時事問題に強くなる!2018年度入試の傾向は?

2018年6月3日、東京国際フォーラムで「ベネッセ進学フェア2018」が開催されました。私立中高一貫校約180校が一堂に集まり、各学校の先生方に直接質問できるほか、学校選びについて専門家に相談できるコーナーの設置や講演会の開催もあり、中学受験を考えている保護者のかたや子どもたちで賑わいました。

今回から、同フェアで開催された、早川明夫先生の時事問題特別授業の内容をお届けします。

時事問題は、8~9割の学校で出題される!

時事問題は、例年8~9割の学校で出題されています。2011~2018年度の時事問題出題率の平均(社会科)は88.5%でした。
なぜ、時事問題を出題する学校が多いのでしょうか?

時事問題に興味関心をもつ子どもは好奇心が強く、学習意欲が高い傾向があります。また、選挙権が18歳に引き下げられたこともあり、子ども時代から政治や社会に対する基礎的な知識やものの見方、考え方を培うことが、ますます重要になってきています。
現実の問題について自ら考え、解決を目指すことのできる子どもを育てたい。時事問題出題の背景には、先生方のそんな思いが込められているのではないでしょうか。

いつまでの時事問題が出題される?

時事問題とは、主に受験する年の前年に起こった、日本や世界の重大なできごとを扱った問題です。
多くの学校では、夏休み中に入試問題を作成します。そのため、取り上げられるのは「8月まで」のできごとが基本ですが、例外もあります。
たとえば2017年度入試の場合、2016年11月のパリ協定発効、12月の米大統領選でのトランプ氏当選が出題されています。また、2005年度入試では、2004年12月26日に起こったスマトラ沖地震が3校で出題されました。

2018年度の時事問題・周年問題の傾向

(首都圏国立・私立120校を分析)

<時事問題出題ランキング>

1位 移民・難民問題[シリア難民、UNHCR、ロヒンギャ等](21校)
2位 訪日外国人の動向[インバウンド、民泊、爆買い等](18校)
3位 核兵器禁止条約[日本が調印しなかった理由、ICAN、非核三原則、前米大統領オバマ氏の広島演説等](15校)
5位 パリ協定[アメリカの離脱、CO2排出量等](12校)
5位 宗像・沖ノ島の世界遺産登録[福岡県、海の正倉院等](12校)
6位 トランプ米大統領の政治[米・メキシコ国境の壁建設の理由、TPP離脱等](9校)
9位 英のEU離脱(8校)
9位 仏の大統領選、英・独の首相[マクロン、メイ、メルケル](8校)
9位 2017年衆院選[臨時国会冒頭の解散の問題点、新定数等](8校)

また、入試の年・前年から見て節目の年に起こったできごとについて出題する「周年問題」も、時事問題の一種です。以下の項目について多く出題されました。

<周年問題ランキング>
1位 日本国憲法施行70年 (8校)
2位 大政奉還(王政復古)150年 (7校)
3位 ASEAN50年 (3校)

ここからは、実際の時事問題について例を見ていきましょう。

移民・難民問題——日本との関わりを考える

現在、もっとも数多くの難民を出しているのはシリアです。ミャンマー西部に暮らすイスラム系少数民族・ロヒンギャに対する人権侵害の問題や、難民の救済にあたっているUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)についても出題されています。

日本は移民・難民問題とは関係が薄いと思われがちですが、実は日本にも移民の歴史があります。1908年に始まったブラジル移民について(慶応中等部)、またこれ以前のハワイ移民について(桜蔭中)で出題されています。日本の移民の歴史については、小学校の教科書で取り上げられています。難関校では、このように教科書から出題されることが多いので、しっかり教科書を読み込んでおく必要があります。本文だけでなく、写真や図版の説明、年表などもよく読むようにしましょう。

時事問題は、自分の身近な生活や日本との関わりについて考えてみることが大切です。

日本国憲法施行70年—— そもそも「憲法とは何か」が問われる

憲法に関する問題は毎年多く出題されますが、2018年度は施行70年に関連して、そもそも「憲法とは何か」に関する問題が目立ちました。

たとえば早稲田中では、日本国憲法の基本的人権の考え方(だれもが生まれながらにしてもっている人間らしく生きる権利)や、99条等について出題しています。99条では、憲法を尊重し、擁護する義務を負うのは天皇、国務大臣、国会議員などの公務員と定めており、ここに国民は入っていません。その理由は、憲法とは国や権力者の力を制限し、個人の人権を保障するためにあるからです。主権者である国民は、実際に政治に携わる政治家や公務員に憲法を守らせる立場にあるため、「義務を負う」側には入っていないのです。99条は明大明治、豊島岡女子、東邦大東邦(推薦)、富士見などでも取り上げられました。

今回ランクインした訪日外国人の動向や世界遺産等は、2019年度も取り上げられる可能性が高いと思われます。次回は、2019年度に向けておさえておきたい時事問題について述べます。

プロフィール


早川明夫

社会科入試問題研究の第一人者。大学付属中高の教頭を経て、文教大学で社会科の教員養成にあたった。現在、文教大学地域連携センター講師。主な著書に『応用自在』『考える社会科地図』『総合資料日本史』『地図っておもしろい!』(監修・執筆)ほか多数。『ジュニアエラ』の総監修者。

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