麻布中学校1年生 磯貝俊太朗さんのお母さま

「麻布中学にぜったい入る」という強い意志が、3年間を支えた

弟さんは、いつから塾に通い始めたのですか?

“兄弟割引”があったので、4年生から姉と同じ塾(日能研)に通い始めました。6年生までサッカーを続けていたので、塾のある日は、ぎりぎりまでサッカーをやり、お迎えの車の中で着替えて、そのまま塾に直行という生活でした。それでも、塾はもう1つの学校みたいで楽しかったようで、1回も「塾に行くのがイヤだ」と言ったことはありませんでした。サッカーも、受験前日の朝練まで続けていました。
6年生からは、日曜日に麻布対策の講座だけを別の塾(早稲田アカデミー)でとっていました。


ご家庭で大変だったことはありますか?

家で勉強させるのが大変でした。
いすにじっと座っていることが嫌いな子で、おやつの時間が長く、なかなかやり始めない。ちょっとやったかと思うと、すぐに冷蔵庫を開けに行く、トイレに行くといった調子です。
塾の先生に相談したところ、「男の子によくあるパターンですね。でも俊太朗くんは、授業中にとても集中して聞いているので、大丈夫ですよ」と言われました。
確かに成績はとれていたので、「自分は受かる」と思っていたようでした。

私はそのナメきっているような態度が気に入らなくて、何度も「勉強が嫌いなら、無理に中学受験をしなくてもいい。勉強するのがいやな人にはお金は出さない」と言いました。実際、父親は高校受験で開成に入ったので、男の子は公立でもまれるのもいいと思っていたのです。

でも本人は「ぜったい麻布に行きたい」という気持ちが強く、「やめる」とは言いませんでした。家出をしようとしたこともありましたが、玄関を開けたら思いのほか暗くなっていて、挫折して部屋にこもったこともありました。その時には、今度は姉が、「本当に行きたいなら、ちゃんとやったほうがいいよ」とフォローしてくれました。


学習面ではどのように工夫をされていましたか?

算数や国語は得意だったのですが、理科や社会の暗記物が苦手で。最初のうちは終わったら答え合わせをしていたのですが、とにかく時間がかかるので、答えを見て読み合わせをして、わからなかったところをもう一度チェックするというやり方に変えました。これはよかったようです。それから、6年生の夏休み前くらいから塾の算数をやめて、その時間に自宅で演習問題を解いていました。算数の先生のやり方が本人と合わなかったからです。この決断をするまでには、もちろん悩みましたが、室長先生とも相談して納得のうえで決断しました。

どんなに実績を出している塾でも、大切なのは子どもを担当してくださる先生です。うちの場合では、志望校もはっきりしていたし、そのための対策は別の塾でとっていたので決断できた面もありますが、なんでも塾の言いなりではなく、疑問に思ったことは相談したほうがいいと思います。


志望校対策の塾とのかけもちは大変ではなかったですか?

そんなことはありませんでした。とにかく麻布に行きたいという思いが強かったので、そこに向けての勉強を早くさせたかったのですが、通っていた塾では対策は秋からしかなかったので。早稲田アカデミーだけが、春から対策講座を開講していて、しかも特待生ということで無料だったので、行かせることにしました。

そこの先生が、麻布対策一筋10年以上というベテランの方で、先生も麻布が大好きなので、授業もおもしろい。本人は心からその先生を信頼していましたね。正月特訓もありましたが、本人はいきいきと通っていました。国語の教え方も論理的で、「1年後には自分で何点とれたかわかるようになります」とおっしゃっていた通りになりました。国語の解法にもテクニックがあることを初めて知り、大変驚きました。


偏差値ではなく、子どもの適性をよく見て学校を選んだほうがいい

併願校はどのように選びましたか?

