乳幼児期は、親と子の育ちのとき
新宿区立愛日幼稚園長 佐藤 暁子
●はじめに
乳幼児をもつ保護者を調査対象とした「幼児の生活アンケート」は、早いもので3回目を迎える。「10年ひと昔」というが、子どもたちを取り巻く社会の状況も大きく変化してきている。
その期間の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数の目安)は、95年1.42、00年は1.36、04年は1.29とますます減少し歯止めがきかない。その要因として「安心して子どもを産み、育てる社会の仕組みや経済的安定がみられないこと」「核家族化、少子化による子育てへの不安」「母親の社会参加への意欲と乳幼児保育施設の不足」などさまざまなことが考えられる。
実際に子どもを産み育てていくなかで母親たちは「育児不安」に陥る場合がある。たとえば、遊び場の問題である。地域社会において同年齢の子どもたちとふれあうことのできる公園や広場では、世相の反映(幼い子どもを狙った犯罪の増加など)から、子どもたちだけで安心して遊ばせることができなくなってきている。そのため、子どもたちが心ゆくまで遊べる機会や場が減少し、直接的、具体的な体験に乏しく、生活経験が偏ってきている子どもの姿がみられる。
また、育児情報の氾濫は保護者の「育児不安」などを増幅させているようである。我が子が育児書通りに育たない、自分の思い通りに育たないことに腹を立て、しつけと称して幼児虐待に及んでしまう悲しい事件も多く耳にするようになった。また一方で、親が我が子の将来を考えるあまり、子どもが低年齢のうちから早々と語学教育やさまざまな習い事をさせている姿もみられる。
21世紀をたくましく心豊かに生きていくために、今子どもたちに本当に必要なことは何かをしっかりと伝え、支えていく社会の構築が強く求められている。
私は何よりもまず豊かな本物の体験を通して子どもたちに生きる力を育てたいと考えている。子どもたちにとって必要なことは、自然と十分かかわり、汗をかきながら自分の五感を通して得た感動や、試行錯誤を繰り返しながらやり遂げた達成感や自己有用感であり、人への信頼感であると考える。若い親たちには、かけがえのない我が子の成長発達をゆっくり見守り、今しかできないこと、今だからできることを大いに楽しみ子育てを通して親育ちをしていってほしいと願っている。
