保護者のかたにとって、子どもの学力については大変、気になる問題ではないでしょうか。ここ数年、学力低下が指摘され、8月末の中央教育審議会の部会では小中学校の授業時間を増やす方針が示されました。しかし、授業時間という枠が増えても、そもそも子どもの学習意欲が低ければ効果はあまり期待できないかもしれません。今回は、国際比較調査のデータをとおして、この問題について考えてみたいと思います。
Benesse 教育研究開発センターでは、国内の小学5年生を対象にした
学習基本調査(2006(平成18)年実施)を元に、ソウル(韓国)・北京(中国)・ヘルシンキ(フィンランド)・ロンドン(英国)・ワシントンDC(米国)の5都市で同じ内容の調査を実施し、東京の子どもとの国際比較を行いました。そのなかから、勉強がどのようなことに役に立つかを聞いた結果を紹介します。
ここでは、「お金持ちになるために」「会社や役所に入ってえらくなる(出世する)ために」「尊敬される人になるために」「心にゆとりがある幸せな生活をするために」の四つの項目を取り上げます。下記の四つの図は、その項目に対して勉強が「とても役に立つ」「まあ役に立つ」と答えた子どもの割合を示しています。
まず、この四つの項目とも、他の五つの海外都市と比べて、東京の子どもたちは「勉強が役に立つ」と答えている割合が最も低くなっています。
たとえば、「お金持ちになるために」はどの都市と比較しても20ポイント以上の大きな差が見られます。「会社や役所に入ってえらくなる(出世する)ために」も一番割合が近い北京とは10ポイント程度の差ですが、他の都市とは20ポイント以上の差があります。「尊敬される人になるために」もヘルシンキとほぼ同じ割合ですが、残りの4都市とは大きな差が見られます。「心にゆとりがある幸せな生活をするために」は、差が縮まっていますが、それでも割合が一番低いことにかわりはありません。
これまでも国際比較調査などで、アジアの国の子どもたちと比べて、日本の子どもの学習時間が少ないことや学習意欲が低いことが指摘されてきました。その理由として、日本はすでに経済成長を遂げ、豊かな社会になったことなどが挙げられたことがあります。しかし、今回の調査は先進諸国の都市と考えられるワシントンDCやロンドン、ヘルシンキと比べても、日本の子どもたちが勉強をあまり役に立たないと考えていることが明らかになりました。単純に「先進国だから」では片付けることのできない問題なのです。
このような調査結果をどのように受けとめれば良いのでしょうか。勉強は大切と言えるような社会に日本がなっているか、考えてみる必要があるかもしれません。同じ質問項目を投げかけられたときに、私たち大人の何割が「勉強は○○に役に立つ」と自信をもって答えることができるでしょうか。子どもたちの学習意欲を高めるためには、学ぶことの価値を明確にすることが必要であるように思います。皆さまは、どのようにお考えでしょうか。