小玉 社会政策として、ないしは教育政策としての「教育資源の再分配」のための教育調査という原則の確立が必要でしょうね。そうでないと、調査結果が独り歩きして、学校間競争を煽ったり、教育投資行動をいびつに加速させたりしてしまう。ただしその場合、どうすれば教育資源の再分配が可能なのか議論すべきでしょう。家庭的背景による学力格差が確かに存在する。だから学校現場にもっと資源を投入して支援しなければならない。そうした結論に行き着ける社会的合意があるのか。まだないとしたら、どうしたら合意を取り付けていけるのか、そこを考えなくてはいけない。 |
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志水 この種の調査が意図通りに機能するか、意図せざる副作用をもたらすか、それをコントロールするのは難しい。だからこそ、学力格差是正のためのデータという本筋を明確にすることは大切です。教育資源の再分配政策が実現する可能性は未知数ですが、少なくとも格差是正へ向けての世論は醸成されてきている。イギリスのバーミンガムの地方教育当局を視察して感心したのは、調査結果の開示と同時に政策も展開していたこと。資源の配分がシステマティックに行われ、学校側からすれば格差解消の手立てがふんだんにある。むろん、再分配できるパイが大きいからできるのでしょうが…。 耳塚 政策を開示せずに調査結果だけ公表するのは世界でもむしろ少数派でしょうね。日本でも教育界は大勢として資源配分を活かそうとする方向にあると思う。それを組織的な政策へ上げていくには財源がいる。社会的合意を得ることが不可欠ですが、大都市圏のほうが難しいかもしれない。高学歴ホワイトカラーは、困難な学校に手厚く資源を配分し全体を底支えする政策よりも、卓越した部分を伸ばす政策を支持する傾向が強いからです。 |
![]() 山田哲也 (大阪大学大学院准教授) |
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