今回実施した「大学生の進路選択に関する調査」は、もともと、理工系領域に進学した学生の進路形成や能力育成の実態を明らかにすることを主要な問題関心として行われた。わが国が将来にわたって豊かな経済社会を継続できるかどうかは、国民、民間企業などがより高い付加価値を生み出す産業を実現できるかどうかにかかっている。この点を考えると、初等教育から高等教育までの各教育段階において、そのような価値創出を担う人材育成が実現されているのかを明確にする必要がある。とりわけ、科学技術の進展や専門領域間の融合が著しい理工系領域において、どのように人材の育成が行われており、そこにどのような課題があるのかを明らかにすることは、産業競争力を維持する上でも不可欠といえる。
今回の調査研究はこのような観点から行ったが、それぞれの章で論じているように、理工系における人材育成の課題だけでなく、大学生の進路選択全般にわたる意識や実態、初等教育から高等教育までの全体にかかわる課題なども明らかになった。そこで、ここでは、全体像を俯瞰しながら理工系における人材育成の実態と課題について検討し、考えられる対応策についての提案をしていきたい。
ただし、ここで例示している具体的な対策は、考えうるすべてのレベルを網羅しえないことを付言する。対策は、家庭、地域、学校(小学校から大学まで)、行政、企業など、さまざまな場面について検討する必要がある。その具体的な担い手としても、学生本人、その保護者、小学校から大学までの教職員、教育行政に携わる職員や関係者、企業の従業員など、さまざまに存在する。それぞれの立場で何をするかを詳細に検討することは今後の課題とし、ここでは調査から明らかになった範囲での提案にとどめたい。
今回の調査研究はこのような観点から行ったが、それぞれの章で論じているように、理工系における人材育成の課題だけでなく、大学生の進路選択全般にわたる意識や実態、初等教育から高等教育までの全体にかかわる課題なども明らかになった。そこで、ここでは、全体像を俯瞰しながら理工系における人材育成の実態と課題について検討し、考えられる対応策についての提案をしていきたい。
ただし、ここで例示している具体的な対策は、考えうるすべてのレベルを網羅しえないことを付言する。対策は、家庭、地域、学校(小学校から大学まで)、行政、企業など、さまざまな場面について検討する必要がある。その具体的な担い手としても、学生本人、その保護者、小学校から大学までの教職員、教育行政に携わる職員や関係者、企業の従業員など、さまざまに存在する。それぞれの立場で何をするかを詳細に検討することは今後の課題とし、ここでは調査から明らかになった範囲での提案にとどめたい。
(1)小・中学校時代の体験の重要性について
今回の調査から改めて明らかになった知見の一つに、小・中学校時代の体験は教科の好き嫌いなどと関連し、大学での専門領域を決定するうえでの重要な要素になっているという点があげられる。このことは、誰もが経験的には理解しているが、両者が関連する様子はデータでも明確に表れている。
第一にあげられるのは、保護者のかかわりの重要性である。今回の調査では、一部のかかわりについて、文系-理系の差や学部系統による違いが明らかになった(図1-1-3、表1-1-2)。たとえば、「本や絵本を読んでもらうこと」などといった文系的な働きかけは文系学部への進学者ほど、また、「一緒に家の修理や日曜大工などの作業をすること」などといった理系的な働きかけは理系学部への進学者ほど受けている。また、それぞれの働きかけは性によっても異なり、保護者は男子に対しては理系的な活動を、女子に対しては文系的な活動をうながしている(図1-1-2)。このような保護者からの影響は、子どもの志向(活動に対する好き嫌いなど)を形成する要因になっていると推察される。
第二にあげられるのは、小・中学校時代に体験した活動の種類や内容、それらに対する好みや関心の影響である。文系に進んだ学生は、「文学・小説などの本を読んだ」「歴史の本や伝記を読んだ」「作文を書くことが好きだった」「新聞のニュース欄を読んだ」など、言語にかかわる活動を好んでいる。一方、理系に進んだ学生は、「理科の実験が好きだった」「図形の勉強が好きだった」「機械やものづくりに関心があった」「自然や動物・植物の本を読んだ」に肯定する比率が高い(図1-2-3、表1-2-1)。また、こうした活動は、進学した学部系統ごとにみても大きく異なる(表1-2-2)。とくに、理工学系統に進学した学生は、機械やものづくりに対する関心の高さが顕著に表れている。
以上の結果から、理工系領域の充実を図るためには、小・中学校時代からその領域の問題関心を高め、好きになる機会を豊富に作ることが望ましいといえよう。高等教育段階で理工系領域の充実を図るためには、小・中学校段階からいかに「理数好き」を増やし、以降の教育段階での歩留まりを維持していくかが課題になると思われる。
