国語の抜き出し問題で、中途半端に抜き出して減点されることがよくあります[中学受験合格言コラム]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。

※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


【質問】

国語で文章を抜き出して解答する時、必要な文の途中だけしか抜き出さないことがあります。そのため、抜き出す箇所はだいたい合っているのに減点されることがよくあります。正しく抜き出すためには、どんな練習をさせればよいでしょうか?

相談者:小6男子(大ざっぱなタイプ)のお母さま



【小泉先生のアドバイス】


「丸め」に注意して「検語」を心がける


●「丸め」てはいけない国語の答案
算数で端数処理のことを「丸め」といいます。四捨五入などがよい例で、「四捨五入によって小数第1位までの概数を求めよ」という場合は、20.78 → 20.8、250.543 → 250.5という具合になります。これが端数処理であり、おおよその数値を求める「丸め」です。算数は精密な教科のように思えますが、案外大ざっぱなところがあるようです。

さて、国語は算数に比べて大ざっぱな感じのする教科です。記述問題では同じような言葉であれば、正解になります。たとえば、「怒っている」「腹を立てている」「ムッとしている」など、怒っている程度が違うようにも感じますが、それでもまったくの不正解ということで×をもらうことはないでしょう。しかし、このように大ざっぱに思える国語ですが、実はかなりの精密さを求められる場合が少なくないのです。問題文を読み、大ざっぱな答えを書いて×や△になってしまう、だいたいは合っているが、少しの違いで点数を落としてしまう。こんな時、私は子どもたちに対して「大ざっぱではいけない」「丸めてはいけない」と言っています。

●抜き出しにおける「丸め」
国語における「丸め」による失敗例を、次の例題で考えてみましょう。ご質問にあった「抜き出し問題」です。


例題)豊かな漁場を育むためには、湖岸、川岸、海岸の森林を守ることが大切だ。それによってできた木陰が、直射日光や波風を防ぐなどして魚介類の生育環境を安定させるからだ。

問 ——線部「それ」とは何ですか。本文から10字前後で抜き出しなさい。


よくある失敗例としては、答えを「海岸の森林を守ること(10字)」にすることです。確かに字数はよいし、当てはめてみても一応意味は通ります。しかし、それでは「湖岸」や「川岸」が抜けてしまいます。それぞれの岸は同等な関係にありますから、正解は「湖岸、川岸、海岸の森林(11字)」になります。指示語の場合、答えが「潤Eこと」になる場合が少なくないので、「潤E守ること」まで、ついつなげてしまうのでしょう。
なお、「湖岸、川岸、海岸の森林を守ること(16字)」という答えを出す子どももいますが、16字では字数オーバーでしょう。これが抜き出し問題でよくやってしまう「丸め」の例で、場所はだいたい合っているのに少しずれてしまい、正解としてすんなり○がもらえなくなります。

●記述における「丸め」
「丸め」は記述問題でもよくします。たとえば本文に「夏休みの宿題のすばらしい出来栄えに、皆にかっさいされた」とあり、「どんなことがおこったのですか」という問いがあると、それに対する答えを「先生にほめられた」としてしまうようなことです。確かに先生にもほめられる様子が本文にもあるのですが、教室の皆にも評価されたのですから、正解としては「皆にかっさいされた(先生だけではない)」のほうが文句が付けにくい答えになります。

このように、記述問題の場合は、できるだけ本文の言葉をそのまま使ったほうが危険性が少ないようです。それを「だいたいこういう意味でしょう」という具合に「丸め」てしまって答案を書くと、採点者としてはあちこちで減点できる箇所を見つけてしまいます。このように「丸め」てしまうことなく、本文の表現をそのまま使って答案を作ったほうが安全なのです。大人が書いた文章、場合によっては小説家やその道の専門家が書いた文章を、小学生の皆さんが意味をたがうことなく、違った表現に書き直すことに無理があるのです。

●対策としての「検語」
さて、このように国語でついやってしまう「丸め」ですが、抜き出し問題ではどのようにすれば防げるのでしょうか。抜き出しの場合は、抜き出したものをまずは入れてみて、意味がすんなりと通るかどうかを確認することです。先に挙げた例題でいえば、「それ」に入れてみると「湖岸、川岸、海岸の森林によってできた木陰が、潤E」になり、すんなり意味が通りました。

字数制限などの条件も、もちろん確認しましょう。さらに、抜き出した部分が前後関係から考えて、ひとつのまとまりになっているかどうかをチエックします。今回、誤答として挙げた「海岸の森林を守ること」ではひとつのまとまりを切ってしまっています。「こんなところで間違えるのか?」と思われるかたもいると思いますが、実際に子どもたちは本当によくこのような抜き出しをします。

このように、国語でも精密な思考が必要です。いわば国語における「検算(検語?)」ともいえる作業であり、アバウトな答案を排除するための大切なプロセスです。お子さんが国語で「丸め」ないように、注意してあげてください。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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