学校の先生は、人を教え育てることにより秀でていてほしい、ということは言うまでもありません。しかし、単に「優秀な先生を」と叫んでいても、先生の質が向上するわけではありません。どうやって優秀な先生を確保するか、具体策が必要になります。川端達夫文部科学大臣は先頃、中央教育審議会に対して、「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策」を諮問し、本格的な論議が始まりました。これまでも教員免許更新制とのからみで注目されてきた審議ですが、改めて課題などを整理してみましょう。
川端文科相は諮問の理由で、質の向上に取り組む必要性として、第一に「保護者や地域社会から信頼される学校づくりを進めていくために」ということを掲げています。確かに、中教審に示された資料にあるように、昨今の先生の不祥事や、指導力に疑問を持たれるような先生の存在によって、先生全体に対する信頼が揺らいでいることは、否定できないでしょう。また、大学進学率が低かった時代には「大卒」の先生が信頼された時代もありましたが、今や保護者のほうが高学歴であることも、全国的に珍しくなくなりました。「先生」であるだけで信頼を受けられる時代は終わり、どうやって信頼を得るための高い能力を付けていくかを、具体的な対策として打っていかなければならない時代になっている、というわけです。
ところで、先生の質をめぐっては、大学などで教員免許状を取得する「養成」、免許取得者の中から先生にふさわしい人を選ぶ「採用」、先生になってからの長い期間のうちで段階的に知識や能力をさらにアップさせる「研修」という三つの段階で、それぞれ向上策を考えることが必要になります。中教審に対する諮問文で、「教職生活の全体を通じた」資質能力の向上方策と言っているのは、この養成・採用・研修という、すべての段階について、今一度メスを入れよう、ということなのです。
なお今回、中教審で議論を始めるに当たって、注目すべき動きがありました。以前の記事で紹介した「熟議」です。
これまでの中教審での論議は、あくまで教育に関する「有識者」である委員が行うものでした。折りに触れて教育関係団体などからのヒアリングやアンケート調査も行っていたものの、保護者や先生自身の意見は、あくまで間接的な形で反映されていただけでした。
それが、「熟議カケアイ」のウェブサイト開設で、「教員の資質向上策は?」がテーマの一つに掲げられたことは、以前紹介したとおりです。その論議が、3本の「文部科学省への提案書」(「教員になる際につけるべき『力』は?そのつけ方は?」「教員になってからも磨き続けるべき『力』は?その磨き方は?」「管理職等にはどのような『力』が必要?そのためにはどうすれば良い?」)として、まとめられています。こうした「当事者」の直接的な声が、中教審の議論にどう生かされるのかも、注目していきたいところです。

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。
1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代〜模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。
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(その1)
教員養成の議論には、民間企業の立場からの意見が極めて重要ではないでしょうか。
熟議カケアイのwebサイトで会員登録をしようとすると、所属団体の入力を求められます。そして、教育現場にどのような立場で関与しているかをプルダウンで選択します。
プルダウンですから、選択式になるのですが、その選択肢に「民間企業」の選択肢がありません。民間企業の立場の者は、あまり歓迎されていないようにも受け取れます。
そもそも教員養成を考える場合、国家戦略としてどのような人材を育成するのかによって、その人材を育成する教員像が見えてくると思います。その教員像が見えてきて初めて、教員養成の具体的な議論ができるもの思います。
(その2へ続く)
(その2)
世界的にPISA型学力が重要視され、日本でもPISA型学力を高めようという試みから学習指導要領の改訂が行われました。PISA型学力は、世界的な経済発展を支えていくための人材を育成する基準として、OECDによって設けられたものです。経済発展を支える中心は、民間企業ですからPISA型学力を有する人材と、民間企業が欲している人材が重なり合うと考えるのが自然かと思います。
民間企業が欲している人材、つまり、経済発展を支えPISA型学力を有した人材を、どのようにして育成していくか、その資質を持った人が、今の時代に求められる教員像なのだと思います。
保護者へのアンケートでは、どのような教員を求めるかの問いに対して、経験豊富な社会人経験を有する教員という回答が圧倒的1位になっていました。つまり、民間での経験が重要だということの裏づけだと考えられます。
根本的なところから見直さないと、いつまでたっても袋小路での議論に終始するような気がします。教員養成の議論は、数十年実施していることだと思うのですが・・・