第一にあげられるのは、保護者のかかわりの重要性である。今回の調査では、一部のかかわりについて、文系-理系の差や学部系統による違いが明らかになった(図1-1-3、表1-1-2)。たとえば、「本や絵本を読んでもらうこと」などといった文系的な働きかけは文系学部への進学者ほど、また、「一緒に家の修理や日曜大工などの作業をすること」などといった理系的な働きかけは理系学部への進学者ほど受けている。また、それぞれの働きかけは性によっても異なり、保護者は男子に対しては理系的な活動を、女子に対しては文系的な活動をうながしている(図1-1-2)。このような保護者からの影響は、子どもの志向(活動に対する好き嫌いなど)を形成する要因になっていると推察される。
第二にあげられるのは、小・中学校時代に体験した活動の種類や内容、それらに対する好みや関心の影響である。文系に進んだ学生は、「文学・小説などの本を読んだ」「歴史の本や伝記を読んだ」「作文を書くことが好きだった」「新聞のニュース欄を読んだ」など、言語にかかわる活動を好んでいる。一方、理系に進んだ学生は、「理科の実験が好きだった」「図形の勉強が好きだった」「機械やものづくりに関心があった」「自然や動物・植物の本を読んだ」に肯定する比率が高い(図1-2-3、表1-2-1)。また、こうした活動は、進学した学部系統ごとにみても大きく異なる(表1-2-2)。とくに、理工学系統に進学した学生は、機械やものづくりに対する関心の高さが顕著に表れている。
以上の結果から、理工系領域の充実を図るためには、小・中学校時代からその領域の問題関心を高め、好きになる機会を豊富に作ることが望ましいといえよう。高等教育段階で理工系領域の充実を図るためには、小・中学校段階からいかに「理数好き」を増やし、以降の教育段階での歩留まりを維持していくかが課題になると思われる。
【対策として】
対策として考えられるのは、(1)小・中学校における理科教育の見直しを図ることと、(2)家庭や学校外における理科教育の充実を図ることである。
小・中学校の理科教育については、たとえば、理科の教育課程(授業時数やカリキュラム)そのものの見直し、理科の授業における体験的な活動や実験の拡充(科学的好奇心を刺激する授業の実現)、体験的な活動や実験のための教材と指導法の開発などが考えられる。現在、さまざまな形で理科教育の振興が図られているが、理科教育を、すべての子どもたちに平等に拡充していくことを考えると、やはり学校教育のあり方が重要になる。
その学校教育を補うために充実させたいのは、家庭や学校外における理科教育である。たとえば、子どもが小さいうちは、自然体験や生活体験(ものづくりなど)の機会を意識的に作ったり、日用品などを用いてできる簡単な実験をしてみたりすることで、保護者と子どもが一緒に理科に親しめる機会がもてるとよいだろう。また、子どもが成長し、仮説→試行錯誤→検証といった科学的思考を本格的に身につける段階になったら、博物館・科学館などの社会教育施設が主催するプログラムや、いわゆる「実験教室」などNPOや民間教育機関が提供するプログラムを利用する方法もある。そのような機会を有効に活用するよう、保護者は子どもに積極的に働きかける必要があるだろう。
対策として考えられるのは、(1)小・中学校における理科教育の見直しを図ることと、(2)家庭や学校外における理科教育の充実を図ることである。
小・中学校の理科教育については、たとえば、理科の教育課程(授業時数やカリキュラム)そのものの見直し、理科の授業における体験的な活動や実験の拡充(科学的好奇心を刺激する授業の実現)、体験的な活動や実験のための教材と指導法の開発などが考えられる。現在、さまざまな形で理科教育の振興が図られているが、理科教育を、すべての子どもたちに平等に拡充していくことを考えると、やはり学校教育のあり方が重要になる。
その学校教育を補うために充実させたいのは、家庭や学校外における理科教育である。たとえば、子どもが小さいうちは、自然体験や生活体験(ものづくりなど)の機会を意識的に作ったり、日用品などを用いてできる簡単な実験をしてみたりすることで、保護者と子どもが一緒に理科に親しめる機会がもてるとよいだろう。また、子どもが成長し、仮説→試行錯誤→検証といった科学的思考を本格的に身につける段階になったら、博物館・科学館などの社会教育施設が主催するプログラムや、いわゆる「実験教室」などNPOや民間教育機関が提供するプログラムを利用する方法もある。そのような機会を有効に活用するよう、保護者は子どもに積極的に働きかける必要があるだろう。
