以前の記事でもお伝えしてきましたように、2009(平成21)年度から本格的に始まった「教員免許更新制」が、政権交代により、初年度にして早くも「抜本的な見直し」が検討されています。その一方で、免許更新のための講習を受けた先生たちは、9割が講習内容に満足しているといいます。先生たちは、教員免許更新制の何を評価したのでしょうか。
免許更新制では先生方に、大学などが開講する更新講習を計30時間受講することを義務付けています。逆に大学などは、受講者に講習内容を評価してもらうことになっています。昨年末時点の評価結果によると、必修の「教育の最新事項」領域(12時間)については、
「よい」41.8%、
「だいたいよい」49.0%、
「あまり十分でない」8.4%、
「不十分」0.8%。
選択の「教科指導、生徒指導その他」(選択18時間)はそれぞれ、
「よい」56.2%、
「だいたいよい」37.6%、
「あまり十分でない」5.5%、
「不十分」0.6%
となっています。講習自体は高い評価を得たと言ってよいでしょう。
とりわけ選択領域で、「よい」との回答が半数を超え、必修領域よりも14ポイント以上多くなっていることが注目されます。教科指導の新しい指導法や、生徒指導にかかわる最新の情報などは、学校に帰ってもすぐ役立つ内容だけに、大いに歓迎されたのでしょう。気になるのは、必修領域で否定的な評価が10%近くに上っていることですが、これは制度上の問題というより、大学にとっても初めての実施だっただけに、適切な講習内容を提供することに不慣れな面が少なからずあったようです。
ところで、制度化された免許更新制が、「問題教員」の排除を目的としたものではなく、教員の質の向上を図ろうとするものであることは、これまでの記事でも繰り返し解説してきました。確かに「質の向上」という面では、受講した先生方にも手応えがあっただろうことは、調査からも垣間見えます。ただし、身に付けなければ免許が失効し、職まで失いかねないほどの内容だったのかというと、問題がないわけではありません。
実は、先生方の間にはもともと、「大学でもう一度勉強して、学校で生かしたい」という希望が根強くあります。かつては先生を現職のまま大学院に派遣する「内地留学」が盛んに行われていたのですが、今は財政難で、どの教育委員会も派遣定員を削減する傾向にあります。自主的に休職して大学院に通える制度(大学院修学休業制度)もあるのですが、忙しいなかでは長期の休みを申し出にくい雰囲気があるとも言われており、休業者は全国で200人余りにとどまっています。更新講習に対する高い評価は、実は、大学で学ぶ機会の代わりを果たしてくれていたから、という側面もあったようです。
こうした先生の質の向上策は本来、「免許」の問題というよりも、「研修」の一環として行うべき性質のものかもしれません。文部科学省は現在、免許制度だけでなく研修なども含めた「教員の資質向上」について、省内で検討を始めたり、関係者から意見を集めたりしています。良い先生を一人でも多く増やすため、実効性ある論議を期待したいものです。

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。
1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代〜模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。
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先生自身の学びの場所が本来、必要だったのが、今回のような不祥事で実現したという皮肉な結果と思います。一方で、民主党政権になり、日教組の発言権の変化からまた変化が起こりそうですが、問題は子供にとってプラスな制度かであり、問題は政治の材料に教育が使われるリスクです。
現職の教員です。実は、2013年度に免許更新を迎えます。来年度、再来年度の国会審議で免許更新制について議論されるようですが、狭間におかれるものにとっては、正直困惑するばかりです。更新のための講習も、自治体の教育委員会が行っているところもあり、個々のおかれる状況によって費用負担にも不平等が生じています。また、私が勤めている学校で、超小規模校で、職員が少ないため、出張さえままならないのに加え、夏休み中に児童が発表会に参加するため、その発表が終わるまでは、連続して学校を空けることができないなど、たとえ夏休みであっても、希望の講習を受けられない可能性もあります。この制度に関しては、速やかに抜本的な改善をお願いしたいものです。また、抜本的な見直しを明言している以上、少なくとも方向性や教員の身分保障など、明確にしてほしいです。