私立中学の「適性検査入試」はなぜ増え続ける? 授業料免除の特待生枠は20倍以上になることも【中学受験】

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私立中学の適性検査入試は、2010年を皮切りに実施されており、年々新設する学校が増えています。2021年度入試では、首都圏の学校の86校で適性検査入試が実施されました。適性検査入試が増え続ける背景にある公立中高一貫校の入試状況と、私立中学の併願の考え方について、森上教育研究所がお伝えします。

公立中高一貫校の増加とともに増える私立中学の適性検査入試

公立一貫校の併願として選ばれる適性検査入試

適性検査入試を行っている私立中学の中で、受験者数が多い学校を見ると、江戸川学園取手、安田学園、宝仙学園、聖徳学園などが挙げられます。最多の江戸川学園取手では2021年度は、男子511人、女子360人、計871人が適性検査入試を受験しました。茨城ではここ2年で公立中高一貫校が増加したこともあり、私立校での適性検査入試の受験者も増えています。

適性検査入試の受験者数の多い学校は、安田学園の場合には両国高等学校附属中学校、宝仙学園の場合には小石川中等教育学校、富士高等学校附属中学校、聖徳学園の場合には三鷹中等教育学校や南多摩中等教育学校のように、公立中高一貫校の近くにある場合が多いことが特徴です。公立中高一貫校の併願校として受験する生徒が多いことがわかります。

ご存じのとおり、公立中高一貫校は応募倍率7~10倍という難しい入試となっています。適性検査入試を実施している私立中学は、中学受験の偏差値としては偏差値がつかない学校が多いのが特徴ですが、学校側としては、本命の公立中高一貫校には落ちたものの、学習意欲のある優秀な生徒を受け入れたいという思惑があります。また、特待生を受け入れている場合は、私立中学でも公立と同じく授業料がかからないため、20倍以上の倍率になることも珍しくありません。

公立の本番の前に練習として受ける傾向も

公立中高一貫校の適性検査の場合、私立の一般受験と違い、長くて2年、短くて2~3か月の準備期間で本番を迎えることがほとんどで、塾の費用などはあまりかけないですますケースが多いようです。しかし、適性検査の問題は非常に高度で、解答がいくつもあるような記述式の問題では、「こんな問題、本当に解けるの?」と大人でも尻込みするような問いが用意されています。

それに比べると、私立の適性検査の問題は比較的易しく、公立中高一貫校入試の本番の前に、練習として私立中学の適性検査を受け、自信をつけたいという思いから、受験者数が伸びているという面もあります。

公立中高一貫校に進学しない場合の進路の選び方

東京と神奈川の公立高校は2番手校でも難関大進学は難しい

公立一貫校の併願として私立中学受験を考える際に視野に入れてほしいのは、私立中学と公立高校の大学の進学実績です。特に、都立高校と神奈川県立高校に関しては、トップ校は別として、1.5番手校~2番手校でも、難関大への合格が難しくなっているということを頭に入れておいてほしいと思います。

公立一貫校の受験が残念な結果となり、公立中学から公立トップ校へのチャレンジをねらう場合、トップ校に入学できないと、現役で難関大に合格するのが難しい場合もあるのです。

適性検査入試を行う私立中学の進学実績のほうがよい場合も

一方で、適性検査入試を行っている私立中学の中には、偏差値が低い学校であったとしても改めて大学進学実績を見ると、国立早慶GMARCHを含めて、8割くらいの実績を出している学校もあります。

こうしたことを考慮に入れると、金銭面などの事情が許せば、公立一貫校の受験が残念な結果になった場合は併願した私立中学への進学するのも一つの選択肢と言えます。経済的に私立は難しいという場合も、適性検査を実施している私立中学で特待生枠をねらえば、お子さんの今後のチャンスがより広がる可能性があります。

まとめ & 実践 TIPS

適性検査入試を行う私立中学は、公立中高一貫校の併願校として受験する生徒が多く、学校側は学習意欲のある優秀な生徒を受け入れたいという思惑があります。
公立一貫校を第一志望としていたお子さんが、公立一貫校は残念な結果となった場合の進路については、将来の大学進学まで見据えたうえで、地元の公立中学と、併願で合格した私立中学のどちらに進学するか、慎重に選ぶ必要があります。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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