速報!2017年首都圏中学入試 算数

2017(平成29)年の首都圏中学入試には、どんな傾向が見られ、どんな力が問われたのでしょうか。
森上教育研究所主催のセミナー「平成29年首都圏中学入試の結果と分析」での、悠遊塾主宰の金廣志先生による「算数」の分析をお届けします。

※以下は同セミナーでの金廣志先生による分析を抄録したものです。

■2016年に比べ、全体として「穏健な入試」の印象

2016年は近年まれにみる難しい入試で、多くの学校で受験者の平均点が50%を割りました。これに対し、今年度はその反動で、多くの学校で受験者平均点が大幅に上がりました。男子の最難関校といわれる筑波大附駒場、駒場東邦、栄光、聖光、海城などで受験者平均点が上がり、芝、桐朋、城北などでも上がっています。ただし、千葉の渋谷教育学園幕張、市川は、昨年度易化したためか、今年度は難化。学習院女子、鷗友、フェリスも、今年度は難しくなっています。このように、算数の入試問題の難易には隔年現象が見られます。
内容的に見ても、バラエティに富んだ新傾向問題が続出した2016年に比べ、今年度はきわめて「穏健な入試」だったと思います。大部分が基礎基本を問う問題と、標準的な応用問題で占められており、大学附属校や女子の伝統校では、各校の例年のスタイルに乗っ取った問題を出題しているという印象でした。受験生にとっては、日頃の鍛錬の成果が出やすい入試だったのではないでしょうか。

■問題文の長文化——「算数的読解力」が求められる

とはいえ、最難関校では、毎年時代をリードするような難しい問題が出題されており、今年も例外ではありません。近年の傾向として、問題文の長文化があります。たとえば開成などの最難関校では、大問1問に、問題用紙を1枚分使って、様々な条件が示されるケースが増えてきました。その条件を整理するのに苦労し、時間が足りなくなるのではないかと不安になった、という生徒の話も聞きました。

このような問題は、いかに複雑な条件を整理し、ていねいに処理して正解を導くかという、いわば「算数的読解力」を問うもので、大学入試新テストを意識しているといえるでしょう。今後はさらに、このような「算数的読解力」が必要とされる問題が様々な学校で出題されることが考えられます。

■立体図形の問題が目立つ

立体図形、特に立体切断の問題が非常に多く出題されたのが今年の特徴です。たとえば桜蔭では、小さな立方体を組み合わせて作った立体から、いくつかの小さな立方体を取り除いて立体を切断するという、斬新な立体切断の問題が出題されています。東京女学館では、切断した立体の展開図から角度や面積を求める問題、栄光では立方体の頂点記号を展開図に書き写すという、基本的な手法を問われる問題が出題されました。
これらの立体問題は、空間把握能力だけを問うているのではありません。ていねいに作図を行い、条件を整えていけば得点源となる問題も数多く見られます。

■その他、注目される問題

筑波大附属駒場では、同じ大きさの正三角形を敷き詰め、それに順に書き込んだ数字の規則性に関する問題が出されました。これは「四角数(平方数)」の考え方に着目することがポイントです。

サレジオでは、トランプのカードを規則に従って切っていく問題が出題されました。カードの操作のしかたをどのように処理するか、最初のひと手間が肝心です。解き方を発見する喜びを味わえる、良問といえるのではないでしょうか。

栄光で出題された、円周上に正多角形をかいていく問題は、「ひもをN等分する」タイプの問題で、既約分数の個数を考えることがカギです。このタイプの問題も数多く出題されました。

立教新座で出題された、いわゆる「メネラウス型」の三角形の問題は、昨年の筑波大附属駒場や今年の渋谷学園渋谷でも出題されました。「メネラウス型」の三角形は定番となりつつあるため、ぜひ解き方に慣れておきたいものです。

雙葉で出題された、整数の規則性の問題はかなり面倒ですが、考え方しだいで時間を短縮できます。短時間で正解を導くために、考え方の工夫を身につけることが大切です。

麻布で出題された砂糖水の問題は、割合と不定方程式と数の性質の融合問題で、いかにも麻布らしい斬新な問題でした。設問の誘導に乗って、AとBの容器に加える角砂糖の数が「互いに素」という条件に気づくことがポイントです。

■教科融合問題——算数についての記述

今年、話題となっているのが、駒場東邦で出題された「実生活において算数の考え方が活かされて感動したり、面白いと感じた出来事について」簡潔に説明しなさいという記述解答させる問題です。

この問題は、将来大学の新テストで要求される方向性に対して、駒場東邦なりの答えを模索・提示しているように思えました。

■来年度に向けて——基礎・基本の徹底を

2017年は、斬新な新傾向問題は少なめでしたが、2016年に出題された新傾向問題が、来年以降に形を変えて出題される可能性は大いにあります。見たこともない問題と出会ったとき、知っているアプローチ方法をいろいろと試して、粘り強く考えられるようになるために、大切なのは基礎・基本です。
今年は、大学入試改革を視野に入れた設問が増加傾向にありましたが、全体としては特殊なテクニックより、基礎・基本の徹底が合否に結びついていくと実感できる入試だったといえます。問題の条件を読み取り、整理していく力、規則を書き出すことで法則性を見出す力、ていねいに作図する力など、一つひとつの手順をきちんと進めていく力が、今後ますます大切になっていくでしょう。

プロフィール


金廣志

悠遊塾主宰。森上教育研究所スキル研究会講師。<武久鴻志会>の渋谷教室教務責任者を経て、悠遊塾を設立。一人で4教科を指導、塾生全員を全国の超難関校に合格させカリスマ講師として一躍有名になる。異色の経歴から発想されてきた学力向上の方法論は他に類例を見ない説得力で多くの保護者に支持されている。著作に「まとめ これだけ!算数(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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