全国の大学を、学生が「渡り鳥」のように移動して学べるようにしよう……こんな構想を、
日本私立大学団体連合会(会長=白井克彦・早稲田大学総長)が打ち出しました。これまでにも近隣の大学が協定を結び、相互に講義を受けられる「単位互換制度」はありました。それを全国レベルで、しかも、自由にできるようにしようというのです。入学した大学にこだわらず、受けたい講義は春や夏などに、ほかの大学まで行って受ける。近い将来、そんなことが当たり前になるかもしれません。
このほどまとめられた報告書によると、同連合会傘下の大学は、最低1科目以上を他大学の学生にも開放します。その科目は、受講した学生のどの大学でも、正式な卒業単位として認められます。具体的には、「環境保全論 夏季2週間+野外合宿調査」「日本の流通業 春学期関連6科目コース」「日本美術史 e-ラーニング(インターネットなどを利用した授業)+冬10回対面授業+演習」などといった例を挙げています。履修に当たっては、希望者多数の場合には選考試験を行ったり、受講者を特定の学部生に限ったりすることはあっても、必要以上に制限することのないようクギを刺しているのも特色です。
実験・実習費などの実費などは別として、特別な授業料は徴収しないとしています。旅費や滞在費は基本的に個人負担ですが、各大学で支援制度を設けたり、宿舎を整備したりすることも求めています。
同連合会は、日本私立大学協会(加盟382大学)、日本私立大学連盟(同122大学)、日本私立大学振興協会(同12大学)の主要な私大3団体(計516大学)で構成されています。制度化されれば、国内の私大595大学(文部科学省調べ)のうちの大部分が参加することになるわけです。また同連合会では、国公立大学との連携や、海外の大学に拡大することも視野に入れているとしています。
もともと大学というのは、中世ヨーロッパで、高名な先生を求めて学生が各地を遍歴し、街角などで授業をしてもらったことが、源流の一つになっているといいます。そうした伝統を踏まえて欧州連合(EU)では、域内で相互に学生交流などを行う「
エラスムス計画」を20年以上も前から実施しており(当時はEC委員会)、今では
参加学生は年16万人以上、累計で200万人を超えたといいます。一方、かつて日本でも江戸時代、漢学塾や蘭学塾に全国から塾生が集まったことがあり、「学生渡り鳥」制度はそうした東西の歴史を踏まえた「教育ルネサンス」だと、報告書は胸を張ります。
大学進学というと、どうしても、どこの大学を選べばよいか、ということだけに関心が向きがちになります。しかしこれからは、上記の提言に見られるように、大学間の垣根はずっと低くなります。入学してからも主体的に学ぶ姿勢が、いっそう問われることになるでしょう。