「違い」を受け入れ、育てる風土を見極める[中学入試]

大学入試改革の方向性は、中学入試における志望校選択にも大きな影響を与えています。2020年度以降は、一般入試でも、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価するため、調査書や、志願者本人が記載する資料が評価の対象となる見通しです。
今回は、前回に続き、「主体性評価」の重要な要素となりそうな課題研究と志望校選びについてお話しします。

チームでの探究は女の子のほうが得意か?

「課題研究」「探究」「PBL(Project Baced Learning)」「アクティブ・ラーニング」など呼び方は様々ですが、新学習指導要領が提唱する「主体的・対話的で深い学び」を目指し、数多くの学校で研究や模索が続いています。
中高一貫校の先生方によく聞くのは、女子に比べて「男子はおとなしい」という話です。開成、麻布など最難関男子校の生徒はよく発言する子が多いそうですが、共学校では女子のほうが元気なケースが多いといいます。これは、男女の脳についていわれていることと関係があるかもしれません。

女性のほうが左脳と右脳の連動性が高く、多くの情報を同時に処理できるといわれています。一方、男性は脳を部分的に使う傾向があり、一つのことに集中するほうが得意だといいます。男性の中にも女性的な面、女性の中にも男性的な面があるので一概にはいえませんが、チームで自由に意見を出し合い、良いところを取り入れながらまとめていくPBLには、最初は女の子のほうがなじみやすいかもしれません。一方で、一点に深く集中して考え、決断を下す男性的な思考力にも良さがあります。「おとなしい」といわれる男の子たちの活躍を促すには、まずは「正解はひとつではない」こと、「誰の考えも尊重される」こと、「まずはじっくり考えて、自分が納得のいく答えを出していいんだ」ということが実感できるような雰囲気づくりが大事なのではないでしょうか。

「どの知識が使えそうか」をまず考える

小学生同士のグループで課題研究に取り組むPBL型のワークショップなどを見ていると、発言する子としない子の差がかなりはっきり出るな、と実感することがあります。これは能力の差というより、慣れの問題だと思います。また、与えられたテーマについてあまり考えたことがない場合、まじめな子ほど「あいまいな知識をもとに発言してはいけない」「間違ってしまうのではないか」というブレーキが働く、という面もあるようです。

必要な知識や考え方を正しく身につけるのはとても大切なことです。しかし、課題研究では、「その知識がどこまで正確か」はひとまずおいて、「どの知識が使えそうか」を考えることから始めます。知識の内容については、後から参考書やコンピュータで調べて正確さを期すことができるからです。課題研究においては、「間違えること」や「人と違う考え方をすること」を恐れずに、自分なりの切り口で課題解決の方向性を探すことが大切です。

「違い」を尊重し、「間違い」を許容する風土

少し話がずれますが、最近「新経営宣言」として青山学院大学が掲げた “Be the Difference”というスローガンが印象に残っています。あらゆることの多様性を認め、一人ひとりの個性を大事にする、“違うことに勇気をもつ”思考と行動を促す言葉です。
課題研究で成功している学校には「違い」を尊重し、「間違い」を恐れさせない風土があると思います。

尚、このような風土の中で課題研究の指導を進めるには、学校側の体制も大切です。生徒の様々な考え方や切り口を認め、それをさらに深め、発展させる指導をするには、一人ひとりに対する個別のフォローが欠かせません。研究のプロセスを指導できる人材も必要です。先生方が一人で何役もこなすのは無理があると思います。

生徒一人ひとりの違いを大切にし、伸ばす体制ができているかどうかも、今後の志望校選択の大切なポイントとなるのではないでしょうか。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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