第3回幼児の生活アンケート報告書・国内調査
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 序章 「第3回幼児の生活アンケート」を振り返って


東白梅学園大学長 無藤 隆 

 1.本調査の基本的特徴

 本調査は、5年ごとに行い、今回は第3回である。首都圏の乳幼児をもつ親(おもに母親)から回答を得ている。ほぼ代表的な標本を得るように注意を払い、その傾向をつかめるようにした。また、10年間にわたり、幼児の生活状況等の変容をとらえることができる。とはいえ、親のアンケートによる回答であるので、親の意識として答えるという判断の範囲であること、回収率が今回は5割に満ちていないので、その歪みがあることに注意してほしい。ただし、子どもの年齢や親の属性(就労・非就労、学歴等)による細分化した検討を並行して行い、できる限り、標本の偏りによる可能性でないことを確認する努力をした。


 本調査の最大の特徴は、10年間にわたる3回の調査から時代的な変化をつかめることである(一部の質問項目はその都度異なるものを含めているが)。日本が1990年代半ばのいわゆるバブルの崩壊した後の不景気に入る頃と、2000年という不景気のただ中といわれた時代、さらに2005年というその回復の過程に入ってきた時と明らかに時代背景は大きく異なる。親の世代もまた当然ながら違いがある。乳幼児の親は20歳代後半から30歳代が多いが、たとえば、子ども時代にテレビゲームが初めからあった現在の親の世代とおとなになってから接した世代では意味が異なるだろう。景気のよい時代に若者であったかどうかも意味があるのかもしれない。その時々に強調され、受け止められる時代的な価値もまた異なることは考えられる。


 子どもにとっての大きな生活上の変化はこの時期にさほどないように思われる。ビデオとDVDの普及が子どもの生活に多少は影響してきている可能性はある(本文の分析を参照のこと)。だが、新たなメディアはまだ乳幼児の生活を決定的に変えるには至っていないだろう(たとえば、個人用の携帯電話は乳幼児はまず使わない)。

 何より、少子化の進行が著しい。すでに1990年代は少子化が進み、合計特殊出生率が1.5を切り始めている。1995年では1.42になり、2004年には1.29になっている。おそらくその影響こそが、乳幼児の時代的変化における最も大きな規定要因ではないだろうか。その基本的想定を置きつつ、以下のデータで検証していきたい。


 2.調査のおもな結果から

1)幼児の生活時間をめぐって


 幼児の生活時間は幼稚園・保育園に行っているかどうかで大きく異なる。幼稚園・保育園に行っていれば、どうしても朝は一定の時間に起きざるを得ない。あまり寝坊するわけにはいかない。それに対して、就寝時刻はもっと変動がありうる。保育園では寝不足分を昼寝で補える。しかし幼稚園児の場合には昼寝が保証されないので、問題があり得る。幼児が遅くまで起きていることにはテレビなどの利用が多いことが影響するようである。それに対して、就園前の幼児の場合、朝の起きる時間に制約がないから、おとなの生活パターンに合わせて、遅くなりやすい。

 とくに、00年ではそれ以前に比べ、遅くまで起きている比率が上がってきており、懸念されたところである。今回の05年では、多少ではあるが、遅くまで起きている幼児の比率が下がってきている。朝も早めに起きている幼児が増えてきている。その原因は今後の調査と検討を要するが、1つには子どもにとっての睡眠や生活習慣の確立の大切さが親に認識されてきた可能性もあるだろう。


 子どもが園にいる時間が幼稚園と保育園で長くなってきている。長時間の保育の希望やニーズが高くなってきているとともに、それに応じる園が増えてきているのであろう。幼稚園なども預かり保育や従来よりも長い保育時間を実現させてきている。園にいる時間が長くなれば、その分、家庭や地域で遊ぶ時間は短くなるはずであり、それがいろいろな影響をもたらしうる。


2)習い事の動向


 00年ではそれ以前に比べ(調査対象が若干異なるので厳密な比較ではないが)、習い事の比率が低下気味であった。今回はそれが回復し、増えてきている。おそらく不景気からの回復が関係するのであろう。教育費をみると、一度落ち込んだものが回復している。さらに世帯の収入はむしろ減少気味であることを考えると、広い意味での教育への投資について親は熱意を持って取り組んでいる。


 習い事の種別をみると、とくに「英会話などの語学の教室」が増えている。「英語熱」は日本人全体のものであろうが、それが小学校英語の導入の議論もあってか、乳幼児期に急速に広がりつつある。習い事は全般的に増えている。英会話以外はさまざまなものが増加しつつあるが、受験のためということではないようである。英会話にしてもおそらくすぐに小学校の勉強とか受験に役立つというより、おとなになってからのことを考えてのことであろう。進学についてまったく考えていないわけではないだろうが、それ以上に、将来の仕事と生活の両面の豊かさのために小さいうちから習得の機会を親は用意している。就学前(6歳児)の幼児の85.5%が通信教育を含めた習い事をしているのである。幼稚園・保育園と習い事がセットとなっているといってよい。


3)教育費の動き


 すでに述べたように、教育費は景気と連動しつつ、再び、増加の方向にある。学歴期待別にみると、とくに子どもに高学歴を期待する層で教育費の支出の増減が大きく、しかし高学歴を期待していない層でも支出は増えてきている。平均的に月に5千円程度は最低限の支出としてとらえてよいようである。学歴差や世帯収入差が教育投資に影響するのは当然かもしれない。それが幼稚園・保育園などの経費に加えてかかることが少子化に影響するのかどうかはこの調査ではわからないが、1つの検討すべき観点である。また、幼稚園・保育園以外での習い事への高価な投資が将来に対して本当に何か違いをもたらすものなのかどうかも教育的公正の実現という意味からは重要な検討課題であろう。


4)メディアとのかかわりの変化


 テレビへの接触は減ってきている。しかし、ビデオ・DVDを合わせると、大きな変化はない。母親と一緒に見る比率が上がってきている。なお、テレビとビデオ・DVDで比較すると、テレビは家族と一緒に見て、ビデオ・DVDは1人で見る比率がやや高いことは興味深い。


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