新年を迎えて、勉強への決意を新たにしているお子さんも多いのではないでしょうか。でも、「勉強」しなければならないのは子どもだけではないようです。経済協力開発機構(OECD)が今年から、 ≪大人の国際学力調査≫に乗り出すというのです。ただ、こういう言い方は、ちょっと誤解を招くかもしれません。≪子どもの国際学力調査≫も含めて、詳しく解説しましょう。
OECDが計画しているのは、「国際成人力調査」(PIAAC=Programme for the International Assessment of Adult Competencies)というものです。16〜65歳を対象に、「読解力」「数学力」「ITを活用した問題解決能力」の3分野を調査するといいます。今年4月から始まる予備調査を基に、2011(平成23)年8月以降に2時間弱の本テストを行い、2013(同25)年に結果を公表する計画です。
教育問題に関心のあるかたは、この調査が「PISA」(Programme for International Student Assessment=生徒の学習到達度調査)に似ていることに、気付かれたのではないでしょうか。PISAはOECDが15歳(日本では高校1年生)を対象として、2000(平成12)年以来3年ごとに「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」(リテラシーは「活用能力」)を調査する、代表的な国際学力調査の一つです。今年末には、昨年行われたPISA2009の結果が発表される予定で、日本の順位がどうなるかなど話題を呼びそうです。
さてPIAACですが、16〜22歳はともかくとして、「学校を卒業したはずの大人に、何をテストするの?」と疑問に思うかたも、いらっしゃるかもしれません。しかし、OECDが注目しているのは「学校で学んだこと」ではなく、「今日の社会で求められる力」です。学校時代だけでなく、卒業後の職場の内外での教育・訓練をとおして、本当に役立つ力がついているかどうかが大事だ、というわけです。
PISAについても、あくまで「知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうか」(PISA2006発表資料)を見るものです。学校で学んだ知識がどのくらい身に付いているかを調べる「国際数学・理科教育動向調査」(TIMSS)とは、実は性格がまったく異なっているのです。
こうしたPISAやPIAACの目的や内容をよく見ると、これからの社会で求められる能力とは何かが、透けて見えてきます。重要なのは、学校で学んだ知識をいつまでも覚えていることではなく、社会に出てからも自分で勉強したり、あるいは研修機関や学校などで学び直したりして、常に知識や技能をリフレッシュしながら、新たな仕事にチャレンジしていくことなのです。学校時代は、あくまで生涯にわたって学び続けるための≪基礎体力≫をつける時期だ、というわけです。そこを見失って国際順位に一喜一憂するばかりでは、調査の本質を見失ってしまいかねないことに、注意する必要がありそうです。

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。
1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代〜模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。
コメントは編集部がルールに基づき確認してから掲載します。
掲載されたコメントは、あくまでも個人の意見や考えを基にしており、内容については編集部では保証できません。