都道府県教育委員会が持っている公立小・中学校教員の人事権を、2011(平成23)年度から市町村教育委員会に移譲することができるようになりそうです。実現すれば、「我が町の先生」として、地域に密着した教員が誕生することになります。
事の発端は、大阪府の橋下徹知事が、教員人事権を市町村に移譲できるよう、鈴木寛文部科学副大臣らに要請したことです。これを受けて文科省は、検討の結果、「現行制度内で可能」との見解を示しました。橋下知事は、2011(平成23)年度から豊中市や池田市など5市町で成る広域地域に公立小・中学校教員の人事権を移譲する意向を表明。5市町の首長も、箕面市庁で会談を開き、人事権受け入れで合意しました。具体的なことは、府や府教委を加えた担当者らによるプロジェクトチームで詰めることにしています。
ここで、公立小・中学校の教員の身分と、その人事について、説明しておきましょう。教員の身分は、あくまで学校の設置者である市町村の職員となっています。しかし実際には、採用、異動、懲戒などの処分、研修といった人事権は、都道府県・政令市が持っています。さらに、教員の給与は、3分の1を国、3分の2を都道府県が負担しており、市町村は一切負担していません。つまり、教員は、市町村立の学校に勤務しているにもかかわらず、人事や給与などの面で、市町村とほとんど関わりがないのです。しかも、公立学校の教員は数年おきに異動するため、勤めている学校のある市町村や地域を身近な存在として感じることが難しいと言われています。
このため市町村が、自分たちで教員を採用し、地域のために働く「我が町の先生」になってもらえるようにすることを目指すのが、「教員人事権の移譲」です。実は、現在でも、教員の一部を市町村が独自に採用することは可能なのですが、これをすべての教員に適用しようというのが、権限移譲のポイントです。
実は、これは橋下知事だけの考え方ではありません。教員人事権の移譲は、文科省が従来から検討していたことでした。中央教育審議会は、2005(平成17)年の答申「新しい時代の義務教育を創造する」の中で、将来的に小・中学校の教員人事権を市町村に移すことを前提に、当面は人口30万人以上の中核市に移譲する、という方針を打ち出しました。しかし、教育関係者の間で賛否が分かれたため、具体化しなかったのです。
たとえば、山間部と都市部で、教員募集の人気格差が生まれることが心配されます。また、財政力が低い市町村では、正規教員を採用できずに非常勤講師などが増え、財政力の違いによって自治体間で義務教育の格差が生じる事態も起きかねない、という指摘もあります。
地域のために働く「我が町の先生」で、学校を良くするのか。それとも、都道府県をとおして教員人事を行うことで、全体の質の均衡を図っていくのか。教員人事権の移譲をめぐっては、このような考え方の対立もあるのです。

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。
日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。
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確かに我が町の先生というのは魅力的ですが
地域格差がでるのは確実ですよね。
先生方も好んで山間部に移動する方は少なく、
僻地移動が有るので仕方なく来ている感じの先生方ばかり。
元気な若い先生と年配の全体を見渡せる先生とが丁度よく配置されるようになるといいですね。
質の低い先生が狭い地域に居座るというリスクもあるのでは。