「そこそこイケてる」という自尊心をもつことの大切さ

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イライラしていると、子どもが悪いわけではないのに八つ当たりして、子どもが泣いたり反抗したりすることで、ますます家庭内の空気が悪化…という悪循環の中にいると、自分自身の自尊心も低くなっていきそうです。「親として、人間として、私はダメだ」と思ってしまう前に、「私はなんとかできている」という方向へ、状況を持っていきたいもの。どう考えたらいいのか、法政大学人文科学研究科の渡辺弥生先生にお話を伺いました。

この記事のポイント

自尊心は、自分を「大変良い」と思うことではない

子どもとの関係がうまくいってない時は、親のほうも自尊心が低いことが多いといわれます。この自尊心ですが、日本人は、「大変よい」という部分を求めすぎているようです。それは様々な国でのアンケートを見てもわかるのですが、日本人はアンケートなどに回答するときに、「大変よくできた」というところに〇を打たない傾向があり、大抵、どちらでもない・だいたいできているという選択をする傾向にあるように思います。

「大変良い」 自分でなければ、「たいしたことない」という評価をしてしまいがちです。高い理想に達しない人は、全てダメという考えは正しいでしょうか。理想になる人とはどんな人でしょう。むしろ、人は、いいところも悪いところもひっくるめて、懸命に生きている自分の存在を認める心が大事ではないでしょうか。

本物の自尊心は、自分のありのままを受け止めて「ほどほどに良い」と感じること

褒められないと高められない自尊心というは、子どものころには高いかもしれませんが、褒めてくれる人がいなくなると低くなります。つまり、他人に依存している自尊心は、本物の自尊心ではないのです。自分のありのままを受け入れること、本来心と呼ばれる自尊心を持つことが大切です。そこそこできている、good enough=ほどほどによいという自尊心を、大人がまずもつことが必要です。こういういいところもあるけれど、こんなことをしちゃう面もある、でもまあまあ頑張って生きている人間だわ、という自尊心を持ってほしいです。

自尊心をもつためには、誰かに役立っているという有用感をもつこと。家族の中でも、仕事の場でも、どこでもいいから役に立っていると感じることです。それから、成長感。人と比べないこと。人とではなく、1カ月前の自分と比べて、自分の成長を感じてください。

  • 自尊心をもつためには
  • 誰かに役立っているという有用感をもつこと
  • 人と比べないこと

「やればできる」と思えるようになることが大切

最後に、自己効力感が大事です。やればできるんだ、という気持ちを持てることが有効です。例えば、出産を考えてください。誰もが事前に練習できることではないですよね。「きっとなんとかなるわ」と思うこと、思えることが大切です。どんなことでも初めてチャレンジするときは、うまくできるかわからないものです。それでも「なんとかなっちゃうんじゃないかしら」「やればできる」と思えることが大切です。そこそこ頑張れる自分がいる、ということを信じる感覚です。有用感、成長感、自己効力感を感じられるようになると、「そこそこイケてる自尊心」を抱くことができるのです。

まとめ & 実践 TIPS

イライラして感情的になったときは、自分を客観的に観察する「メタ認知」を意識してください。自分の行動や感情を、俯瞰で見て、「また悪循環の一歩を踏み出そうとしてるわ」と思い出してみてください。自分を客観視して考える。「今日の私は、いつものようにドジなことはしないわ」と思い、落ち着いて、問題を解決できるステップを踏みましょう。いつもの悪循環から抜けられたとき、「やったわ!」という達成感を味わいましょう。
そこそこいけてる自分や、まあまあ頑張っている子どもたちが愛おしくなるはずです。

プロフィール


渡辺弥生

法政大学文学部心理学科教授。教育学博士。発達心理学、発達臨床心理学、学校心理学が専門で、子どもの社会性や感情の発達などについて研究し、対人関係のトラブルなどを予防する実践を学校で実施。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か?—乗り越えるための発達心理学』(光文社)、『感情の正体—発達心理学で気持ちをマネジメントする』(筑摩書房)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)、『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(フォレスト出版)など多数。

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