志望校決定の前に「入口」・「出口」とカリキュラムに注目![中学入試]

お子さまの志望校を決定する際、ぜひ注目したいのが、入学時の難易度はさほどではなくても、難関大学の合格者が多い学校です。生徒の学力をよく伸ばしている学校の教育には、どんな特徴があるのでしょうか。
今回は、「学力を伸ばしてくれる学校」の見つけ方とカリキュラム・マネジメントについてお話しします。

「学力を伸ばしてくれる学校」とは?

生徒の成長は、もちろん合格実績だけではかれるものではありませんが、入学時の難易度と合格大学の難易度、つまり「入口」と「出口」の難易度を比べることで、学力がどのくらい伸びたかの目安がわかります。森上教育研究所では、毎年「学力を伸ばしてくれる学校」について、「人気国公立大」「早慶上智」「GMARCH」の合格実績をもとに分析していますので、ぜひ参考になさってください。

<2016年版>
http://oya-skill.com/pdf/20161225_1.pdf
http://oya-skill.com/pdf/20170216_1.pdf

学力をよく伸ばしている学校の教育は、どこが違うのでしょうか。
各学校で様々なアプローチがありますが、子どもとたっぷり対話しながら、その子独自の考え方を引き出していく工夫がある、ということは共通していると思います。

学力を伸ばす教育の特徴——自由な発想を引き出し、考えるプロセスを磨くしくみ

たとえば、宝仙理数インターには、その名も「理数インター」という名の教科横断、課題解決(PBL)型の授業があります。この授業ではiPadを使い、一人ひとりの発想が生まれ、自由に発言しやすい環境を整えており、生徒たちは自分の考えがみんなに受け入れられ、形になる経験を通して自己肯定感を高めています。先生がたは「いちばん楽しみな授業は理数インター」と生徒にいわれることを目標に指導しているそうです。

また、かえつ有明では、「サイエンス」というPBL型の授業で、「答え」ではなく「答えを導き出すためのプロセス」を磨いています。たとえば歴史であれば、「教科書を脚注や図表などすみずみまで覚える」のではなく、「教科書の本文を、自分なりに再構成できる」力をつけることが目標だといいます。たとえば戦国時代、自分が信長だったら、秀吉だったら、あるいは「朝鮮王朝の王」「日本に布教に来た宣教師」だったら…というふうに、立場を変えて歴史を眺めることで、思考力は豊かに膨らんでいくのです。

特に成績が中程度の場合、間違えるのを恐れたり、「自分の考えにたいした価値はない」と思ってしまったりしがちです。学力をよく伸ばしている学校には、一人ひとりのアイデアを生かして問題解決をしていく過程で、自己肯定感を高めるしくみがあると思います。

「世界」と向き合うチャンスや動機づけがある

自ら目指す目標やロールモデルが見つかったとき、学力は飛躍的に伸びていくものです。
たとえば横浜雙葉や札幌聖心には、NGO活動や国際問題に取り組む研修プログラムがあります。貧困や格差、戦争、難民の問題など、今世界で起きている問題に向き合うことは、学習への高い動機づけになります。海外の大学への進学者も多い広尾学園では、インターナショナルコースの希望者によるアメリカ等の大学の見学会があります。大学関係者に英語で核心をつく質問ができるよう、毎年、参加者の意欲は非常に高いといいます。

企業家教育に力を入れている品川女子学院では、文化祭で、クラスごとに株式会社を設立し、エコの推進、途上国の支援などのコンセプトを決め、場合によっては企業との提携も行ってお店を経営するという活動を通して、ビジネスの基礎を学んでいます。
また、開成にはOB寄付による「ペン剣基金」を活用し、研究提案をして研究費を獲得する助成制度があり、中1から参加できます。研究テーマのプレゼンから実験・検証の進め方、成果発表まで、研究者の仕事の流れを体験できるわけです。
このように、課外活動や行事と絡めて、PBLやアクティブ・ラーニングと呼ばれる教科横断型の学習を進めている学校もたくさんあります。それらが成功し、生徒たちが積極的に活動している学校は、結果的に大学合格実績も上がっているケースがほとんどです。

「カリキュラム・マネジメント——主体性や思考力を高めるカリキュラムを

「2016年12月の中央教育審議会答申では、「アクティブ・ラーニング」と並んで「カリキュラム・マネジメント」の実現がうたわれています。主体性・多様性・協働性、思考力などを育てるためには、これまでのような教科や学年の枠を超え、カリキュラムの再編成が必要であり、今後は各学校に、そのグランドデザインを示すことが求められるというわけです。カリキュラムのグランドデザインを示すためには、「生徒にはどんな人間に育ってほしいか」というビジョンがなければなりません。ビジョンと、それを実現するカリキュラムをどう提示するか、多くの先生がたが頭を悩ませています。

未来が見えにくく、「正解のない問題」に立ち向かう力が問われる今こそ、保護者のかたにも「こんなおとなに育ってほしい」という思いやビジョンが必要かもしれません。志望校を選ぶにあたり、「この学校のビジョンには共感がもてる」「わが子にはこんな環境で育ってほしい」といった直感も、ぜひ大切にしてください。

(筆者:森上展安)

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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