1日 麻布、2日 渋谷教育学園渋谷、3日 筑波大附属駒場と受けました。姉の時には1月に受験はしなかったのですが、今回は栄東を受けました。第一志望はもちろん麻布。筑駒はあくまでも第二志望と本人は言っていました。親としては合格の可能性のより高い早稲田を受けさせたかったのですが、結局本人の意思を尊重しました。

2日目は、本人は世田谷学園を希望していたのですが、塾からは聖光学院をすすめられていました。私は、聖光は家から遠いのと、タイプが違うような気がしていて、渋渋をすすめました。姉が受けたときの印象が良かったことと、本人にも合っていると思ったので、「理事長が麻布の出身で、男女共学で麻布のような学校をつくりたいという思いでつくった学校だ」ということも話して、本人もそれならと納得したようです。
受験校は、子どもの意思を尊重すると同時に、学校の特性や本人の実力をよく見極めて、選ぶことが大事ではないでしょうか。


お父さまは、受験にはどのようにかかわっていましたか?

まったく、かかわっていませんでした。「落ちたら公立に行けばいい」と思っていたようです。リビングで子どもが勉強していてもおかまいなしにテレビをつけるので、さすがに注意しました(笑)。といっても姉の受験の時には、毎週日曜日に俊太朗を連れて外に行き、一緒にサッカーをやって夕方まで帰ってこないくらい面倒を見てくれました。私はその間に娘の勉強を見てやることができたので、助かりました。

両親ともに熱心になると、子どもを追い詰めてしまうことになりかねないので、役割分担が大事だと思います。姉の中学進学と同時に転勤が決まり、今は単身赴任中です。

俊太朗の受験に関しては、姉が何かにつけてフォローしてくれて、麻布の受験前日もまったく普段通りの弟に対して「わかってる? 明日本番だよ!」と気合を入れていました。すると、本人は「お母さん、お姉ちゃん、今までありがとう。ぼく明日がんばるから」と答えていました。
受験当日も、姉は友達からの誘いを断って一緒についてきてくれたほどです。


中学校生活はいかがですか?

とにかく、生徒たちの自主性を大切にしている学校で、生徒は遠くに柵がある中で放牧されているような状態で、先生方は遠くから見守っていてくださる。まるで大学みたいです。文化祭や運動会などの行事の運営も、予算の執行から生徒の手にゆだねられていて、生徒たちもその信頼に応えてきちんと行動しています。
息子はサッカー部に入っていますが、先輩方を見て自然と「どう行動するべきか」ということを学んでいるようです。まだ始まったばかりですが、楽しく通っています。勉強に関しては、相変わらず家ではあまりしませんが、学校の授業中は集中して聞いているようです。
姉の学校でもそうですが、中学受験の延長で、塾に通うお子さんもいらっしゃいますが、うちは行っていません。塾に行っているお子さんは、学校の勉強をおろそかにしがちのようですが、それではあまりいい結果は出ないのではないでしょうか。大学受験のための中学高校ではないので、子ども達には充実した学校生活を送ってほしいと思っています。


  • 小学6年生のお正月頃の国語のノート
間違えた漢字はふせんに書いて、目立つようにはっていった。

  • びっしり指導された答案、先生からの激励のFAX、寄せ書きのハチマキは思い出の品


<取材後記>
2人のお子さん共に、高い資質をおもちで、うらやましいほどでした。しかし、その資質を伸ばしているのは、決して子どもを追い詰めないご両親の温かい目線であり、いい意味での熱心さだと感じました。塾に依存する受験が多い中、あくまでも主導権は自分達の手において、塾を子どもに合うように活用する姿勢に共感しました。また、睡眠をしっかりとることは、やはり重要だと再認識しました。 皆さんはどうなさっていますか?(教育ジャーナリスト 中曽根 陽子)


プロフィール



教育ジャーナリスト、「登録スタッフ制企画編集会社<ワイワイネット>」代表。塾取材や学校長インタビュー経験が豊富。近著に『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)。

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