受験に体験をどう活かすか【高校受験】
入試直前のこの時期、近年増えている記述問題や作文の対策に悩まれている受験生も多いかもしれません。
今回は、学習に自分の体験をどう活かすかについてお話しします。
すべての体験は「今」につながっている
先日、IT業界の先端を行く方々の講演を聞く機会があったのですが、「子ども時代のどんな体験が、今の自分につながっているか」という質問に対する、ヤフー株式会社CSO・安宅和人氏のお話が印象に残りました。
安宅さんは幼児の頃、絵が大好きで画家になろうと思っていたそうです。ところが、小学校4年生のときにモディリアニの絵を見て衝撃を受けたといいます。「上手下手の次元を超えた才能があると感じて、自分はとてもかなわないと思い、画家への道はあきらめた」とのことでした。モディリアニの絵との出会いが、それほど強烈な体験として残ったのですね。
このような体験は、その後の興味や考え方に大きな影響を与えます。そのときは気づかなくても、あとで振り返ってみると「こんな考え方をするようになったのは、あの出来事がきっかけだったかもしれない」と思うようになることってありますよね。
「書いてみる」「話してみる」ことで体験を掘り下げて
近年は、入試の記述問題や作文、あるいは推薦入試の面接などで、体験をもとに自分の考えを述べさせる機会が増えています。こうした問題に対し「書くことがない」「何も思いつかない」といった子も多いようです。
たしかに、将来を決定づけるような強烈な体験には、まだ出会っていないケースが多いかもしれません。しかし、忘れられない思い出や、なんとなく心に引っかかっている体験はいくつかあるのではないでしょうか。「どんなところが忘れられないのだろう」「なぜあのことが引っかかっているのかな」などと、その体験の細部をよく思い出しながら掘り下げていくと、思いがけない発見をすることがあります。いきなりきれいにまとめようとせずに、まずは浮かんだことを「書いてみる」「話してみる」ことが重要です。体験をもとに、考えを掘り下げることに慣れると、記述問題や作文への苦手意識も減ってくるのではないでしょうか。
好きなことに打ち込んだ経験が
高校以降の学びにつながる
中学3年生になるまでの間に、お子さまは部活や学校行事、友達やご家族との関係などを通じて、様々なことを体験されてきたと思います。入試直前の段階で、それらの体験を通して培ってきたものの見方や考え方を振り返ってみるのもよいと思います。たとえば、部活や習い事で自分が「上達した」と感じた瞬間や、友達とうまく協力できたと感じたのはどんなときか、といったことを考えてみるのもよいですね。そういったことは、記述問題や作文などの材料になりますし、自分なりのものの見方への自信にもつながります。また、高校以降の学びにもつながるでしょう。
学習指導要領の改訂に伴い、高校での学びも変わりつつあります。2022年度以降には科目再編により、選択科目に「古典探究」「世界史探究」「理数探究」など、「探究」のつく科目が多く導入されます。今後は暗記に頼るのではなく、自分なりの問題意識をもって思考力・判断力・表現力を深めていくことが求められるでしょう。
好きなことに打ち込み、もっと上手になりたいと工夫した経験はそのまま「探究」につながります。
とある中高一貫校の先生に、こんな話を聞きました。
「思考力ものづくり入試」という入試で入学したある生徒は料理が大好きで、色鉛筆で絵を描きながら独自のレシピを考えていたそうです。その子は中学入試のための、4教科の受験勉強や先取り学習はほとんどしていなかったため、中一1学期の成績はふるいませんでしたが、2学期の成績はトップクラスになったといいます。おいしい料理を作るためには、下ごしらえ、焼き加減、調味料の選び方など様々なことに注意を払う必要があります。その子は料理を通して、様々なことに気づける感覚や鋭いものの見方が身についていたのだと思います。そういった蓄積は、何を学ぶにも役立ちます。
入試直前には、新しい知識を学ぶより、自身の体験を含め、すでに学んだことを振り返るほうが有効だと思います。お子さまは、学校や家庭での生活を通じて、すでに多くのことを知っているはずです。お子さまが自身の大切な財産に気づけるよう、励ましてあげられるとよいですね。
受験生の皆様のご健闘をお祈りしております。
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