前回の記事では、文部科学省の「学校基本調査」などを基に、大学への「入り口」が広がっている現状を見てきました。今回は、「出口」です。
この2年ほどの間に、大卒就職が急に厳しくなっていることは、報道などでご存じかと思います。学校基本調査でも、その深刻さが具体的な数値で表れています。今春、大学の学部を卒業した者(2010<平成22>年度)のうち、就職したのは約32万9,000人(前年度比約5万4,000人減)、就職率は60.8%で、前年度に比べ7.6ポイントの急落です。就職率は2003(平成15)年度に55.1%まで落ち込んだ「超氷河期」のあと、「内定取り消し」が問題になる前年(08<同20>年度の春)には69.9%にまで回復していましたから、いわゆる「リーマン・ショック」(08<同20>年9月)を境に、大学生の就職環境は一変してしまったと言えるでしょう。
代わって急増したのが、「進学も就職もしていない者」です。前年度より約1万9,000人多い約8万7,000人で、卒業者に占める比率は4.0ポイント増の16.1%。03(平成15)年度の22.5%に比べればまだ少ないとはいえ、08(同20)年度には10.8%、約6万人まで縮小していたことを考えれば、今後が心配な数値です。このほか、アルバイトやパートなど「一時的な仕事に就いた者」は3.6%(前年度比1.3ポイント増)に当たる約1万9,000人(同約6,000人増)ですから、正規就職しなかった者が計10万人を突破した、と言うこともできます。
また、最近問題になっているのが、内定が取れなかったため、次年度も「新卒」として就職活動に再チャレンジしようとする留年生の存在です。4年制の学部を1年留年している者の数は、09(平成21)年度から増加に転じ(前年度比約2,000人増の約6万8,000人)、10(同22)年度には5,000人近く増えて約7万2,000人に達しています。この中には休学や「怠学」による者なども含まれていますが、近年の増加傾向は、やはり「就職留年」の反映だと言えるでしょう。
大学院などへの進学も、増えています。進学者は約7万3,000人(前年度比約4,000人増)で、進学率は13.4%(同1.2ポイント増)。国による近年の大学院拡充政策もあって、7、8人に1人が進学する時代になっています。ただし、大学院修了者の就職率は、修士課程が3.3ポイント減の71.5%、博士課程が2.3ポイント減の62.0%と、やはり厳しくなっていることに変わりはないようです。
そんななかで「専門職大学院」だけは、就職率が伸びています。全体では4.3ポイント増の34.8%となっていますが、特殊な事情を抱える法科大学院(ロースクール)を除けば、2.6ポイント増の73.4%。教職大学院に至っては、90.7%の高率です。
学部卒にしても、家政系で73.0%、教育系で70.1%、社会科学系で68.5%……など、専攻によって就職率は大きく違うのですが、これらはあくまで今春の数値です。4、5年後も同じとは限りません。変化の激しい経済状況の中、調査結果だけで「就職に有利な学部」かどうかを判断すると、勇み足になってしまうかもしれません。

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。
1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代〜模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。
コメントは編集部がルールに基づき確認してから掲載します。
掲載されたコメントは、あくまでも個人の意見や考えを基にしており、内容については編集部では保証できません。
トレンドや流行で一生の職業は作れず、また、学歴は高くなりすぎると職業の幅が狭くなるのでは。
留年、大学院…。不況のこの時代に親はいったいどこまで教育費を捻出することを求められるのでしょうか?大学4年生の息子を持つ我が家。4月から次男も大学生になったので、我が家の教育費は次男の受験、入学、新生活に関する費用、長男の授業料ととんでもないことになりました。今年1年をなんとか乗り切れば、と思っていましたが、就職難この状況です。先の見えないトンネルに家族全員が放り込まれた思いです。