文部科学相の諮問機関である中央教育審議会は、現在は40人までとされている小・中学校の学級定員の引き下げについて、近く正式に提言することにしています。ところが、具体的な人数は明記せず、あとは文科省に委ねるというのです。これは、どういう事情なのでしょうか。背景を探ると、これまで30年も引き下げが提言できなかった理由も、垣間見えてきます。
中教審が検討しているのは、▽小・中学校の学級の標準を、現行の40人から引き下げる▽小学校低学年は、さらなる引き下げも検討する▽標準を引き下げても、20人未満の小規模学級にしなくてもよいよう、柔軟な仕組みにする──などです。実際には、小学校低学年は30人学級、小学3年生以上では35人学級を想定しているといいます。なお、高校や特別支援学校では、学級定員を一律に引き下げることはせず、別の形で教員数を増やしたいとしています。
学級定員の引き下げなどによって先生の数を大幅に増やすことは、財政上の理由から一度にはできないので、5〜10年程度の「教職員定数改善計画」を立てて、順次、増員を図っていくことが通例です。小・中学校の40人学級は、1980〜91(昭和55〜平成3)年度の第5次計画で実現しました。ところが、第6次(93〜2000<平成5〜12>年度)、第7次(01〜05<同13〜17>年度)の計画では、学級定員の引き下げはせず、チームティーチング(TT)や少人数指導など、プラスアルファの部分で充実を図ってきました。
その間も、学級定員の引き下げを求める声が少なくなかったのですが、文部省(当時)の公式説明では、「40人以下学級にした場合、本当に効果があるかどうかはわからない」と、慎重な姿勢に終始していました。それが今回は、独自に学級定員を引き下げた自治体の例から、効果があったとするデータが蓄積されたとしています。
実は、当時の文部省も、苦しい立場に立たされていたのです。本音では、学級定員を引き下げたい。効果があることも、予測できる。けれども、「効果がある」というデータを出してしまったら、引き下げに取り組むべき責任が生じてしまう。けれども、それまでの折衝の感触からは、財政当局の強い反対があり、それを押し切って教員数を大幅に増やすのは、まず無理だ。そこで、せめてプラスアルファで教員を増やすことで、何とか学校現場を良くしたい──。そんな事情もあったのです。
逆に言えば、今回、大々的に引き下げを提言できる見通しになったのは、「教員の質と数を充実させる」という政府の方針があって初めてできたことだとも言えます。同時に、中教審レベルでさえ具体的な引き下げ人数を明記できなかったのは、それでもなお財政的に困難な状況があるということを表しています。財政措置も含めて、国民的な論議と同意が求められている課題だと言えるでしょう。

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。
1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代〜模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。
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