医療の未来をひらく「iPS細胞」について知る

最近、ニュースなどで「iPS細胞」という言葉をしばしば耳にするようになりました。医療の未来をひらくと期待されるもので、発見した日本人研究者はノーベル賞の有力候補になっています。こうした科学の最先端の出来事は、難しいと思われがちですが、理科の学習内容につながっており、中学入試で取り上げられることも少なくありません。そこで今回は、そんなiPS細胞について取り上げ、解説しましょう。



クイズde基礎知識

iPS細胞を開発したのはだれ?/ヒトの細胞は何個くらい?/iPS細胞とは何?/どんな研究が考えられる?


時事問題を学ぶきっかけになる題材をクイズ形式でご紹介します。基本情報の整理に、親子で時事問題について話題にするきっかけに、入試・適性検査対策に、お役立てください。

Q1

iPS細胞をつくりだす技術を開発したのはだれ?


A.山中伸弥(やまなか・しんや)博士
B.小柴昌俊(こしば・まさとし)博士
C.下村 脩(しもむら・おさむ)博士


山中教授がつくりだしたiPS細胞(写真=京都大学教授 山中伸弥)

A1 正解は 「A.山中伸弥博士」 です。

iPS細胞をつくりだす技術は、京都大学の山中伸弥教授らの研究チームによって開発されました。

山中教授らはまず、マウスのiPS細胞をつくりだす技術を開発し、それを応用して、2007年11月、ヒトのiPS細胞をつくりだす技術に関する論文を発表したのです。これは、医療の未来をひらく大きな研究成果として、世界中で大きなニュースとして取り上げられました。2008年には政府の支援を受けて京都大学にiPS細胞の研究センター(現iPS細胞研究所)が設立され、山中教授はその所長としてiPS細胞研究の進展やiPS細胞を活用した医療の実現をめざしています。

Bの小柴昌俊博士はニュートリノの発見で2002年のノーベル物理学賞を受賞した研究者、Cの下村脩博士は緑色蛍光タンパク質の研究で2008年のノーベル化学賞を受賞した研究者です。


Q2

ヒトの大人のからだは何個くらいの細胞でできている?


A.約60万個
B.約60億個
C.約60兆個


A2 正解は 「C.約60兆個」 です。

たった一つの受精卵から生まれるさまざまな細胞


「細胞」とは、ヒトをはじめとする生物のからだを形作る、とても小さなつぶのことです。

ヒトのからだの始まりは、受精卵と呼ばれるたった1個の細胞です。受精卵は、分裂して次第に数を増やしていきます。分裂したあとの細胞の種類は1つだけではありません。筋肉や皮膚、神経、白血球、赤血球など、からだの各部分のもとになるさまざまな種類の細胞へと分化していきます。

こうして種類や数を増やしていった細胞によってからだの各部分が形づくられ、やがて赤ちゃんとなって生まれてくるのです。生まれたあとでも細胞は分裂し、成長を続けていきます。ヒトの大人は、200種類以上の細胞が、合計すると約60兆個もあるといわれます。


Q3

iPS細胞の説明として最も正しいのは?


A.病気の原因となる細菌やウイルスを退治する細胞
B.病気にかかりにくい、とてもじょうぶな細胞
C.からだのいろいろな部分になる能力を持つ細胞


A3 正解は 「C.からだのいろいろな部分になる能力を持つ細胞」 です。


からだのいろいろな部分になれる能力を持つiPS細胞

iPS細胞は、正式には「人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells)」といいます。これは、「人の手でつくりだされた、たくさんの細胞になれる能力を持つ幹細胞」という意味です。

幹細胞とは、自分のコピーと、自分とは異なる種類の細胞をつくりだす能力を持つ細胞のことです。受精卵からからだの各部分の細胞ができる過程では、いくつかの「幹細胞」と呼ばれる細胞が生まれます。たとえば筋肉や皮膚などの細胞になる間葉系幹細胞、赤血球や白血球など血液に関わる細胞になる造血幹細胞などがあります。

筋肉細胞や赤血球など、からだの各部分の役割を持つようになった細胞は、そこから幹細胞に戻って分裂を始めたり、他の細胞へと変化することはありません。そして、幹細胞を人工的につくりだす手段も見つかっていませんでした。しかし、山中教授は、皮膚の細胞に4種類の遺伝子を加えることで、からだのいろいろな部分になる能力を持った細胞をつくりだすことに成功したのです。また、つくりだされた細胞は、筋肉や皮膚、赤血球、白血球など、からだのいろいろな部分の細胞になることが確認されました。「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」という名前には、こうした意味が込められています。

ちなみに、最初の文字が大文字の「I」ではなく小文字の「i」になっている理由の一つは、当時流行していた音楽プレーヤー「iPod」にあやかったためだそうです。


Q4

iPS細胞を用いた研究として最も当てはまるのは?


A.病気になるしくみの解明の研究には役立つが、薬の安全性の研究には役立たない
B.薬の安全性の研究には役立つが、病気になるしくみの解明の研究には役立たない
C.薬の安全性の研究にも病気になるしくみの解明にも役立つ


A4 正解は 「C.薬の安全性の研究にも病気になるしくみの解明にも役立つ」 です。

iPS細胞は、さまざまな分野で医療の未来をひらくものとして期待されています。

たとえば、心臓の病気になった患者さんの皮膚の細胞からiPS細胞をつくり、たくさん増やしてから心臓の細胞にさせて移植すれば、病気を治すことができると考えられます。また、新しく開発された薬が安全かどうかを確かめるには、現在では動物実験などを繰り返して確かめる必要がありますが、この段階で問題がなくとも、実際にヒトに投与した時に副作用が出ることがあります。iPS細胞からつくりだしたヒトのからだの各部分の細胞を使えば、新薬の開発が大いにすすむかもしれません。さらに、健康な細胞が病気になる過程を再現して、病気になるしくみや治療法を研究することもできるでしょう。

iPS細胞がつくりだす技術が開発されたことをきっかけに、こうしたさまざまな分野の研究が、日本だけでなく世界各国で急速に進められており、山中教授は、ノーベル賞の有力候補とみられているのです。


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